大気・水・環境負荷分野の環境影響評価技術検討会中間報告書
大気・水・環境負荷分野の環境影響評価技術(II)<環境影響評価の進め方>(平成13年9月)

大気・水・環境負荷分野の環境影響評価技術(II)TOPへ戻る

3)留意事項の解説と事例等

以降は、調査・予測・評価に関する留意事項についての解説である。既存の環境影響評価の事例等を引用し、説明の補足としている箇所があるが、それらが決して最良のものとしての例示ではない。環境影響評価の実施に際しては、例示している事例や他の既存事例の手法のみにとらわれることなく、適切な手法を採用するようにその都度検討が必要であることに留意されたい。

[1]調査、予測、評価項目
  【留意事項 1-25)】解説/事例 複合騒音の影響
   複合騒音については基準が定められていないものの、既に検討を実施した環境影響評価事例があり、今後、基準の整備が望まれる。

   複合騒音の検討事例1(道路交通騒音と建設作業騒音の複合騒音)

 
概要 工事中における建設作業騒音と工事用車両の走行による道路交通騒音を等価騒音レベルで合成し、予測・評価している。
内 容
 「予測結果」より
「評価結果」より
(1) 環境影響の回避・低減に係る評価
  ・・・(中略)・・・工事機械の稼働及び工事用車両の走行に伴う騒音の複合的な影響を予測した結果では、本事業と地域整備事業による寄与は会場計画第II案で低減されている。

  「2005年日本国際博覧会に係る環境影響評価書」(平成11年10月 (財)2005年日本国際博覧会協会)より抜粋

   
  複合騒音の検討事例2(鉄道騒音と道路交通騒音の複合騒音)
 
概要 鉄道と同時期に道路が整備されることから、鉄道騒音と道路交通騒音の複合騒音の検討を行っている。
知事意見 道路交通騒音の影響を考慮した予測について
 
  都筑区川和町及び緑区北八朔町の地域においては、計画路線と併せて都市計画道路中山北山田線の整備が計画されていることから、鉄道騒音の予測にあたっては、当該都市計画道路の道路交通騒音による影響についても考慮すること。

    「横浜国際港都建設計画都市高速鉄道第5号市営地下鉄4号線」(港北区日吉4丁目~緑区中山町)に係る神奈川県知事意見より抜粋

内  容
検討のフロー

図 道路交通騒音を考慮した影響の予測フロー

   「横浜国際港都建設計画都市高速鉄道第5号市営地下鉄4号線 環境影響評価書」(平成12年12月 神奈川県)より抜粋


[2]調査手法
【留意事項 1-26)】解説/事例 推計により現況を把握する方法
道路交通騒音の高さ方向の調査や、騒音の面的な現況調査等は、現地調査のみで行うことは非常に困難であり、現地調査に推計を加えて合理的に現況を把握することが効率的である。法令に則った調査方法で、現地調査に加えて推計を行うことができるものとしては、以下の方法が挙げられる。

   推計により航空機騒音の現況を把握した事例
概要 現地調査では困難な航空機騒音レベルの現況を推計により把握している。
内 容 「予測結果」より

   「大島空港拡張整備事業 環境影響評価書」(平成10年3月 東京都)より抜粋

 [3]調査期間
   【留意事項 1-29)】事例 道路の利用特性を考慮した調査時期の設定

道路の利用特性を考慮して調査時期を設定した事例
概要 事業の種類がレクリエーション施設の設置であるため、平日と休日に区分して、調査・予測を実施している
内 容
「調査結果」より
カ.自動車交通量の状況

(ア) 既存資料調査
   計画地周辺の調査地点における過去10年間の交通量は、浦安橋及び長島交差点ではほぼ50,000台/日、南葛西では3-23でほぼ22,000台/日で、ほぼ横ばいで推移している。
(イ) 現地調査
   計画地周辺の交通量調査結果で、平日は高速湾岸線、国道357号(各約175,000台/日、43,000台/日)の交通量が多く、次いで環状7号線(約44,000台/日)、補助290号線(約23,000台/日)の順となっている。また各調査地点における休日の交通量は、平日に比べ大型車の混入率が大幅に減少するのに伴いほぼ全地点で交通量の減少が認められる。
「予測方法」より

