1.日時 平成12年5月22日(月)14:00~17:00
2.場所 環境庁第1会議室
3.出席者
(検討員)阿部委員、上野委員、大島委員、奥田委員、小野委員、小泉委員、幸丸委員、中越委員、鷲谷委員、渡邉委員、清水委員
(欠席:尾崎委員、亀山委員)
(事務局)寺田課長、小林室長、渡辺調整官、中山補佐、ほか(環境庁)
有本研究主幹、川瀬研究員、中村研究員、畠瀬研究員(自然環境研究センター)
塚本部長、小栗主任技師(アジア航測)
4.議題
(1)陸域生態系における調査・予測・評価手法について
(2)その他
5.検討経過
○ 大島座長により議事が進められた。
○ 議事に入る前に渡辺調整官から、
・配布資料の確認
・前回の検討会における主な意見と検討会中間報告書の構成案の説明
などが行われた。
○ 次に有本主任研究員(自然研)から資料3,資料4について、塚本部長(アジア航測)から資料5について説明された。
その後、以下のような議論がなされた。
(渡辺調整官)分かり難いところもあろうかと思いますので、ご指摘があればお願いしたいと思います。
(大島座長)今回でまとめなければなりません。まず基本的な考え方の中で、今説明がありました点について、こんな点が欠けている、あるいはこれは間違っているのではないか、ということがありましたら挙げて頂いて、具体的なケーススタディをどうするかということは、後で検討をして頂きたいと思います。
(小野委員)これを全部やるのは大変だろうと思うのです。第1章の各項目が、ケーススタディの中の各項目と対応してくるようにしてあるわけですね。その上で問題になるのは、影響のフロー図のところが、「原因となる行為と想定されるインパクト」だけで済むのか、それだけでは足らない気がします。対応策というようなものが要る。
(渡辺調整官)資料3p7図1-3の部分ですね。1つの例ということで持ってきたのですが、その前の資料3のp5の影響をどう捉えるかで、影響をマトリックスだけではなくて、どの影響が、次に二次的にどの影響につながっていくというフローで整理することも大事ということを、1つ言いたい点として挙げてあります。そのいいサンプルがないかということで1例として示させていただきました。いろいろな定義の仕方があろうと思いますが、良い整理をした良い事例があればご提示頂ければと思います。
(小野委員)概論的に考えるとシステムアプローチのように、ヒエラルキーを付けてエラーを出していきながら、全体を構成をするのが1番分かりやすいと思うのですが、この場合は、影響はどう出るかという、予測不可能なところが多いので、複雑なものになっても仕方が無いと思います。やはり影響評価の技術的なものになるので、どうしてもデストレートのところをちょっと触れておかないといけない。それから資料3p10で、この図はおかしい。というのは、全体的に大変複雑になることは予想されるのですけれども、1番最初のアウトプットが生態系の水平・垂直構造になるというのは、どうも理解できない。例えばこれから出てくるのは、食物連鎖構造であるとか、エナジーフロー図であるとか、そういうものが出てくると思うのです。生態系の水平・垂直構造というのは、植生の基盤であるとかそういうもので、これがアウトプットになると矛盾するのではないか。
(大島座長)それは植生のところに入れた方がいいのですか。基盤関係ですか。
(小野委員)アウトプットを書き直して欲しい。
(渡辺調整官)分かりました。作りながら確かに少し迷っていた点です。
(小野委員)それから資料3のp16で1番最後の予測対象時期というのがありますけれども、確かにおっしゃる通りだと思う。時間を考えなければならないというのは大変大事なので、その場合ケーススタディにどういうものが入ってくるかによって、相当意味が違ってくるので、ケーススタディのところで、もう一度、これはゆっくり説明をして頂きたい。
(渡辺調整官)実はケーススタディの方では、この時期のところまで、例えばフクロウであればこうなる、カタクリであればこうなる、というところまで本当は整理していなければいけないのですけれども、ケーススタディはまだその辺の作業が追いついておりません。
(小野委員)私が言いたいのは、整理するのは生活史というものを考慮に入れながら、どう処理するのかということなのです。特に動物の場合は、繁殖期を中心にものを考えていくわけですけれども、それだけでいいのかということも勿論ある。
(大島座長)それはケーススタディのところで出てきます。もう一度そこで聞いて頂いてご意見をお願いします。
