実行可能なより良い技術の検討による評価手法検討調査報告書TOPへ戻る
日本国内でBATの概念に近い手法等が既に採用されていることも考えられる。そこで、先進的と考えられる神戸市、川崎市、横浜市の3都市におけるBATに類似する手法の適用状況の有無を把握した。
1)神戸市
神戸市では全国に先駆けて市内54社と環境保全協定を締結している。
この環境保全協定は、ISO14001の仕組みに基づきその内容をきめた。各企業で環境管理・監査(EMSとされる)の仕組みを導入し、発展させてもらうことを目的としている。
神戸市としては、これまで公害防止協定等企業と協定を結んできた経験を持っているが、強制的ではなく、企業の自主的な取り組みを促すことが必要と考えられた。
現在は、Green Company制度と名称を変えている。
取り組みの現状としては、大規模企業はすでに着々と環境対応を進めているが、中小規模の企業の取り組みが遅れている。そのため、中小規模向けの支援を重視している。
協定の中には、省エネルギー、リサイクル等を推進することが掲げられている。
なお、各企業がこの協定に基づき、いわゆる「トップランナー」方式で環境対策に取り組むことはやぶさかではないこと、また、ISO14001そのものが、前年より高いレベルでの環境対策への取り組みを進めることがうたわれている点は、欧州で進められているより良い技術の導入を促進するしくみと類似していると考えられる。
2)川崎市
川崎市では、大気汚染や水質汚濁のような環境基準・排出基準のある評価項目については、環境負荷低減のための措置(すなわち努力)の評価ではなく、措置を講じたことによって環境基準を下回るかどうか(すなわち結果)の評価を重視してきた。
現在のところ、事業者が環境負荷を低減するために採用した技術を評価するには、審査側に技術的知見が必要になるが、現実的に難しい面がある。
ただし、これまでにもごみ焼却施設のダイオキシン濃度について、厚生省のガイドラインで示されている新設01ナノグラムでは不十分という審査員からの指摘もあった。そのため、この時には事業者の自主的な対応でダイオキシン低減対策技術を追加的に導入することになり、05ナノグラム以下を実現することになった。
ただし、このように実施された追加技術の導入がより良い技術でであるかどうかの判断は、審査側でなく、事業者自身が判断したものであり、その判断基準も明確ではないとされた。
生態系/自然環境分野では、環境保全対策の結果を評価するための基準がないため、環境保全対策そのものが充分になされているか(すなわち努力)を評価している。しかし、これは充分に努力しているかどうか、という判断であり、極めて定性的な判断になってしまうため、考え方としてはより良い技術の導入に類似している。
3)横浜市
横浜市では、これまで公害防止協定等を企業と結び、公害防止に取り組んできているが、現状のところより良い技術の導入という考えに基づいた規制、指導等は行われていない。環境影響評価でもこのような手法は用いられていない。市内の一部の企業では、最低水準まで排出量を抑えている企業もある可能性は考えられるが、これはISO14000シリーズなどの観点から導入されているとみられている。
現在のところ、市内の工場等から排出される汚染物質等に対しては、法令で定められた排出基準を守ることが義務づけられている。しかし、排出基準よりも厳しい水準となる環境基準を満たす水準にまでは達していないのが実状である。実際に、BATのようなより良い技術の導入手法を採用するにあたっては、その技術・設備をどのように認定するかが課題となろう。