   「ロッテワールド建設に係る環境影響評価書」(平成11年6月 ロッテ)より抜粋

[4]予測項目の考え方
 【留意事項 1-30)】解説 法令等に基づく評価量以外の予測
    法令等に基づく評価量が定められていない在来鉄道振動や低周波音を定量的に予測する場合や、法令等に基づく評価量での予測では不十分であると想定される場合には、適切な評価量を検討する必要がある。

[5]予測手法
   【留意事項 1-31)】解説/事例 複数の予測手法の併用
道路交通振動には様々な種類の予測式があり、予測の不確実性を検討するために複数の予測式を併用した予測を行うことも考えられる。

道路交通振動の様々な予測手法とその特徴
名  称 特  徴  等
[1]土木研究所式 平面道路の予測基準点における振動レベルをとりあげ、交通量、車線数、車速、路面平坦性及び地盤条件データをもとに回帰分析手法を用いて振動レベルを予測する式を作成し、これを基本として補正項の形で道路構造の影響及び道路からの距離の影響を予測式に反映させている。
[2]平面道路での予測式 東京都の地盤を対象に作成された予測式で、土木研究所式との主な相違点は、地盤の種類を明確に分類していること及び舗装構造を取り入れいている点である。ただし、対象は東京都の地盤上の平面道路である。
[3]埼玉県公害センター
   による予測式
 類似道路等での速度振幅の実測値をもとに、発生・伝搬要因の変化から補正を加えて予測を行うもので、振動の発生要因としては、路面の平坦性、走行速度、大型車交通量を、伝搬要因としては、地盤の硬さをとり上げて、各要因の補正倍率を求めて予測を行う。
[4]畠山式 距離による減衰が表面波であると考え、鉛直方向の自動車走行による振動レベルを予測する。
地盤卓越振動数が8Hz以上の条件で、振動速度から振動レベルに変換する。
[5]時田式 垂直方向の振動レベルを規定する要因として、路面状態、走行速度、車体重量の3変数をとり上げ、実測データをもとに重回帰分析を行って回帰係数を求め、定式化している。
[6]畑中式 幹線道路での実測結果をもとに、大型車、中型車、乗用車といった車種と振動源からの距離の2変数で定式化し、最大鉛直方向の振動速度を予測する。
振動源からの距離が増大すれば振動レベルは指数的に減少するが車が大型化すれば振動レベルも増大するという式になっている。

(社)環境情報科学センター(1999)より作成

参考文献

[1]・成田信之・桂樹正隆(1978)道路交通振動予測式.土木技術資料、20(6).

[2]・横田明則(1994)道路交通振動の予測.騒音制御、18(6)、18-21.

[3]・毎熊輝記・松岡達郎(1978)地盤特性と道路振動予測.第58回物理探鉱技術協会春季講演予稿集、52-53.

[4]・畠山直隆・今井宏典・中辻昇(1974)自動車による振動の予測と対策.土木学会関西支部講習会テキスト騒音・振動公害、99-114.

[5]・織田厚・時田保夫(1975)走行車および舗装状態と発生振動との関係(自動車走行による道路振動III).日本音響学会講演論文集、騒音制御工学会技術発表会、527-528.

[6]・畑中元弘・北村泰寿(1973)走行車輌による神戸市内沿道の振動(第三報).建設工学研究所報告、15、152-164.

   在来鉄道振動の様々な予測手法
概要 トンネル部の鉄道振動の予測式としては、帝都高速度交通営団が提案した予測式があるが、予測式が東京都23区内を想定して提案されたことなどの理由により、実際の環境影響評価では、様々な補正等が行われて活用されている。
内 容 「大阪市営地下鉄8号線(井高野~今里) 環境影響評価書」(平成11年11月 大阪府)
ここで、 VAL   :振動加速度レベルの最大値 (dB)
BVAL :振動源の振動加速度レベル (dB)
:振動源から予測点までの距離 (m)
:トンネルの構築重量(t/m)
:標準となるトンネルの構築重量(t/m)
ΔV2 :軌道構造による補正 (dB)
:電車の走行速度 (km/h)
α :トンネル構造物自体による回折減衰量 (dB)
α :曲線半径による補正 (dB)
「横浜市営地下鉄4号線 環境影響評価書」(平成12年12月
  