(中越委員)私は3つありまして、その1つで意見として同じだったのは、今の生物の生活史が事業の時間とは違う、という認識が要るということです。もう1つは、資料3p11「環境影響評価段階での類型区分に用いる情報の例」という部分で、縮尺が1/2500~1/10000とあるのですが、実際にavailableなものは1/50000です。圧倒的に1/50000が多い。1/10000と言われるとアセスをやる方たちは、1/50000を拡大するしか無くなってしまう。いろいろな段階があるけれども、これを1/10000のままにしておくと、すごく大きな違いが出てくると思うのです。
それから、3つ目がその中味のことです。この間、地理科学会でいろいろ議論をして、地理学関係の方にも賛成を頂いたのですが、土壌図という図の扱い方で、幾つかの土壌図では植生図を重ねるとよく一致するのですが、どうも相互に関係を持たせて作っていることが多そうなのです。ですから地質図、それからこういう地形図等は、独立の変数として対応できるのですけれども、ここにはどういう形で土壌図を入れるのか分かりませんが、入れないのかどうかということの議論をはっきりした方が良いと思います。
(大島座長)関わってくることは確かだけれども、別個に作っている。
(中越委員)別個であることを確認の上、使用するという土壌図についての扱いは、システムがしっかりしていれば、土壌断面を作ってまとめても大丈夫だと思います。それからp10の方に戻りまして、<基盤環境と生物群集の関係整理の考え方>で、成立基盤と植生の点々で囲んだところが生態系ということですね。それと、いわゆるランドスケープと言いますか、相互の連関はこの図の中でどこに出てくるのかなということ。もう1段階上の構造ですよね。
(大島座長)空間レベルでどうなっているのか。ランドスケープ自体の時空間が必要だということ。もう少し面積の小さいものは、生態系そのものの問題ですか。
(中越委員)今回お使いになっているのは、里山なのですけれども、それこそ大島座長が力を入れて研究されている、川とかそういうところは、非常に複雑な系があるので1つの図では無理なのです。
(鷲谷委員)これまで議論の対象になっていたことは随分整理された感じがしたので、今まで意識していなかったことで、考えた方がいいと思うことがありますのでお話したい。今そういうことが恐らく問題になってきていると思いますので、生態系への影響の予測の中に、生物学的侵入を介した影響を入れた方がいいと思います。生息場所に関して、失われるものだけに着目しているけれども、一方で工事によって大分違った環境が新しく出来るわけです。もしその周囲に、問題を起こしそうな外来種の生息地などがあるとか、生息の可能なルートがあるとすると、外来種の侵入により、残されている在来種を中心とする生態系に、何かまた影響を与えることも有り得ると思うのです。それについては、調査は特にそんなに加えなくてもいいかもしれないが、問題になりそうな外来種がどういう生息条件を模擬するのかというようなことと、侵入してくるチャンスがあり得るのかだけを考えて、新しく出来た環境との関係を分析することで評価は出来ると思うのです。場合によっては重大な影響を与えることもあるかもしれない。そういう外来種侵入のチャンスということを、生態系の影響ということで付け加えて頂けるといい。
(大島座長)大変いいご指摘ありがとうございました。外来種を考える場合、広域的に影響があるものと、非常にローカルなものがある。それをどう評価するか、上手い手法があるといいのですが。
(上野委員)これは関東地方の里山を対象としての問題で、ケーススタディをやることになるのですか。
(大島座長)いや、後で出てきますけれども、1つの地域を選んでケーススタディをしています。
(上野委員)関東地方というのは割合、単純な地質の上に成り立っているのです。けれども、例えば九州とか四国へ行けば、そう簡単な地層地質で成り立っているわけではない。それと同時に、注目すべき種、あるいは群集も、関東地方の里山なら、ある程度の見当はつくけれども、そうでないところだと、まず、そこから分からない。調査の中でそういうものが出てくる可能性が非常に高い。その辺はどうお考えですか。地質というのは、例えば非常に純度の高い花崗岩地域というのは、非常に特殊な環境です。けれども、1/2500から1/5000くらいの地図を作ってみると、その中にはオアシスみたいに、違う岩が入っていて、そこはまた違うものがいる。それは関東の里山ではちょっと考えられない。
(中越委員)私がまさにそういう地域にいるので申し上げると、石灰岩地が点々とあると非常に特殊な群落があるのです。帝釈峡とか新見とかですね。それはそのスケールではなかなか分からない。
(上野委員)だから関東地方の里山を対象として考えれば、特に問題は無いのですが、もっと全国的に考えると、この視点も入れておかなければいけない。
