平成13年度 第1回検討会

議事概要

1.日時 平成13年5月22日(火)10:00~12:30

2.場所 環境省第1会議室

3.出席者

(検討会委員)小河原委員、熊谷委員、小澤委員、斎藤委員、下村委員、重松委員、 白幡委員、真板委員、村橋委員(欠席:中川委員、味蓼委員)

(ワーキンググループ委員)海津WG委員、松井WG委員

(事務局)小林課長、森谷室長、上杉調整官、川越主査、ほか

(環境省) 吽野研究員(財団法人自然環境研究センター)

4.議題

(1)自然との触れ合い分野の環境保全措置、調査、事後調査について
(2)その他

5.検討経過

○熊谷座長により議事が進められた。

○議事に入る前に上杉調整官から、配布資料の確認が行われた。

○次に、事務局から資料1、資料2及び資料3が説明され、その後、以下のような議論がなされた。

<質疑応答>

(熊谷座長)資料2のp23(7)「環境保全措置の実施案の選定」準備書・評価書に記載する保全措置の内容の1行目「準備書、評価書には当該生態系の保全方針」とありますがこれはミスですか。

(松井WG委員)「景観・触れ合い活動の場」になります。

(重松委員)以前の話をまた蒸し返すようで申し訳ないですが、潜在的な将来の同じ森林でも、今はあまり親しまれていないとか景観的にあまりみんなから認識されていませんが、将来的に評価されることが考えられるというような場合、それを今から予測というのは難しいのは分かります。しかし、せめてそれは前の方の理念のような形でそのあたりを考慮してきめ細かい検討が必要ということが少し欲しい気がします。

(海津WG委員)これまで昨年の議論の中では、調査・予測・評価という中には評価項目として潜在的なところまでは触れられてないだろうという話になりました。しかし、最初のスコ-ピングの段階でどのような考慮をしたか、その事業に至るまでにどういう検討をしたかということも実際の保全措置の検討の方針を立てていく段階では事業者としてどのように配慮したかということは書くようになっており、そこで既にここはこういう場所であったということを配慮して事業計画を考えていく中で入れることになると思います。

(重松委員)日本の場合、従来、私有財産権の優先ということがありますが、例えば国立公園の集団施設地区で新しいホテルを建てたいという場合、許可するということが前提となっており、いかに高さやデザインを修正し、指導させるかということになっています。しかし、本来の保全はそこはもうダメということがあって本来こういうことが効果があると思います。よって新しいアセスメントはダメなものはダメという感じで本来はあるべきです。この場合、そういう私有財産権とのプライオリティで最初から日本の場合は仕方が無いという前提で許可を前提にいかにそれを和らげるか影響を少なくするかというそのあたりはどうなのですか。

(松井WG委員)一つはスコ-ピングという手続きが今回入り、「地域の環境そのものの概要を整理をして、その中で環境保全に対する基本的な考え方を事業者は示しなさい。」というような手続きと技術的なことをかなり書き込んでいます。その段階で「この地域は自然公園に指定されておりこういう資源を有するところである。」ということは、スコ-ピング段階の概況調査で十分把握できるレベルの内容だと思いますので、その段階で事業者が自然公園なら「自然公園の区域である。」ということに関して自らどのような判断をしたのかということを書き込み、その事業者の姿勢をまず表明させるということが重要であろうかと思います。ただそれをやって良いかという判断は、アセスメントという手続きの中ではなく、事業の許認可を扱う法制度の中で整理すべき問題だと思っています。その点については、今まだご説明をしていない「今後の課題」のところで、「許認可制度における明確な基準や考え方の整理をもう少し明確にすべきと考えます。それがあって初めてアセスメントの関係の中で明確な、イエスなのかノ-なのかの裏付けがつくのではないか」という整理をしています。

(上杉調整官)個別の許認可、例えば国立公園について言えばもちろん私有権の調整は前提としてあります。ただどうしてもここではダメなものはダメというケ-スはゼロではない。要は、場所はどうかということによると思います。ただ国立公園なので一切何も作ってはいけないということは制度上の建前であるので、それは場所の持っている価値と何を作らなくてはいけないのかということの比較だと思います。ただ今回の新しい環境アセスメントの制度の中で当然許認可にも反映するという前提で手続きを進めるので、その際もともと非常に優れた場所で例えば国立公園の保護地区については、最初から会議をして事業の場所として回避するような考え方は当然あるべきで、そういう意味でここでいう保全措置には場所を避けるところがあれば避ける。ただ事業をやる場所についていえばどこかにやらなければならない場合にはなるべく問題の無い場所に移しましょうということをこういう説明の中で明らかに述べることが大事です。