ここで、L :鉄道振動レベル(dB)
K,A :定数
α :コンクリート直結軌道を基準とした軌道構造の違いによる補正値(dB)
:トンネルから予測地点までの斜距離(m)
:1mあたりトンネル重量(t/m)
:走行速度(km/時)
0,Y0,Z0 :定数
「営団地下鉄13号線 環境影響評価書」(平成13年3月)

<複線シールドトンネルの場合>
  
<単線シールドトンネルの場合>
   
ここで、L  :予測地点の地表地盤の鉛直振動レベル(ピーク平均dB)
:トンネルから予測地点までの最短距離 (m)
:1mあたりのトンネル重量(t/m)
:列車速度(km/時)
:軌道構造別の振動レベルで複線シールドトンネルは39、単線シールドトンネルは41

  【留意事項 1-33)】事例 手法の重点化の例

  シミュレーションモデルによる予測事例
概要 特殊部(インターチェンジ)周辺における道路交通騒音レベルを、シミュレーションモデルを使用して予測している。
内 容
「予測方法」
より

   「さがみ縦貫道路事業(愛川町中津~城山町川尻)影響予測評価書」(平成9年6月 神奈川県)より抜粋

 
発破騒音の予測事例
概要 採石作業に伴う発破騒音について定量的に予測した事例
内 容 事例:「予測方法」より

  「環境影響評価書 多摩興産株式会社採掘区域拡張事業」(平成11年12月 多摩興産株式会社)より抜粋

発破騒音の予測式
内 容
・トンネル発破

 [1] 船津の式
 
    L+7 log10-20 log10ΔL (dB)
  ただし、
:超低周波音レベル (dB)
:DS雷管の場合;141、MS雷管の場合;148
:総爆薬量    (kg)
:坑外距離    (m)
ΔL :指向性、防音扉及び障害物などの補正値(dB)

  [2] 塩田の式

   (r0)=5.36+127.2 (dB)
   Lr=L(r0)-20log10(r/r0)+tt (dB)
   ただし、

L(r0) :切り羽面からトンネル抗口までの距離r0における低周波音レベル
W  :段当たりの総爆薬量(kg)
Lr  :切り羽面から受音点までの距離rにおける低周波音レベル
r  :切り羽面から受音点までの距離(m)
r0  :切り羽面からトンネル抗口までの距離(m)
tt :超過減衰量 (dB)

・ベンチカット発破

   [1]国松の式

   =20log10(peak)+85+10log10(1-exp(-Tdτ))
   peaka-b
   ただし、

:推定音圧レベル (dB)
peak :ピーク音圧の予測値(Pa)
d :波形の継続時間 (秒)
τ :時定数 (秒)
:発破による係数
:段あたりの爆薬量 (kg)
:伝搬距離 (m)
θ :測線とベンチ面の法線とのなす角度
:T=(cos(θ)+2)/3
:段あたりのベンチ面積
A,b,c,n :定数

  出典:「発破による音と振動」(平成8年1月 (社)日本騒音制御工学会技術部会低周波音分科会編

  [6]予測条件
   【留意事項 1-34)】事例 事例の引用による予測事例

事例の引用による予測事例
概要 新幹線鉄道振動を事例の引用により予測した事例。
内 容
「予測の基本的な手法」及び「予測結果」より

  新幹線鉄道振動の予測の基本的な手法については、北陸新幹線(高崎・長野間)や東北新幹線の一部区間を利用した総合試験線のデータを分析して研究が進められているところであるが、地盤の振動レベルは、構造物と地盤の相関関係、地盤自体の性状等のさまざまな要因が重複して作用するため、定量的な予測が困難である。したがって、地盤が類似している事例を引用して予測を行った。
  事例の引用にあたり、既設新幹線の測定事例の地盤の中には、当該地域の地盤と同様の場所があることから、類似事例の引用は妥当であると考えられる。
  青森市羽白地区を含む計画路線周辺の地盤は、沖積層(主に砂・砂礫)で、既設新幹線の振動レベル測定結果のうち、青森市羽白地区と同様な地盤の測定結果は、高架橋で45~64dB、盛土で63~65dBであり、いずれも70dB以下である。

