動植物の生息・生育場の創出
環境保全措置の概要
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回避・低減をすることができない場合に、動植物の生息・生育場を確保する代償措置。具体的な方法は、立地環境等によって異なる。
- 樹林
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林床に草花の多い明るい樹林は、鳥類の飛翔、採飼空間として利用される。散策や鑑賞の場としても好まれる。
二次林の育成 |
種子・種子が入った土や小さな苗を集め、ポットや苗畑もしくは林にする場所にまく。その後、ポットや苗畑で育てた苗は林にする場所に植え替える。 |
二次林の管理 |
多様性の高い林に育てるためには、下草の種子のある土を撒いたり、下草を移植する。間引き・下草刈り・落ち葉かき等を行う。 |
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(「自然再生:生態工学的アプローチ」(平成17年4月,亀山章ほか編集)参照。)
- 草地
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埋土種子などが保存されている現地の表層土壌(表土)は、一時的に保存しておき、代替地での表土播きだし法による植生再生を行うなどが検討されなければならない。
できるだけ周辺地から植物材料を調達することのできる普通種を中心とした草原植生を目標植生とすべきである。
植生遷移の途中相に位置する半自然草原を再生する場合は、継続的な植生管理(刈り取り、放牧、火入れなど)が不可欠である。
(「自然再生:生態工学的アプローチ」(平成17年4月,亀山章ほか編集)参照。)
- ヨシ原・湿地
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- 伝統的なヨシ原の管理とは、冬季にヨシを刈り、刈り跡に火入れを行ったり、ヨシを植えることである。
(財団法人淡海環境保全財団ホームページ 参照。)
- 湿原生態系の保全、再生には、湿原を涵養する雨水、湧水、地下水、河川水の水量と水質の維持や、湿原から系外への排水をできるだけ低減させるための配慮が、最も基本的な対策として実施される必要がある。
さらに、湿原は河川流域の下流部に形成されることが多く、集水域の影響を累積的に受けるため、持続的な保全や自立的な再生には、湿原内だけでなく流域や地域といったできるだけ大きなスケールでの対策が望まれる。
泥炭土壌は湿原内での水質形成において非常に重要な役割を果たしており、泥炭がすでに失われた状況下では自立した湿原生態系の再生が著しく困難となるため、土砂の混入防止や泥炭土壌の確保についても格別の配慮が必要である。
(「自然再生:生態工学的アプローチ」(平成17年4月,亀山章ほか編集)参照。)
なお、この他に、鋼矢板による止水もみられる。
- 里山・水田
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- 林床に低木の多い樹林は、動物の隠れ場所、休息場所、繁殖場所などとして利用される可能性が高い。
二次林の育成 |
種子・種子が入った土や小さな苗を集め、ポットや苗畑もしくは林にする場所にまく。その後、ポットや苗畑で育てた苗は林にする場所に植え替える。 |
二次林の管理 |
多様性の高い林に育てるためには、下草の種子のある土を撒いたり、下草を移植する。間引き・下草刈り・落ち葉かきをしながら、伐採更新をする。
薪炭林としての利用と更新のための伐採周期は、だいたい15-30年くらいであったが、家具材や工芸材を目的とするのであれば、この間隔はもっと長くなる。 |
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(「自然再生:生態工学的アプローチ」(平成17年4月,亀山章ほか編集)参照。)
(「市民による里山の保全・管理」(1991年4月,重松敏則著)参照。)
- 水田は、生活史の一時期を水中で過ごすトンボ類やカエル類、一時的な水域で産卵し稚魚期を過ごす淡水魚類などの生息場所として機能する。
魚道の設置 |
水田面と排水路との落差を解消する。 |
深み・よどみの確保 |
部分的に水路底が深い場所を設ける。水路の中心線を左右にずらした場所を作る。 |
隠れ場や逃げ場の確保 |
魚巣や、水路壁面のスロープを設置する。 |
転作田ビオトープ |
必要に応じて耕耘、草刈りをしながら常時湛水を行う。その他、常時湛水型稲作や中干し遅延などの方法もある。 |