(重松委員)ある開発行為や事業といった場合に、景観や触れ合いのアセスにかけて改善措置が通るとする。それで将来的にそこは私有地なのでまた残された樹林や景観地に対して開発行為が起こる。だから日本の場合、それがずっと繰り返されることでどんどん景観や環境も悪くなり、結局はそこが風致区域だったところもそういうものでは無いということで落とされていくとか第1種が第2種になっていくとか、景観も環境もどんどん悪くなっていく状況であります。そういう事態を見るとこの範囲については今回で1回だけ、2回目はダメだという歯止めは必要ではないでしょうか。

(上杉調整官)結局、環境アセスメントの制度そのものからすれば、個別の開発事業について環境への影響を配慮しているのかを見た上で保全措置項目という個別の事業ごとの判断にならざるを得ない。個別の事業で見れば、その事業の敷地内については一応事業者の方がそれなりの権限を持っています。例えば土地であれば、その事業者の所有地であるので、その中でここを緑地として残しましょうという部分については恐らくそれなりの担保を前提にしていると想定されます。ただ事業の外側の部分について言えば、個別のアセスを進めている事業者の責任でやるというのはなかなか難しい。そういう意味では地域全体の環境保全をどうするのかという地域環境管理的な位置づけでその場所をどう考えていくのかということにならざるを得ないという面が大きいです。そういう意味では、個別の事業の中でどのように残すかについては事業者の方で責任をもってそれが守られる対象になるはずだと思いますが、そうではない地域全体の中でいくつか別のまた事業が出てくることについては、個別の事業の話というよりは全体の環境管理計画の問題になってくると思います。

(重松委員)これを読んでみて性善説に立っている気がしました。性悪説に立たないとこういうのは絶対に機能しないのではないでしょうか。だから法の網をくぐられないように細心の注意で書かないといけない。例えば資料2のp7の(1)「事業者の実行可能な範囲」で、「事業者が非常に資金力が無く十分なそういったことができないので実行可能な範囲で認めましょう。」ということになると、そういう抜け道を示してしまっている気がします。他にもちょっと心配になるようなところが何ヶ所か見られました。

(松井WG委員)まず、指摘いただいた資料2のp7の枠の表現は「基本的事項」という環境省が公的に出している文章の中の記載であるので、これを変えるのは今の段階では難しいです。ここで我々の方が指示しているのは「環境保全措置が実行可能な範囲内で回避・低減すること。」、あるいは「その目標が達成していることを検討することが重要だ。」というような記載の中で、特に強調したのは、今までの環境保全措置は「こういうことをやるので影響は軽微である。」と一言で述べられて終わってしまっているだけでしたが、「そのやろうとしている保全措置の予測される効果がどの程度であるのか。」、あるいは「それによって残される影響もあるのではないか。」などについてできるだけ事業者が正直に書いて下さいということをかなり強くうたっています。それを書くことによって、まさにアセスメントという合意形成の手段であると考えているので、実際には残される影響があっても合意形成がしやすくなるのではないかと考えています。そのように効果・影響の検討を今まで以上に明確に書くように位置づけたことが、アセスメントの今の与えられた範囲の中でやりうるべきことです。

(小林課長)先ほどの重松委員の意見で、一貫してもう少しアセスに筋の通ったものにならないのかという意見がありましたが、アセスメントという制度自体が事業者本人に進めてもらうという、事業者自信にやってもらうことを非常に重視しています。景観や触れ合いの分野は相当幅のあるようになっていると思いますが、規制であればこの程度しか強制的にやれということは言えないというような範囲であっても、事業者が中心となっていろいろと議論をし、対応を考えるので仕組みにするともっと高い段階や幅広いことができると制度的にはなっています。アセスを事業者自身が中心となって行っていくというのは強制力という点では緩やかでないのかや、既成のようなものと比べると物足りないとかそういったところはあると思いますが、むしろ幅が広がったりより高度なところを求める制度になっていくということがねらいです。

