生物の多様性分野の環境影響評価技術検討会
環境影響評価シンポジウム~生態系と環境アセスメント~の記録

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2 環境影響評価シンポジウム開催にあたってのご挨拶

 南北に長い火山列島であるわが国は、極めて豊かで多様な自然環境を育んで参りました。山に海にそして里地に、それぞれ特徴ある自然の営みが行われ、四季折々に美しく変化していく中で、私たちの祖先は、自然と触れ合い、自然を愛でながら、万葉の昔からわが国の文化を育てて参りました。

 しかし、経済発展を図るなかで、私たちはそうした国土の良好な自然環境を損ねてきたことも事実であります。多くの野生動物の生息地が失われ、子供たちの遊ぶ水辺は減少し、里山の景観は変貌していきました。

 健全な環境があらゆる人間活動の基盤であり、地球規模で人と自然との共生が必要であることが認識されるようになった現在、このわが国の豊かな自然を守り、子孫に引き継いでいくことは私たちの重大な責務と申せましょう。

 平成5年に制定された環境基本法では、生物の多様性の確保と自然環境の体系的保全を図るべきことが明らかにされております。この環境基本法の精神を受け、明後日、6月12日に全面施行される環境影響評価法では、新たに「生態系」を環境影響評価の対象とし、大規模な開発行為の実施に際して生態系の保全に最大限の配慮がなされるよう求めております。

 本日のシンポジウムは、学識経験者の講演と行政担当者及びNGOの方を加えたディスカッションを通じて、新しい環境アセスメント制度のもとで、いかに生態系を保全していくかを考えるとともに、新しい制度のポイントについて広く関係者のご理解を得るために開催するものであります。

 本日のシンポジウムが、新しい環境アセスメント制度の適切な実施に寄与することを通じて、わが国のすばらしい自然環境を守り、持続可能な社会を実現するための一助となることを期待してやみません。

平成11年6月10日

国務大臣 環境庁長官 真鍋賢二

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