  「北海道新幹線(新青森~札幌間) 環境影響評価準備書」(平成12年7月 日本鉄道建設公団)より抜粋

   【留意事項 1-37)】事例 家屋による振動の調査事例

家屋による振動の増幅の調査事例
概要 家屋による振動の増幅の調査事例
内   容
屋外(地面)の振動レベルと家屋内の振動レベルの関係については、これまで様々な研究がなされている。
図1に示すグラフは、日本の平均的家屋構造である木造家屋平屋の板の間と地表面の振動の関係を調査したものである。家屋によっては、5dB程度減衰するものや、最大では15dB程度増幅するものまで様々である。
また、図2に示すグラフは、地表面の加速度と床面の加速度を調査したものであり、振動増幅のみられないものから、最大で5倍の増幅がみられるものがある。
 

 中央公害対策審議会騒音振動部会専門委員会(1976)

 図1 木造家屋の板の間と地表振動の関係

図2 木造家屋及び鉄筋コンクリート造家屋の振動増幅量

[7]予測地点
  【留意事項 1-38)】事例 高さ方向を考慮に入れた地点の設定

沿道の土地利用の状況を考慮して、高さ方向を考慮した予測地点を設定した事例
概要 沿道の土地利用は低層住宅が主であることから、予測高さを地上1.2m及び2階相当の高さと考えられる4.2mとして予測している。
内 容 「予測」より
 (2)予測項目及び予測対象区域
・・・(中略)・・・また、沿道の土地利用等の状況から、低層住宅が主であり予測高は地上1.2m及び2階相当と考えられる4.2mとする。(略)

 (6)予測結果

「玉島笠岡道路 環境影響評価書」(平成12年7月 岡山県)より抜粋

[8]評価
  【留意事項 1-39)】解説/事例 道路交通振動の評価
  自治体の技術指針や環境管理計画においては、以下のように道路交通振動の要請限度以外の指標を採用している事例もみられる。

【留意事項 1-40)】解説/事例 回避・低減に係る評価事例
回避・低減に係る評価は、統一の手法が存在するものではなく、地域特性や事業特性による当然異なってくるものであり、既に以下のような多様な事例がある。

   ・住居地域での建設作業騒音及び工場騒音を予測した事例
概要 建設作業騒音及び工場騒音(浸出水処理施設、産業廃棄物搬入施設からの騒音及び埋立作業機械の稼働による騒音)について、敷地境界における騒音レベルと計画地周辺の住居における騒音レベルを予測している。
  評価に際しては、既存の知見や環境基準を参考に評価目標を設定している。
内 容
「建設作業騒音の評価」より


[1] 

評価目標
評価目標は、「騒音規制法」(昭和43年法律第98号)に基づく特定建設作業に係る騒音の規制基準を参考に、敷地境界において85dB(A)以下とした。また、周辺民家付近については、生活環境に著しい影響を及ぼさないこととした。

[2] 

評価結果
予測結果によると、工事中の周辺民家に近い計画地の敷地境界における騒音レベルは北側で63~74dB(A)、南側で64~76dB(A)と予測され、評価目標の85dB(A)を下回っている。
また、周辺民家付近では、C地点(長坂4丁目民家付近)で43~46dB(A)、D地点(芦名2丁目民家付近)で40~42dB(A)と予測された。これらのレベルは、「公害防止の技術と法規・騒音編」((社)産業環境管理協会)によると“静かな住宅地の昼”程度の騒音といえる。
以上のことから、評価目標は達成される。
   「工場騒音の評価」より


[1] 

評価目標
   評価目標は、「生活環境保全条例」に定める騒音の規制基準の「その他の地域」を参考に、敷地境界において昼間(午前8時~午後6時)55dB(A)、朝(午前6時~午前8時)、夕(午後6時~午後11時)50dB(A)以下、夜間(午後11時~午前6時)45dB(A)以下とした。また、周辺民家付近については、騒音に係る環境基準の「A類型」を参考に、朝(午前6時~午前8時)、夕(午後6時~午後11時)45dB(A)以下、昼間(午前8時~午後6時)50dB(A)、夜間(午後11時~午前6時)40dB(A)以下とした。

[2]

評価結果
予測結果によると、埋立作業を行っている時間の周辺民家に近い計画地の敷地境界における騒音レベルは北側で46dB(A)程度、南側で51dB(A)程度と予測され、評価目標の55dB(A)を下回っている。また、埋立作業を行っていない時間の敷地境界における騒音レベルは、30dB(A)未満であり、評価目標の45dB(A)を下回っている。
周辺民家付近では、C地点(長坂4丁目民家付近)で29dB(A)程度、D地点(芦名2丁目民家付近)で27dB(A)と予測され、評価目標を下回っている。
以上のことから、評価目標は達成される。