(重松委員)確かに従来の閣議アセスよりは非常に細かいので格段に効果があると思います。ただアセスをやる機関はやはり第三者機関、独立した第三者機関にしないといけないのではないでしょうか。例えば、私は福岡のアイランドシティーの委員会に出ましたが、完全な儀式的なものであり、意見を言ったものの事業者側はやっていきたいことを一貫して主張し、それが前提となっているということがあり、現実的には限界があると感じました。今後の課題に第三者機関という問題もあると思いますが、これがない限りアセスは効力の限界があるのではないかと思います。

(小林課長)よく事業者がアセスをやるのではなく、環境省がアセスをやればいいのではないかと言われますが、仮に我々がある事業について調査し、予測をしてこれはこうすべきであるという仕組みにした場合に現実的には言える限界があり、かなり限定されたものになります。例えば、何でこんな根拠でダメなのかという訴訟が起こっても十分対応できる範囲でしか申し上げられないので制度としては限界が出てきます。よってそこは事業者が経緯を公表することでオ-プンになって、そこでは環境省としても意見を出しますが、その中で申し上げられることはもっと幅広く規制的な処方やあるいは我々が直接言えないこともある意味では問題提起としてやって欲しいと言えます。もともと公害や環境の歴史の中で規制という観点から始まっていますが、今はどんどん緩いが幅は広い制度のものになっており、アセスメントなどは個別にどうしているかについてはかなり本人の自主性も尊重されています。やや個別のことについて物足りないという意見が必ず出てくると思いますが、そこのデメリットよりも幅広いことができるというメリットが生きるようにやっていければと思います。

(白幡委員)ここの課題は技術検討会であり、その点で技術的な問題でいうと保全措置のところで前回も話しましたが、回避・低減・代償その次がありますが、この3つの区分が、以前はそう書いてあった気がしますが「回避・低減」がセットにされており、分けにくいのは分かりますが手順を示すにはやはり何段階かあり、「可能な限りこの範囲でこれをしなさい。」または「次の範囲ではこれをしなさい。」という指針の方が読む側にしたらわかりやすいと思います。なぜ保全方針の検討の中で回避・低減というのは、実は項目には回避・低減・代償の区分と考え方はありますが、実際は回避・低減はセットで説明してしまってどちらとも言えないという印象があります。これは大変ご苦労があったと思いますが、できれば何か違いを説明するようなしかもそれを強調するような活動が手順としては良いのではないでしょうか。p13の場合にはちゃんと優先順位高い低いの中で別々に書いてあります。ところがp8だと回避・低減措置の一貫した検討、まとめて検討するという図になっている為、安易に何か低減のどこかでいいのではと事業者が思ってしまう危険性があるのではないでしょうか。

(上杉調整官)ここで「回避・低減」としてしまっているというのはあまり適切でない表現でないです。もともとの基本的事項の中でも「回避しまたは低減すること」と分けて書いているので、表現の仕方については少し工夫を考えなければならなりません。一応p13以降のところでは回避と低減それぞれ考え方が違うということで整理をしているので、基本的にはこの整理に沿ったまずは回避を考え、次に低減を考え、それでなければ代償を考えるという個々の考え方としては一貫しているという理解をしていただきたい。

(白幡委員)代償措置の後は何か無いでしょうか。環境省が新たに触れ合い分野というものに携わっていくことになると当然何らかの現状を変える措置を考えざるをえなません。その場合に、やはり以前よりもいいものにしていくのであれば、代償の後の低減を義務化するかは別としてきちんと明確化させることがあっても良いのではないでしょうか。

(上杉調整官)良いことをやるのであればいいのではないか、ということで非常に大事な場所を潰してまで事業としてやってしまうというところで、逆に変に使われてしまう恐れが今まであったということが前提条件にあると思います。特に触れ合い分野では、今発言されたような非常により良いものを作り出すことで一体的に見ていいものになっていくという発想はありうると思います。しかし、片方で生態系の方でみればやはりいい所をつぶして別の土地に確保しているのでいいのではないかという話ではすまないと心配される部分もあるので、あまりいいものをこちらで作れば良いのではないかという議論を今回、正面から取り上げていなません。