(渡辺調整官)第2章のケーススタディの方は、まさに関東地方の里山地域を想定して、そこでどういうことが必要になるだろうかということで整理していますが、第1章の方は、もっと一般化して、例えば地質ではこういう要素に注意しなければいけないというのを、関東地方に限らず全国的な視点で、例えば九州ではこういうことが大事だというのがあれば、そういうことも出来るだけ含めて、まとめていければと思いますので、例えば西日本なり東北では、「こういう要素が入っていないと話にならない」というのがあれば、第1章の中に入れていきたいと思います。
(大島座長)これはそういう系のところに類する特別な生態系を取り上げるので、それと併せて、そういうことを総論の中に組み込んでいくことでその問題はいいのではと思うのですが。
(上野委員)これだけ見ると、それが組み込まれていないのではないかという感じがします。
(大島座長)確かに資料3の総論のところはいろいろ書き加えなければならないところがあります。今のようなご指摘を踏まえて、それを組み込んだ内容にしていきたいということでご了解を頂きたい。大変大事なご指摘を頂いて有難うございました。
(上野委員)基盤が何であろうと、1番上の土壌層が厚ければいいのです。そうでない例えば富士の溶岩の上とか、平土帯とかいう特殊な基盤のある場合は、様子が違ってくる。それともう1つは、先程おっしゃったように、島みたいに小さく違う基盤がある場合。例えば貝なんかはたちどころに違ってきます。その辺の視点がもう少しどこかで注意されていなければいけないと思います。
(中越委員)資料4のケーススタディは、生態系の調査・予測・評価を行うにあたって、例えば、サンショウウオで言われている、上位性だとか典型性をきちっと説明しているものであればいい。そうすると別な地域の場合でも、「ああ、自分たちの地域だったら、こういう目で読み変えれば、上位性とか典型性をこう理解すればいいのだ。」と考えることができる。ケーススタディを増やすというのは不可能ですから、むしろ、そこを上手にされることが必要なのではないか。いろいろな条件、誰でも知っている、という表現ではなくて、関東のこの部分はこれくらい分かっているというところから始めておかないといけないと思う。アセスの会社の人達から、「上位性」とか「典型性」とか「特殊性」について、よく聞かれるので、まさにその辺について「これを読めば分かる」というものを作って頂ければと思います。
(渡邉委員)全体の総論のまとめ方ですが、図1-2を見ますと、ここで言われているのは、生態系へ及ぼす影響の予測の段階までで、調査・予測の手法までは項目に載っているのですが、最初のアウトプットの影響評価手法の話の総論的なまとめ方はやっておいた方がいい。せっかく1度、HEPだとか、いろいろな評価手法に関して資料を集めて、若干書き直したと思うので、予測してこうなるという結果が出た後、それを踏まえてどう評価するというところまで書くべきだと思うのですが。
(渡辺調整官)ご指摘の通りなのですけれども、今回の整理の中でも調査・予測ということを考えた時には、まず何を評価しなければいけないかを最初に考えて、それに応じて必要な予測手法を考え、効率的な調査を考える、ということで、評価と絡めて、調査・予測の説明をすることは準備しています。ただ、実際予測した結果について、更に評価となれば、環境保全措置でどういう措置を考えて、その環境保全措置による回避・低減の努力が十分かどうか、という辺りで、つまり環境保全措置と評価というのは、非常に密接不可分です。今回のまとめの中でも、少し評価とか保全措置の説明を加えたいと思うけれども、本格的には、これは3年目の最重要課題と思っているところです。つまり、自然を相手にしたときの保全措置のあり方、それと連動して評価をどう考えていくかは、十分時間をかけて議論して、3年目の主要テーマにしていきたいので、今回は少しでもそれにつながるような説明をつけておければと考えています。
(鷲谷委員)先ほど議論になっていたことと関連のあるアドバイスみたいなものですが、資料3p10の[3]のところで、「類型区分ごとに基盤となる環境について・・・調査・整理を行う」とあります。その後に、その地域特有の生態系のモザイク性を十分捉えられるような空間的な尺度で把握するというようなことを入れておけばいいと思います。地図のところでも問題になりましたが、相手がどのくらいのスケールのモザイク性なのかによって、視点の粗さが違ってくると思うので、但し書き的にすればいい。
(大島座長)大変にいいご指摘を頂いた。少し空間レベルでの考え方を入れておきたいと思います。
(鷲谷委員)そうですね。相手の粗さというか、それに対応していかないといけないという事がどこかに書かれていないと。自然だって多少違うと思いますので。