   「横須賀市芦名地区産業廃棄物最終処分場建設事業 環境影響予測評価書」(平成12年6月 神奈川県)

 
・環境影響を受けやすい施設への一層の配慮を行った事例
概要 環境影響を受けやすい施設(学校)に対して、「学校環境衛生の基準について」を参考として、一般地域よりも厳しい基準を採用している。
内 容  

 

「東京外かく環状道路(松戸市~市川市間) 環境影響評価書 補足資料」(平成8年12月 千葉県)より抜粋


 ・複合騒音の回避・低減に係る検討事例
概要 道路交通騒音と鉄道騒音の複合騒音の影響について検討している。環境保全措置の実施については、道路事業者との協議の上、必要により検討することとしている。
内 容 「参考」より

  都市計画道路中山北山田線の道路交通騒音の影響を考慮した予測結果は、資料編に示すとおりであり、必要に応じた環境への配慮は、事業実施段階において、道路の事業主体と調整し、検討します。
  また、都市計画道路中山北山田線との併走区間において、鉄道高架部等の構造物による道路交通騒音の反射音の影響が供用時に認められる場合には、道路交通騒音の反射音対策について、道路の事業主体と調整し、検討します。

   「横浜国際港都建設計画都市高速鉄道第5号市営地下鉄4号線 環境影響評価書」(平成12年12月 神奈川県)より抜粋

   ・低周波音をがたつきにより評価した事例
概要 施設の稼働に伴う低周波音を予測・評価している。
内 容(1/3)

「予測の結果」
より

予測の結果
  施設の稼働に伴う低周波音の予測結果は、第8.1.1-4.3図のとおりであり、第3号発電設備と既設設備の合成値は、東側敷地境界では最大値が予測地点[6]で71デシベル(12.5,20Hz)、周辺住宅地の予測地点[7]では68デシベル(16Hz)である。
  なお、合成値は予測地点における第3号発電設備からの到達低周波音レベルに、敷地境界予測地点は第8.1.1-4.1表(4)に示す冬季夜間の現況測定値を、周辺住宅地の予想地点は第8.1.1-4.2表(2)に示す夏季昼間の現況測定値を合成したものである。
内 容(2/3)
内 容(3/3)

   「出光愛知製油所第3号発電設備増設計画 環境影響評価書」(平成13年6月 出光興産株式会社)より抜粋


・基準の定められていない鉄道振動の評価事例(1/2)

事業名 評価の事例(抜粋)
営団13号線
(池袋~渋谷)

「評価結果」
より
  予測結果は、38~45dBとなっており、列車の走行に伴う振動については規制値がないが、これは人が振動を感じ始める程度(概ね55dB)以下であることから、振動に係る環境影響の程度は小さいと考えられる。
  また、供用にあたっては、大気環境(振動)の保持のため、地下鉄事業におけるこれまでの実績から効果が期待できる環境保全のための措置として、「車両及び軌道を定期的に検査し、車両、軌道の補修等を行いレールの摩耗等に起因する振動が増大しないよう維持管理に努める」等を実施し、振動に係る環境影響の程度をできるかぎり回避・低減させるものとする。
  以上のことから、振動に係る環境影響が実行可能な範囲内でできる限り回避・低減されるものと評価する。
横浜市営地下鉄
4号線
(日吉~中山)

「評価の結果」
より
  環境の保全のための措置を行うことにより、「鉄道公害の防止対策について(建議)」における保全目標の振動速度 0.5㎜/sec(おおむね振動レベル65dBに相当)は満足すると予測されるため、本事業による生活環境への著しい影響は生じないと考えられます。
  また、発生源対策として、地上部においては防振枕木を設置するとともに、ロングレールの採用及び軌道、車輪等の保守・点検を行い、振動の発生の低減に努め、更に、環境の保全のための措置として地下部においても必要に応じて防振枕木の設置を行うこと及び事業実施段階において実施する詳細な予測の結果に基づき環境の保全のための措置を講じる区間を設定するとともに、可能な限り防振に配慮した軌道構造の採用を検討することから、実行可能な範囲で、できる限り環境影響の回避・低減が行われていると考えられます。