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(「自然再生:生態工学的アプローチ」(平成17年4月,亀山章ほか編集)参照。)
- 洞窟
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これまでにコウモリ類の一部で人工巣箱を利用している例がある。
ダムの調査横坑や旧校舎でコウモリ類の生息が確認されることもあり、人工洞窟が設置されることもあるが、効果は不明である。
(「国土技術政策総合研究所環境研究部緑化生態研究室 年度報告 2003年度 13)」参照。)
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- 湖沼・池沼
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- 湖沼生態系にとっては、水質、複雑な湖岸形状、より自然な水位変動、湖沼と他の水界生態系との連続性などが、基本的な要件としてまず整えられなければならない。
安定的な湖沼生態系のためには、沈水植物群落の再生が最も重要となる。具体的手法としては、現地の埋土種子の利用が検討されるようになってきている。
- 再生した湧水地は、概して水量が多くないので、すぐに水温が上がってしまう。そのため、木陰をつくって直射日光が水面にあたらないようにすること、水を大量に溜めるような池を湧水点につくらないことが要点である。
(「自然再生:生態工学的アプローチ」(平成17年4月,亀山章ほか編集)参照。)
- 河川
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- 川づくりにあたっては、単に自然のものや自然に近いものを多く寄せ集めるのではなく、可能な限り自然の特性やメカニズムを活用すること。
- 関係者間で以下に示す留意すべき事項を確認すること。
その川の川らしさを自然環境、景観、歴史・文化等の観点から把握し、その川らしさができる限り保全・創出されるよう努め、事前・事後調査及び順応的管理を十分に実施する。また、課題の残る川づくりを解消するために、配慮しなければならない共通の留意点を以下に示す。
ⅰ |
平面計画については、その河川が本来有している多様性に富んだ自然環境を保全・創出することを基本として定め、過度の整正又はショートカットを避けること。 |
ⅱ |
縦断計画については、その河川が本来有している多様性に富んだ自然環境を保全・創出することを基本として定め、掘削等による河床材料や縦断形の変化や床止め等の横断工作物の採用は極力避けること。 |
ⅲ |
横断計画については、河川が有している自然の復元力を活用するため、標準横断形による上下流一律の画一的形状での整備は避け、川幅をできるだけ広く確保するよう努めること。 |
ⅳ |
護岸については、水理特性、背後地の地形・地質、土地利用などを十分踏まえた上で、必要最小限の設置区間とし、生物の生息・生育・繁殖環境と多様な河川景観の保全・創出に配慮した適切な工法とすること。 |
ⅴ |
本川と支川又は水路との合流部分については、水面や河床の連続性を確保するよう努めること。落差工を設置せざるを得ない場合には、水生生物の自由な移動を確保するための工夫を行うこと。 |
ⅵ |
河川管理用通路の設置については、山付き部や河畔林が連続する区間等の良好な自然環境を保全するとともに、川との横断方向の連続性が保全されるよう、平面計画に柔軟性を持たせる等の工夫を行うこと。 |
ⅶ |
堰・水門・樋門等の人工構造物の設置については、地域の歴史・文化、周辺景観との調和に配慮した配置・設計を行うこと。 |
ⅷ |
瀬と淵、ワンド、河畔林等の現存する良好な環境資源をできるだけ保全すること。 |
- 川づくり全体の水準の向上のため、以下の方向性で取り組むこと。
a |
河川全体の自然の営みを視野に入れた川づくり |
b |
生物の生息・生育・繁殖環境を保全・創出することはもちろんのこと、地域の暮らしや歴史・文化と結びついた川づくり |
c |
調査、計画、設計、施工、維持管理等の河川管理全般を視野に入れた川づくり |
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(「多自然川づくり基本指針」(平成18年10月,国土交通省)参照。)
なお、この他に、仮締め切り・切り回し水路の設置、放流水量の調整、表流水の確保などもみられる。
- 干潟