(白幡委員)それでいいとは思いますが、ただ後はカッコして余韻を残してありますが、実は書いていないという何かどうせならばカットしてしまえばよいのではないでしょうか。載せるのであればもっと低減ないし代償を入れないといけない。考え方としては文化財と比較していつも考えていますが、文化財の場合にはこれまで文化財行政は触れ合いなどは拒否するのが一番正しいやり方でだいたい埋め戻す。発掘したら一番いい方法は埋め戻し、みんなに見せない。この頃は表に露出せよという、文化財は有限のその時代を生きる財産であるという考え方でやりつつある。そうすると環境もそれに近い、同じ様なところで理解しやすくなってきました。触れ合いなども同じような考え方になって来たと思います。以前は文化財行政と環境行政とだいたい似ていました。ところが文化財がああなってきてこちらも触れ合いということになり、では措置をそういう面と文化財の面とうまく何か大きな方針としてわかりやすくする。特に事業者にとってわかりやすいものにする。文化財とぶつかる場合もあるし、自然の面とぶつかる場合もあります。そこが考えやすい。できれば何か環境のことだけで語っているというよりは、世の中全体のことで理解できる分野で説明できる方がわかりやすい。これは重松委員が発言されたことと同じ様なことだと思います。技術的には回避・低減・代償というのは技術なので、きっちり区分してその範囲内ではわかりやすく指針を出す方が良いのではないでしょうか。

(重松委員)私は白幡委員と同じ様な危機をもっていますが、代償で例えば自然的な山道のル-トがあり、そこでは野鳥観察や散策をしたりします。そこが潰されて別の場所に代償ということで触れ合いをより高めたとして整備され、確かに歩きやすくなったもののその雰囲気もぶちこわしというような、そういう場合に対する歯止めみたいなのはやはり指導か何かの段階でできないものですか。

(上杉調整官)今回の中ではむしろ、そういった調査をする中で触れ合い活動がどのように行われているのか。その場所の実態を押さえて下さいというのがアセスの基本選択ですが、そうした場合に今、実際に活動をされている人たちとの話し合いの中でどこでどういう活動なら継続可能なのかということをアセス書の手続きの中で具体的な提案をお互いし合う、そういう場としてアセスメントの制度を使っていただくというのが基本選択です。そういう意味で、例えば野鳥観察をしている人でそういうことをできる場所を確保して、その場合には完全に舗装道路をしない方が良いとかを保全対策の中にそういうことをきちんと盛り込んでいくことが必要ではないかと思います。

(海津WG委員)今のご指摘のところにぴったりくるものは無いですが、資料3のp14の妥当性の検証のところで保全措置としてこういうことを考え、その結果どういう効果なり影響があって検討したことを書いていただく。ここで取り上げているのは野鳥観察ですが、例えば野鳥観察の観点からするとこういう環境なり森林の条件があれば野鳥観察が継続できるという知見の調査の段階で活動をやっている方からお聞きしたり、事業者の側からも知見をもって保全措置に当たる。その結果、こういう効果が得られると判断した段階で、今ご指摘になられたところは押さえなければならないと思っています。よって手続きとしては織り込まれています。

(松井WG委員)補足ですが、事業者に効果の確認と影響の確認を今回必ずやらせるようにしているので、例えばこの道が潰され、それを回避することができないので代償として新しい歩道を整備するとした場合、その新しいル-トはどういう効果が得られると利用者が判断してどういう風に作ろうとしているのかということについてもそこに明記させます。それによって今までやられていた歩道沿いの森林の環境と今回整備しようとする森林環境の潜在性、あるいはこういう管理をすることでその潜在的な機能を高めることができるのでこちらの場所を代償措置の場所として選び、そのことによって効果が得られると判断するというところまで書いていただく。その結果、さらにそれで触れ合い活動が継続されるかどうかについては事後調査をすることによって、「歩道の付け方で雰囲気が台無しなので野鳥観察に訪れる人が少なくなった。」ということが得られれば、追加的な措置として歩道の修復をしていくなどの仕組みは一応しています。効果の確認をいかにさせるかということと、事後調査でその効果を検証した上で追加的な措置が明確に取られるような道筋をアセスの中で事業者に約束していただくというあたりで、そのあたりのフォロ-を技術的な仕組み上は整えているつもりです。