  「横浜国際港都建設計画都市高速鉄道第5号市営地下鉄4号線(横浜市港北区日吉四丁目~緑区中山町) 環境影響評価書」(平成12年12月 神奈川県)より抜粋
大阪市営地下鉄
8号線
(井高野~今里)

「環境保全目標」
より
  環境保全目標は、
  [1] 大部分の地域住民が日常生活において支障がない程度であること。
  [2] 環境への影響を最小限にとどめる環境保全対策について配慮されていること。
  とした。
「評価結果」より
  地下鉄の電車走行に伴う地表面振動は、沿線地域の状況と電車走行速度等の発生源情報を重ね合わせて振動レベルが大きくなると想定される28箇所を選定して予測した。その結果、振動レベルの最大値で55dBと予測され、この値は人が振動を感じ始めるとされている振動感覚閾値(55dB)と同じになる。
  したがって、地下鉄の電車走行に伴う地表面振動は、大部分の地域住民の日常生活に支障を及ぼさない程度と考えるとともに、さらに必要に応じて防震対策として防振マクラギの設置により振動の低減に努めることから環境保全目標を満足するものと考える。

 「大阪都市計画高速鉄道第8号線(井高野~今里)環境影響評価書」(平成11年11月 大阪府)より抜粋


・基準の定められていない鉄道振動の評価事例(2/2)

事業名 評価の事例(抜粋)
常磐新線
(守谷~伊奈・谷和原)

「工事の完了後に係る環境保全目標」
より

振動に係る環境基準は、未だ設定されていないが、振動レベルに関する知見として以下のものがある。

イ. 横浜市における公害対策審議会答申(鉄道公害の防止対策について)の中で目標値として0.5mm/sec(概ね65dB)が示されていること。
ロ. 気象庁の地震震度階においては震度1(静止または注意する人に感じるレベル)として55から65dBが示されていること。
また、以上を勘案し、現在建設されている東葉高速鉄道(西船橋~勝田台間)で、列車走行時の振動について評価基準を以下のとおり設定していることから、本事業においてもこれに準じるものとする。
   <評価基準>
   「65dB以下とすることを目標とする。
  • 測定方法及び評価方法;昭和51年3月12日付け環大特32号「環境保全上緊急を要する新幹線鉄道振動対策について(勧告)」に準ずる。
  • 適用地域;工業専用地域、道路、田畑その他一般住民が生活していない地域を除き、通常の生活環境を保全する必要がある地域(但し、本路線の構築物端から10mまでの区域及びトンネル構築物中心直上から10mまでの区域を除く。)」

「工事の完了後に係る影響評価」より

 [1]高架部における鉄道走行振動
  評価地点での予測結果は、評価基準である「65dB以下を目標とする」を満足するため、周辺への影響は少ないものと考えられ、環境保全目標を満足する。
 [2]切取部における鉄道走行振動
評価地点での予測結果は、評価基準である「65dB以下を目標とする」を満足するため、周辺への影響は少ないものと考えられ、環境保全目標を満足する。

  「環境影響評価書 常磐新線(守谷~伊奈・谷和原)鉄道建設事業」(平成6年2月 首都圏新都市鉄道株式会社)より抜粋


・環境監視により環境影響の回避・低減策を検討する事例

概要 工事実施中において環境監視を行い、環境影響の回避・低減策を検討することとしている。
内 容 「大臣意見」より
    事業区域周辺においては、現在、多くの大気測定局において二酸化窒素及び浮遊粒子状物質に係る環境基準が未達成であり、また、道路交通騒音についてもほとんどの地点で環境基準を超過している。このため、工事中においては極力環境影響を低減する必要があるので、関係機関と協力しつつ、当該工事に係わる大気環境、道路交通騒音等に係る監視についても適切に実施し、必要な対策を講じること。

「事業計画上の環境への配慮」より

    工事用車両の走行にあたっては、事業実施段階においても工事用車両の走行ルートの分散等の措置を検討するとともに、運転者に対する教育・指導の徹底、工事用車両の点検・整備の励行を行い、関係機関と協力しつつ、当該工事に係わる道路交通騒音に係る監視についても適切に実施し、実行可能な範囲で、できる限り必要な対策を講じることにより、道路交通騒音の低減に努めます。