(奥田委員)資料3p1を見て、文章は結構なのですけれども、これに載っている図があまり上の文章を表現していない。ほとんどこれは、森林のことしか視野に入れていないような書き方です。生態系の難しさは森林だけなら簡単ですけれども、いろいろな草地や耕作地がある。そういう複雑なパターンを、どこでどう地域区分したりというのが難しいので、それをここで表現してほしい。「ギャップ」とか「倒木」といった言葉は、ここで出てくるものではないと思います。
(大島座長)そうですね。これは森林がどうも頭の中にあって。むしろ、生物群集の階層というふうな理解をして書いた方がいい。
(奥田委員)ですけれども、書き出しが、森林、草地、耕作地などの様々な環境が集合しているとなっているので、それをこれからどう利用しようかという、ここにもっとそういうものを含めた方が良いのでは。
(大島座長)階層構造そのものが、初めからそれぞれ特有な多様な生き物。
(奥田、それが何も無いので、上の文章を分かりやすく表現したものなのか、ということになります。
(大島座長)例えば森林では、と理解して頂ければ。
(小野委員)動植物の多様性と、植生と土壌の構成と、土壌の基盤の3つだけでその他は書かない方がいい。
(渡辺調整官)説明の方には、水平的な環境のモザイク状が大事だと言っておきながら、この図にそういった水平的な構造が見えないということですね。
(大島座長)おそらくこれをまとめたところでは、階層構造というのは、水平・垂直構造両方を含んでいる階層構造だと。
(小野委員)資料3p2の[2]の文章はよく分からない。これは、分けてきっちり整理した方がいいと思います。
(渡辺調整官)1番自信が無かったところが、ここでございます。いずれにしても、このp1とかp2については、最初の部分で大事なところですので、頂いた意見も参考にして大島先生や座長代理とも相談しながら、分かりやすいアウトプットの整理をしたいと思いますので、宜しくお願いします。
(鷲谷委員)言葉の問題で私もいつも困っているのですけど、普通は「生息」という言葉は動物にしか使いませんね。植物は「生育」と言いますね。しょうがないから、「生育・生息」と書いたりしているのですけれども、これはどうしたらいいでしょうか。いつも「生息」という言葉で統一されているようなのですが。
(鷲谷委員)どうしますか。植物を対象としている人はこれを見るとちょっと。
(大島座長)最初、脚注でも入れて、「生息」と「生育」は統一して、「生息」という言葉を使うという事を断っておけばいい。
(小泉委員)地形分類の視点だけ考えても、今4つくらいあります。地形分類というと、普通は地形は形で、地質は何かの物ですから、何とか岩石とか、そういう名前ではっきり分かるのですけれども、形はいろいろあって把握の仕方が非常に困るのです。
まず1つは形そのもので、例えば分類する時にここは平坦地だとか傾斜地だとか、起伏が大きいとか小さいとか、そういう形そのもので分ける方法があります。ですから、1/50000くらいの地形分類図というのは、大起伏山地とか、小起伏何とかという名前がつけてあるケースもあります。これは形ですから、水の動きとか、土壌の動きでみんな関わってきて、植物も関わってきます。それが1つ目です。
それから2つ目は、成因別の分類で、これは河岸何とか、とか原因別の分類です。同じ地形でも原因で分けていきますから、随分立場が違ってきます。それが2つ目です。
3つ目は、それに関わってくる時間の分類です。河岸段丘ですと、こういうのは何丘類という形で、出来た時間そのものの反映でもあります。
それから4つ目は、もう1/2500とか1/10000くらいのスケールで考えた時に、特に大事なのは、地形は変化するということです。雨が降れば崩れてどこかに溜まるというような、あるいは河であれば、侵食されてどこかに堆積するとか、氾濫するとか、あるいは場合によっては土石流が起こるとか、いろいろなダイナミズムがあります。実は、この生物の話などでも結構それが大事なのです。安定した場所であるとか、地すべりを起こしやすいとか、そういうことは大事です。例えば、ここは地すべりなどが起こらなくて安定した場所なので、何かを作る場合に「いいでしょう」というコメントを出したら、動物の先生から「そんなところは動物にとって1番大事な場所だから、そんなところに作ったら困る」という矛盾したコメントが出てきて、困ったことがあります。その視点も必要です。どの話の時にどの分類がいいかとか、それを考えて、スコーピングくらいで、地域全体の話をやるときは、まさにここは起伏がどれくらいあるとか、大きいとか小さいとか、そういう話で、全体を見るときは済むかもしれない。しかし、生物で、ある特定の種がどこに住んでいるというような場合は、さっき申し上げた4番目で、山が崩れてどう溜まったとか、尾根筋と谷筋とか、もう少しミクロの話が関わってきます。この話のときに、中越さんがおっしゃっていたGISのデータなどでは、そんなに細かいところまで出ないのです。どの話をするときに、どの分類がいいのかというのを少し考えて、4つくらい分類が有り得るので、それを入れた方が親切だと思います。これからのケーススタディをやる時もそうなると思います。
