“実行可能なより良い技術”の検討による評価手法の手引き

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8 今後の課題

この報告書は、事業者が“実行可能なより良い技術”を事業に導入する際、またそれが導入されているか否かについて環境影響評価において検討する際の手引きとして作られたものである。そのため、例えば地方公共団体でアセス審査を担当している方や一般の住民の方々を対象としたものとはなっていない。しかしながら、“実行可能なより良い技術”の導入の考え方は環境影響評価に係る主体によって異なるものではないので参考にしていただきたい。

本報告書は、環境影響評価を行おうとする事業者に対し、実行可能なより良い技術が導入されているか否かについて検討することによる評価手法を提案している。その中で事業者自身が“実行可能なより良い技術”の開発状況を把握する必要があるとしているが、それは言い換えれば環境影響評価に関わる当事者全てが同様のことを求められるということである。国や地方公共団体のアセス審査担当者が必要な技術情報を持たなければ、十分な審査や事前のアドバイス・調整等はできないし、後になって大きな手戻りを生じさせる原因にもなりかねない。技術情報を自ら持たなくてはならないのは環境保全の見地からの意見を持つNGOや住民等も同じである。それぞれの当事者に情報収集の努力が必要であり、また、積み上げられた事例について情報交換することも重要であろう。

今後の中長期的課題として、“実行可能なより良い技術”のデータベースの構築や認証制度が必要である。欧米においては各国政府や民間団体により“実行可能なより良い技術”に関する認証制度が設けられたりデータベースが整備されている。常に技術に関する最新の知見がレビューされて技術評価が行われていることにより、環境保全上の優劣をはじめ様々な技術情報が入手しやすく整備されている。しかし我が国では許認可においても“実行可能なより良い技術”に関する考え方が用意されてこなかったために、そのような情報が整備されておらず、個別のアセスにおいても事業者が採用対象となりうる技術、特に最新の技術動向を自ら把握しなくてはならなくなっている。
 このため、事業者の負担を軽減し“実行可能なより良い技術”の活用を進める観点から、国や地方公共団体により“実行可能なより良い技術”に関する情報を収集・整理し、技術評価を加え公開して、事業者や住民との間で共有化することを進めることにより、技術に関する情報の利用が可能となるしくみを構築することが必要となっている。これは環境影響評価のためだけでなく環境保全のための政策のそれぞれの局面で必要なことであり、今後環境行政全体で取り組む必要がある。

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