 「横浜国際港都建設計画都市高速鉄道第5号市営地下鉄4号線 環境影響評価書」(平成12年12月 神奈川県)より抜粋


         【留意事項 1-41)】事例 個々の状況に応じた環境への配慮の事例


 ・予測の不確実性を考慮して、より一層の配慮を検討した事例

概要 予測の不確実性を考慮して、保全目標を下回る地点についても環境保全措置を検討している。
内 容 「環境の保全のための措置」より
  本事業で計画しているトンネル部の軌道構造は、コンクリート直結軌道を基本としています。しかし、予測地点No.3,8においては、「鉄道公害の防止対策について(建議)」における保全目標を上回り、生活環境への影響があると予測されるため、環境の保全のための措置を検討しました。
  また、保全目標(0.5mm/sec)が概ね振動レベル65dBに相当すること、供用開始後においては、軌道構造の変更による対策が困難であることを勘案し、鉄道振動レベルが60dB以上と予測される予測地点No.1,2についても環境の保全のための措置を検討しました。

 「横浜国際港都建設計画都市高速鉄道第5号市営地下鉄4号線 環境影響評価書 資料編」(平成12年12月 神奈川県)より作成

 【留意事項 1-42)】解説/事例 事業者以外の環境保全措置
  事業者以外の環境保全措置は、事業としての環境保全措置だけでなく、行政施策としての環境保全措置も考えられ、騒音規制法に基づく自動車単体規制等も該当する。この場合、行政の施策が適切に実施される可能性や、達成年度等を十分に検討する必要がある。


・事業者以外の環境保全措置を検討した事例

概要 当該道路事業に対する環境保全措置だけでは、環境保全目標を達成できないため、交差道路に対しても環境保全措置の実施を想定した。
内 容  「評価結果」より
  予測対象区域に存在する学校、幼稚園及び保育所のうち、多治米小学校は一般地域で講じる環境保全措置を実施しても環境保全目標を上回る。この地点は、交差道路(沖野上箕島線及び福山駅箕島線)の影響が支配的であり、計画路線等の環境保全措置をこれ以上講じても更なる低減が期待されないため、交差道路への環境保全措置を講じる必要がある。この場合、実行可能な対策として、二層式排水性舗装の敷設を想定し、その減音効果を5dB(一般国道2号における試験施工結果による)と見込めば、環境保全目標を満足すると考えられる。
  ただし、交差道路の環境保全措置は、事業者以外の者による措置であり、今後関係機関との連携を図る必要がある。
  また、二層式排水性舗装による減音効果は不確実な要素を含むため、関係機関との連携のもとに供用前、供用後に騒音の事後調査を実施し、著しい影響が見られる場合には適切な措置を講じるものとする。

 「都市計画道路 福山道路 環境影響評価書」(平成12年12月 広島県)より抜粋


・行政施策としての環境保全措置の例

概要 環境影響評価で広く用いられている自動車騒音規制を考慮した将来のパワーレベルについて、推定の考え方とその適用条件について
内 容

[1] 

パワーレベル設定の考え方
  道路事業の環境アセスメントでは、将来の供用時における自動車走行騒音を予測する必要がある。将来のパワーレベルに影響を与える主な要因として、自動車騒音の単体規制が挙げられる。
  ここでは、平成4年の中央公害対策審議会中間答申「今後の自動車騒音低減対策のあり方について」及び平成7年の中央環境審議会答申「今後の自動車騒音低減対策のあり方について(自動車単体対策関係)」において示された定常走行騒音及び加速走行騒音の許容限度目標値を踏まえ、規制強化によるパワーレベルの低減を反映させた定常走行状態における将来のパワーレベル式を示す。
    【4車種分類の場合】  大 型 車:WA,h=53.8 + 30 log10
                  中 型 車:WA,h=50.3 + 30 log10
                 小型貨物車:WA,h=46.5 + 30 log10
                  乗 用 車:WA,h=44.9 + 30 log10
    【2車種分類の場合】  大 型 車:WA,h=52.3 + 30 log10
                  小 型 車:WA,h=45.3 + 30 log10
  なお、これらの式は、ほぼすべての車両が上記規制に適合した場合を想定したものであり、使用にあたっては、予測時点における走行車両の規制適合車への代替状況を検討する必要がある。
  (日本音響学会誌55巻4号(1999)より抜粋)

[2] 

