“実行可能なより良い技術”の検討による評価手法の手引き

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1 はじめに

1)本報告書作成のねらい

平成9年6月に成立した環境影響評価法による新しい環境影響評価の仕組みにおいては、従来からの「環境基準を満たしているか否かを評価すること」から、新たに「事業者が実行可能な範囲で回避・低減を行っているか否かについて、自らの見解を示すことにより評価を行うこと」に大きく考え方を変更した。
 さらに、技術指針等に係る基本的事項では、「実行可能な範囲で回避・低減を行っているか」を評価する手法として「複数案の比較検討」や「実行可能なより良い技術が導入されているか否か等による検討」が示されている。
 この基本的事項における“実行可能なより良い技術”の記載については、欧米諸国において主に許認可等に既に取り入れられている「Best Available Technology(文中において「BAT」と表記する)」の考え方を基にして記載された経緯があり、平成10年度にはこれらの海外の状況を調査したところである。今年度はこれらも踏まえ、国内における類似の事例として火力発電所の環境影響評価を中心に調査を行った。
 本報告書はこれらの調査結果に基づき、基本的事項に例示された実行可能なより良い技術の導入の観点からの評価手法について、我が国の環境影響評価制度へ具体的に導入を進めるための検討を行ったものであり、事業者による環境影響評価の実施、地方公共団体の環境影響評価の審査、環境保全の見地からの意見を有するもの(以下、住民等)の意見提出等に資することを目的とするものである。

 

2)本報告書の構成

報告書の前半の2~4においては、“実行可能なより良い技術”についての考え方を、わが国の環境影響評価制度に即して整理した。
 後半の5~7においては、この考え方を適用する際に理解しやすいように国内外の事例について整理した。これらの事例は必ずしも環境影響評価に関するもののみではないが、わが国の環境影響評価制度に適用することを前提に整理している。
 なお、国内の事例については実行可能なより良い技術の適用例が火力発電所事業に偏っていることから、これらに関する事例が多くなっている。今後は、火力発電所事業で培われた経験を、環境影響評価を行う他の事業に幅広く適用するとともに、発電所事業についても新たな制度に対応した考え方を導入することが、本報告書の主な目的である。

 

3)検討体制

本報告書は、環境庁企画調整局環境影響評価課が同課から調査の請負を受けた(株)野村総合研究所の協力を得てとりまとめたものである。とりまとめにあたっては、以下の委員より構成される検討会を設け、検討会において各委員よりいただいた大変有益かつ貴重なご助言を参考とした。

検討会委員 (順不同敬称略、役職は平成12年3月現在)
東電環境エンジニアリング株式会社
    環境事業本部 副本部長 理事
伊藤 邦夫
横浜国立大学 経済学部 助教授 北村 喜宣
川崎市 環境局 環境企画室 副主幹 田中 充

また、環境庁 大気・水・環境負荷分野の環境影響評価技術検討会の中西弘座長(山口大学名誉教授)、永田勝也座長代理(早稲田大学理工学部教授)の両先生には、報告書(案)に目を通していただきアドバイスいただいた。