(小河原委員)もう少し早く価値軸の段階で話せば良かったですが、資料2のp19とか資料3でいうとp12の触れ合いのところで、様々な活動を支える環境に対する保全措置という話が出てきますが、結局触れ合い活動とは大きく分ければここでいうケ-ススタディに取り上げられたバ-ドウォッチングのような対象に対する間接的な関わりと里山体験活動のように樹木を間伐するという直接的なものの2つがあります。その中で利便性ということでは「活動のしやすさ」という言葉を使っており、これは活動に適した空間という意味だと思います。その活動に適した空間ということであると、間接的には鳥に対する視認性、いかに鳥を見つけやすいかということであったり、あるいは鳥に対する接近性、どこまで近づけるかということ、そういった適した空間構造そのものを保全するということがもう少し出てもいいのかと思います。直接体験でいけば林床が割と開けた行動しやすいような構造があるなど、構造性の話がもう少し明確に出てきても良かったかと思います。それはこの前の報告書になってしまっている価値軸のあたりでお話しなければならなかったかと思いますが。また、快適性の部分でここでは静けさということで騒音、ここでは「デシベル」ということで示されていますが、どこかでこういう言葉を使うかどうかは別として「サウンドスケ-プ」という言葉がだいぶ前から言われて来ており、耳から認識するという景観や環境そういうものをどう表現したらいいのかということです。まさに静けさあるいは耳から入る、野鳥との触れ合いでいえば心地よい鳥の声とかそういうもの、それも一種のサウンドスケ-プかもしれないが、そのあたりをどこかで明確にしていただけると良いかと思います。

(海津WG委員)今、野鳥観察と里山体験という2つ揚げていただきましたが、ここで価値認識の指標として挙げているものは個々の活動それぞれについての価値軸というよりも、むしろ場の利用者からみた利用実態などで捉え、その中でどの価値軸が高いかを重視し、それを保全しましょうという2段階で保全しています。

(小河原委員)景観の方はこれまでの経験があるので相当細かく個別の課題に切り込んでいけますが、触れ合いはなかなかこういう検証をしてきた経験がないので、ぜひできれば資料3のp12の表の中で、例えば利便性のところで変わらないと書いてしまうのではなく、環境の変化予測の中で視認性などを考慮して欲しいということを含めて書いていただきたい。

(上杉調整官)今の話で、資料2のp21で、「触れ合い活動の場におけるより良い技術の取り入れ方」というのがあります。しかしながら「触れ合い活動の場」項目がアセスメントの対象になってから間もないことから、触れ合い活動の場の観点からみた環境保全技術そのものは確立途上にあります。ただし、「触れ合い活動の促進やフィ-ルド整備、あるいは農林漁業の資源管理など、関連分野における技術の蓄積は進みつつある。」と書いてあります。しかしながら逆にここで「もっと具体的にこういうのがある。」というのをぜひご提言いただきたい。

(小河原委員)それは環境省全体としても受け身ではなくより積極的な環境創造をしていくことと関連してくる話です。

(白幡委員)「より良い技術の取り入れ方」という何か項目分けでもできればいい。つまり視覚・聴覚など五感ごとにこうだというような具体例がないと技術にはならない。技術的に五感ごとに説明し、各項目について現状や学術的な考え方を入れておくのは悪いことではない。実際の措置にうまく結びつくかはこれからの課題ですが。

(斎藤委員)より良い技術の話ということで、景観だとコンピュ-タグラフィックスなどを書いていますが、スコ-ピングの時から例えばデ-タベ-スを整備し、後はオ-ダ-メイドでわかりやすく説明したり、結果をインタ-ネットで公表する等とあって、例えば触れ合いの活動種と場がこのように調査したらこうなった、また植生やいろいろなデ-タという技術を適応して評価に至った基礎デ-タやバックデ-タが割とオ-プンなのかそうではないのかという話、そうやって得られた新しい調査デ-タというのは例えば環境省のとあるところに集積されて使われるのか、そうしたら別な技術を適応した場合に、別な評価や後で別な形で評価の仕方が変わってきた時にバックデ-タを一元的なりオ-プンな形、それはNPOやNGOを含めて使えるのですか。すぐ技術と言ってしまうと「技術が良ければ結果もいいだろう」ということになりますが、基礎デ-タがきちんとあり、それが一つは重要な成果ではないかと思います。そのあたりが最初はわかりやすくオ-プンにというイメ-ジはスコ-ピングの時からあったが、保全措置の評価までいった時に「事業者がここを評価しました。A案よりB案の方が評価が高いです。」と言われた時に、それはそうではなくそのデ-タを使ってこうやればもっと高い評価が得られるのではないかというようなことがやれるかどうかという話にかなり近いのではないでしょうか。そのあたりをどの程度にお考えになるのですか。