中央公害対策審議会中間答申及び中央環境審議会答申に基づく施策の状況
  平成4年中央公害対策審議会中間答申及び平成7年中央環境審議会答申において示された供用限度設定目標値とその施行年又は施行予定年は下表に示すとおりであり、平成10~13年が施行予定年となっており、自動車の買い換え等を考慮して、代替状況を検討する必要がある。

表 平成4年中央公害対策審議会中間答申及び平成7年中央環境審議会答申
  において示された許容限度設定目標値とその施行年又は施行予定年

   【留意事項 1-43)】事例 防音工事


 ・複数の環境保全措置を検討し、防音工事を行う場合も想定される事例

概要 複数の新幹線鉄道騒音の環境保全措置を検討し、障害防止対策を含む総合的な騒音低減のための対策を実施することとしている。
内 容 「評価結果」より

[1]

環境影響の回避・低減に係る評価
  列車の走行に伴う新幹線鉄道騒音の影響を低減するため、防音壁の設置、普通スラブ(防振用)の採用、車両及び軌道の維持、管理等の配慮事項を徹底することとしている。
  また、工事着手前に環境基準を超過するおそれがあると判断した場合には、防音壁の嵩上げ、軌道構造の変更を行うほか、今後、供用開始までの間に技術革新によって騒音低減が可能な技術が開発された場合には、積極的にこれを採用することとする。
  その上で、供用後に環境基準を超過する場合は、関係自治体に対して協力要請を行い、新幹線鉄道の沿線の影響に配慮した適切な土地利用対策の促進に努めるものとする。
  しかし、前記した環境保全措置を講じても環境基準を達成できない場合には、家屋の防音工事などを実施し、騒音の障害を低減する障害防止工を施すこととしている。
  上記のとおり、障害防止対策を含む総合的な騒音低減のための対策を実施することとしていることから、実行可能な範囲において低減が図られているものと判断した。

[2]

国等の環境保全施策との整合性
  評価の指標となる計画路線周辺値域の類型指定は県知事が行うものであり、これについては、今後、工事実施計画認可後に指定されることとなる。
  本事業の列車の走行に伴う新幹線騒音の予測は、類型指定がなされていないことから、基本的な構造条件(普通スラブ(防振用)、防音壁高さ:2m)で実施しているが、今後、類型指定の状況を勘案し、第12章で記載している検証調査の結果を踏まえ、環境基準を超過した場合には、上記の総合的な騒音低減のための対策を実施することにより、「新幹線鉄道騒音に係る環境基準について」に掲げる施策との整合性を図ることとする。

  「北海道新幹線(新青森・札幌間) 環境影響準備書(青森県)」(平成12年7月 日本鉄道建設公団)より抜粋

4)今後の課題
  騒音・振動・低周波音の環境影響評価を進めていく上での留意事項として示したことが、これまでの全ての事例で考慮されていたわけではない。それぞれの留意事項を考慮し、併せて最新の知見等を参考とすることでより適切な環境影響評価へと近づいていくものと考えられる。
  今後の環境影響評価を進めていく上で、より適切な形へと近づくために望まれる事項は、以下に示すとおりである。

参考文献

環境庁(2000)騒音に係る環境基準の評価マニュアル.
公害対研究策センター窒素酸化物検討委員会(2000)窒素酸化物総量規制マニュアル(新版).
  公害対策研究センター、東京、pp422.
(財)道路環境研究所(2000)道路環境影響評価の技術手法.丸善、東京.
(社)環境情報科学センター(1999)環境アセスメントの技術.中央法規出版、東京、pp1018.
  (環境庁編 環境影響評価技術マニュアル      (暫定版)の市販本)
中央公害対策審議会騒音振動部会振動専門委員会(1976)工場、建設作業、道路交通、新幹線
  鉄道の振動に係る基準の根拠等について.
横浜市環境保全局(1999)横浜市大気汚染調査報告書 第38報.横浜市、pp238.

 

1-2 騒音・振動・低周波音

1)騒音・振動・低周波音の環境影響評価の基本的な考え方

(1)騒音・振動・低周波音の特徴

(2)調査・予測・評価のあり方

2)騒音・振動・低周波音の環境影響評価の手法

(1)騒音・振動・低周波音の調査

(2)影響予測

(3)評価の考え方

3)留意事項の解説と事例等

4)今後の課題

参考文献
 

大気・水・環境負荷分野の環境影響評価技術(II)TOPへ戻る