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干潟の造成にあたっては、大きな地形変化が起きないよう、場の選定や外力の制御に関して十分配慮する必要がある。
発達促進のためには、以下の技術方策などが考えられるが、有効な手段であるかどうかは今後検討する必要がある。
- 効率的なマクロベントスの幼生供給や成体の移入が起きるように、既存干潟の近くに場所を選定すること。
- 幼生の供給経路(流れによる幼生の輸送)を考慮して場所を選定すること。
- 繁殖期の成体を持ち込むことにより、受精卵や幼生の当該干潟への接近機会を増やすこと。
(ただし、幼生や成体を外部から持ち込むことが、周辺生態系への撹乱を引き起こすことも考えられるため、注意が必要である)
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(「自然再生:生態工学的アプローチ」(平成17年4月,亀山章ほか編集)参照。)
- 藻場
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海草藻類は多様な生活様式をもち、その繁殖方法も栄養繁殖と有性生殖を併用する場合があることから、藻場再生のための具体的手法は、大きく分けて水深調整・基盤整備、基質整備、播種、移植・種苗投入などが行われる。
(「自然再生:生態工学的アプローチ」(平成17年4月,亀山章ほか編集)参照。)
- サンゴ礁
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- 赤土の流出防止対策については様々な方策(畑周囲のグリーンベルトの設置、わらなどで覆うマルチング等)が提案されており、それをいかにして地域の様々な主体の参加により、実現させるかが課題である。
無性生殖法によるサンゴ移植 |
既存サンゴ群生地のサンゴを採集、断片を製作し、移植する。 |
有性生殖法によるサンゴ移植 |
海草類が着床しやすく、波で洗われにくいように面に溝を付けたブロック。 |
- (社団法人日本埋立浚渫協会ホームページ 参照。)
- 海岸・海洋
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- 海岸については、貝類や海草類が付きやすい環境保全措置、海洋については、濁りの発生抑制・拡散抑制の環境保全措置がみられる。
捨石式傾斜堤 |
石や消波ブロック等を積み上げて建設する。歴史的に最も古いタイプの防波堤。 |
環境共生型の消波ブロック |
海草類が着床しやすく、波で洗われにくいように面に溝を付けたブロック。 |
- (社団法人日本埋立浚渫協会ホームページ 参照。)
- 開放水域の濁りの発生抑制として、以下の方法があげられる。
(「港湾工事における濁り影響予測の手引き」(平成16年4月,国土交通省港湾局)参照。)
施工速度を落とす方法 |
時間あたりの工事量を少なくする。
濁りを発生する工事が重複している場合には、それらの工事工程が重複しないよう工事工程を変更することも考えられる。 |
工法を変える方法 |
濁りを発生しにくい工法を採用する。(密閉グラブ船、トレミー船など)
- 密閉グラブ浚渫船)
- 浚渫工事の際に使用される。グラブ浚渫船と同様であるが、グラブバケットが密閉式であり、水中からの引き上げ時の付着土砂の拡散、水面にあげる際の土砂の漏れだしは、一般のグラブに比べ少ない。
- トレミー船)
- 土砂投入工事の際に使用される砂撒船で、トレミー管を用いて下層に連続的に投入する。
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対象土砂を濁りの発生が少ないもの とする方法 |
捨石、敷砂工では粘土・シルト分等の微細な土粒子を洗い落とした材料を用いて濁りの発生を少なくすることが考えられる。
また、埋立てにおける土取りが目的の浚渫で軟泥層の下層に良質土があるような場合、下層地盤を浚渫することが考えられる。 |
- なお、この他に、開削工法ではなく推進工法を採用した取放水管の設置、台船に入った濁水の船内沈降もみられる。
評価書で本環境保全措置が記載されている事業
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- ・表中”事後調査情報サイト”右のURLをクリックすると、該当する自治体が公開しているサイトをみることができます。
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