(上杉調整官)一つは今環境省の方で12年度の補正予算を使って過去のアセスメントの事例を集め、デ-タベ-ス化(アセス電子図書館)をしようとしています。これはアセス書そのものの記述が読めるというものにしかならないですが、そういうデ-タベ-ス化についてはこのような予定です。ただ非常にはがゆい部分として実際にアセスがやられ、事業が終わった時に取られた保全措置に対して効果の検証としての事後調査についてあまりやられていない実態があります。そういう意味ではもう少しこのあたりの情報がうまく入る仕組みができれば、個別の技術の結果としての効果そういうものが使えるのか使えないのかが蓄積されていくのではないかと思い、今後の課題として重視していきたいと考えています。

(小澤委員)先ほど五感ということがしたが、事業者が見て対応できるようなものがあれば良いのではないかと思います。例えば、国土交通省で人と建築技術ということで新しく利用者の評価などを入れ始めており、そういうように動き始めているということは高く評価していきたいが、それは単に利用者の数などそういう観点での評価だけです。よってある程度最低限はこのレベル、次のところはここを押さえるなどそのあたりが無いとなかなか次のステップに行かないのではないでしょうか。

(熊谷座長)今の小澤委員の意見は利用者が判断でき、使いやすいデ-タでないと意味がないのではないかという話でした。それは今後の課題の方にも関わってくるでしょう。

(村橋委員)最終的な成果物として見た時に若干、誤字が気になりました。例えば資料3のp11<予測結果の概要>の1、2行目の言葉「普及価値」は「普遍価値」ではないかとか、資料3のp19で代償措置の右側のところで「里山体験活動からみた適地を」のところの誤字を直して欲しい。p20では効果の確認の「利用者の価値認識」のところで「以前との変わらない」を直して欲しい。

(重松委員) ケ-ススタディは今後、事業者のテキストのようになるのですか。例えば資料3のp3、2)保全措置の検討手順と方針の「立地・配置」で「現計画に対する予測結果では、構造物の立地・配置に起因する価値の変化が認められなかったことから、検討の対象としない。」と何か簡単に済ませているが何か理由か何かが無いとテキストがこうなっているから立地・配置は問題無いというように捉えられてしまうのではないでしょうか。なぜこうなのか、根拠を示さないとまずいのではないですか。P7、2)代償措置[1]「具体的措置としては、現状において価値認識の低いランク2~3の残置樹林へ高木類の植栽及び植生管理を実施し、喪失される「ランク4~5」と同等の樹林を復元する」とありますが、この高木類というのがある程度育った成木を植栽するのか今は苗木だが将来高木になる高木類を植えたのか、早期に影響を是正するということで高木を植えなさいということなのか、無理をして高木を植えても植え痛みがあるのでかえって苗木を植えなさいなのかわかりにくい。また、p10の事後調査のところで植えたが土壌が悪く木が一部枯れたのでそれを植え替えるという措置をほどこしたとあり、しかしそれは正しい措置ですが、最前の予測をして措置を講じたが事後にそういうことが起こったのでそれはそのままで良いですが、「そういうことを予測して防止するために土壌調査をあらかじめして、元々土壌が悪くことが予測されたので必要であれば土壌改良をし、それでも枯れた場合には5年後にもう1度是正措置をしなさい。」とp7のところでそういう土壌調査や土壌改良を十分に行うということをしっかりと明記する必要があるのではないでしょうか。

(真板委員)資料2と3の整合性の問題ですが、資料2で「(3)保全方針の検討」「1)保全方針の検討の観点」とあり、これは資料3にもそういうことが書いてありますが、資料3の方では間に「2.保全措置」という項目が間に入っていて、その後に「2.1保全方針の設定」「2.2環境保全措置の妥当性の検証」となっています。資料2と3の違いをかみ合わせが悪い気がしたので、資料2で統一するなら資料3も合わせる方が良いのではないでしょうか。

(熊谷座長)資料3の目次があるとわかりやすいのではないですか。

(松井WG委員)ちょっといれこになっているところがあります。資料3の方の表題の付け方を直します。

(重松委員)ケ-ススタディのp1の「1.保全措置検討の観点」で「周辺からは緑の覆われた山腹として日常的に眺められるとともに」ということでどこからもパッと見られるところだと思っていますが、検討は1、2カ所をケ-ススタディでコンピュ-タグラフィックスでやっているのみであるので、もっときめ細かい検討が必要ではないですか。検討をできるだけたくさんの場所からする必要があるということでないと、これをテキストとしてやる人は1カ所か2カ所でいいのかと思いかねない。

(熊谷座長)ケ-ススタディはできるだけ具体的でわかりやすいということなので、全てを網羅しようとするとどうしても抽象的にならざるを得なません。個別の事例を逆にバラバラと羅列しなければならず、そういう非常にわかりやすさと矛盾するような作業になってしまうので、できるだけ誤解をされない部分については書き加えていくということにさせていただきたい。

(斎藤委員)そういう意味で、例えば本来は景観にしても複数の視点を検討しているので「それぞれからのほんのごく抜粋である。」というケ-ススタディの説明が必要ではないですか。

(熊谷座長)重松委員の発言されたようにこれをそのままやれば良いというような捉え方をすると我々の本意ではないし、「これをあくまでも参考で、これを参考にして全ての項目にケ-スバイケ-スでやりなさい。」というようにケ-ススタディの位置づけをきちんと書いておくことは必要です。

(下村委員)先ほど白幡委員が発言された回避と低減を分けることが大変そうです。本格的な回避と部分回避をどういうように分けるのか。今は部分回避で低減と一緒にしているが、回避という言葉の中に両方含まれています。法律というか制度の中ではそこをハッキリ分けた言葉は何かあるのですか。

(上杉調整官)基本的事項では言葉の定義が明確にされているわけではないです。回避というのは考え方については資料p14に定義の違いなど整理して書いてあります。ただ厳密にどこが回避でどこが低減かという個別の厳密な定義をするのは非常に難しい。

(下村委員)ケ-ススタディで回避と低減をどう書き分けるかというのが技術的にはすごく難しい。また触れ合いでもそうですが、基本的には合意形成をするためにここにはどのような触れ合い活動ないし景観があるかということをきっちり説明させて、それに対する影響も予測して説明する。それは数値で示すだけではなく、例えば先ほどバ-ドウォッチングの話が出たが、通路をウッドデッキ等に整備して行われるバ-ドウォッチングと、整備しないで自然の状態のままで行われるバ-ドウォッチングの性格が違ってくると思います。きっとそこを書き分けて活動を保全するということなので、そこでどのような活動があったのかをきっちり記述できるかどうか。触れ合い活動については知見がハッキリしていないので、非常に難しい。これの後に何か資料編をつけるのか。技術マニュアルとか既存の知見に関する資料は今回はつけないのですか。

(上杉調整官)景観分野は前回付けたが触れ合い分野は付けれるほどのものはないのではないでしょうか。

(海津WG委員)確かに割合としては触れ合いの方は少ないですが、前年度は触れ合いと景観を一緒につけています。

(下村委員)先ほどの小河原委員のご指摘の通り、文献という形では出てこないでしょう。そのあたりはどうすれば一番よく伝わるかというところを工夫しなければいけない。ケ-ススタディのところでもう少し細かく、景観に比べると触れ合い活動の方もちょっと書き込みが薄い気がするので、それを補強する形で今のようなことも考慮すべきです。

(熊谷座長)今日の資料は前回までに比べると要領良くまとまってきている気がします。基本的にはこのケ-ススタディをブラッシュアップすれば良いのかと思います。ただ、このままでは資料2や資料3についてもまだ足りない部分もあろうかと思いますので、それを含めて今後の課題について事務局から説明していただきたい。

(白幡委員)これはそのまま後につけるのか。あるいは委員会でまた何かやる時に引き継いでいくものなのか。どういう取り扱いになるのでしょうか。

(上杉調整官)今まで技術手法の検討と個別の環境アセスの進め方をやってきましたが、それだけでは言い切れないことが結構あります。あるいは個別のアセスを進める上でいろいろと問題になるところが未だあります。それを課題として抽出してみたということです。そういう意味で個別にかなり意欲的に書いてあるという印象だと思いますが、個々の話についてはそれぞれ個別に検討しなければいけないし、この委員会で全部解決しなければならない訳ではないものも含まれています。位置づけは、私個人の考えですが、より良いアセスを進める上で技術的な検討で済まない部分については、このように押さえてあるということを後につけていただけると良いと思っています。

(小林課長)ここでは触れ合い分野について検討していただきましたが、ものによっては全般的な問題に関わってくるものもあり、必ずしもアセスメントの問題だけではなく全政府的な課題に関わるものもあります。最終的にどのようにまとめるのか、それはだいぶレベルの違う問題があるのでもう少し検討していきたい。

(下村委員)確かに多様なものがあるということですが、「アセスの評価技術を検討し、技術をさらにブラッシュアップするための課題」と「アセスの実効性を高める課題」とさらに「制度を見直してより良い環境を実現するための課題」と3つぐらいの課題が入っているのではないでしょうか。例えば1番目の「基盤情報の整備」は全般的に関わっており、先ほど斎藤委員が発言された環境省の役割の中にあるデ-タベ-スの整理などはまさに「評価技術を上げるための課題」です。そういうレベルの話と、「意見交換の場をもう少し確保しましょう」とかあるいは「実施に向けた体制の確保の話」や今回の3段階を書き分けた方がわかりやすいのではないでしょうか。特に今回は「技術をブラッシュアップするための課題」が一番重要であるので、先ほどの斉藤委員の話はもう少し強調した方が良い。

(熊谷座長)「環境省の課題」と「委員会レベルの課題」と「実際の事業者にとっての課題」があります。重松委員が指摘されているように事業者側にとって、この通りにやれば良いという使われ方は困るので、白幡委員が発言されたたようにこの委員会のアウトプットを公表していく際には、まえがきやあとがきで整理することがまず第一の課題です。ここにもうちょっと加えて欲しいのは「これからデ-タを整備する」とか「過去のデ-タを整備する」ということには賛成ですが、現在でもいろいろなところに有効なデ-タはあるはずです。もちろん環境省は基礎調査でやってきているし、国レベルで地方レベルあるいは民間レベルでそういうデ-タを事業者側が活用しているということがされていない気がします。現在は精度のいいデ-タが地域ごとに蓄積されているので、それを今まで以上に活用するということをどこかに書いてあると良い。

(小河原委員)少なくとも「合意形成のための場の確保」とは、ある意味では技術的側面からきちっと見解できるはずです。「体制確保の確保」はシステムなので難しいかもしれませんが、「創意工夫を重ねる」というのも必要なことで、それをより技術的な側面で創意工夫を重ねるということを技術マニュアルではしっかり書いておく必要があります。

(重松委員)そういうことではダメというようなクギを刺すようなことを最初の理念で書いておく必要があるのではないでしょうか。

(傍聴者)防衛施設庁の者です。初めて参加しましたが、話を聞いていると触れ合いの分野というよりも触れ合いの活動の場の議論をしています。先ほど静的な耳から聞くとありましたが、まさしくこの中には動的なものだけではなく例えば通気性や竹林の音、川のせせらぎなど静的、心理学的な分野も含まれており、それらは自然との触れ合い分野に関わるものです。そのような心のケアやゆとりの観点からも技術的考察をするべきで、そういう視点で見ていけば先ほどの回避という言葉の定義はどうなのかということが見えてくるのではないでしょうか。

(熊谷座長)今の話で本日初めてこの会議に参加したということですが、この検討会は過去3年間行っており、自然との触れ合い分野だけではないです。自然環境全体に対する影響を本来であれば全てト-タルな形として押さえるべきであろうし、人間の全感覚や認識など全てを含めて考えなければならないということは環境を捉える基本としてあると思いますが、それを委員会としてはいくつかに分けて検討しています。また技術的なことに絞ることから始まっており、「自然との触れ合い」については「景観」と「触れ合い活動の場」に限るということから始まっています。よって、スタ-トがそうなのでできるだけ生態のことについてはこの委員会では触れていません。今日たまたま鳥の話が出ていましたが、鳥以外についても対象としている。今日聞いてそこだけではないので、最終的なとりまとめの際には誤解のないようにしていきたい。

(上杉調整官)今回で検討会自体は最終回であり、生物多様性分野についても同じように進めている。報告書の骨格も同じように進めているのでできれば7月くらいをメドにとりまとめをしていきたいと思っています。