(小野委員)確かに取り入れた方がいいのですけれども、時間のスケールを入れた場合とダイナミズム、ダイナミズムというのは時間が入っていることなのですか、どう違うのですか。
(小泉委員)ダイナミズムというのは、ある意味ではものすごく長周期ではなくて、数十年くらいの時間だと思うのです。
(小野委員)地質時代的なスケールが入っているのですね。
(小泉委員)はい。ですから段丘などは万年単位の話になってきます。
(小野委員)地質的な年数のことですね、おっしゃっているのは。
(小泉委員)はい。
(小野委員)Catastrophicに今きいてくるやつと。
(小泉委員)はい。そんな程度です。
(阿部委員)これ、中を読んでいますと、動物などはかなり情報がまだ無いものが多いです。ですから、調査するに当たって相当時間がかかると思います。また費用もかかる。それで、気になるのは、この資料3の13ページの下から2行目のところに「アセスメントにおける時間的・費用的な制約を考慮すること」とありますが、これをここに入れる必要があるのですか。これは事業者が、こういうことを考えるのは良いのですけれども、環境庁が出すものとして、こういうのを入れるのはどうか思うのですが。
(大島座長)具体的なアセスメントの場合、そういうふうにきちっとしたアセスをやると5年なり10年なりなってしまうということもありますが。
(阿部委員)もともと1年というのが謳われていて、もちろん対象地域によっては時間的なものを考慮するとか、あるいは調査範囲についても考慮する、というようなことが書かれているのですけれども、これを書きますと、これを念頭に置いた時間・費用の設定がされるのではないかと思います。この中で謳う必要があるのですか。
(渡辺調整官)表現の仕方の工夫で大分違うと思うのですけれども、意図としては、大島先生がおっしゃったような、生態系全てを捉えようとすれば、10年かけても、20年かけても、捉えられない。そういうところを求めているのではなくて、あくまでも調査対象、阿部先生がおっしゃったような、情報が無い種と情報がある種で、大分違うと思いますが、調査対象としている生物の特性だとか、それについての既存の知見に応じて、必要な時間はかける必要があるということで、10年、20年かけなさいということではありません。その辺のニュアンスであれば、阿部先生も気にならない表現が出来るのではないかと思いますので、そこは書き方を工夫させて頂きます。
(大島座長)大事なことは、現在ある知識で、どのようにその知識を使って、正確な現状をアセス出来るかということです。アセスの時には間に合わなくても、次のアセスに間に合うよう研究をしていくということが重要だと思います。
(小野委員)確かに非常に厳しいところだと思います。今、大島先生がいいことをおっしゃって下さったのですが、結局、不十分な部分があることは、初めから認めた上で、次に残っていくということを何かの形で表現しなければなりませんが、今ここで書いている「時間的・費用的な制約を考慮しなさい」と言うと、真っ先に「制約があるから止めた」というように扱われてしまいそうな感じもします。それで、阿部さんがこれを削れというのは、私も分かるのですが、表現を変えて、その事を書くべきかと思います。
(大島座長)不確実性があるところについては、その不確実性があるということを、アセス書にちゃんと書くことが、非常に大事だと思います。
(小野委員)「不確実で分からないから、金も無いし止めよう」というのが今までのやり方ですから、逆に今度は、無限地獄に落ち込むという部分もあるのです。「これは研究のための研究じゃないか」ということを言われることもよくあります。そっちの方へあんまり走りすぎて、事業者をいたずらに苦しめるのも問題がある。
(大島座長)そのためにモニタリングをするということです。
(中越委員)1事業、1アセスが終わった後に、モニタリングをやる必要が出てきたら、そういう不確実性という議論が出てきた時に、次にモニタリングをやる人たちが、前の手法を継続出来ればいいわけです。ですから、「ここまではやるけれど、後はこの方法でやりたければどうぞ」というように、データの蓄積とその継続性があること、それを保証して、今の時間的・経費的限界を設定する。現実に、今までたくさんあったアセスのデータも、継続性が無いために、資料の質的低下が起きていると思います。それをずっと同じデータベースで持っていればよいのです。データはたくさんあるわけですから。
(大島委員)その反省として新しいアセスにはモニタリングのことがちゃんと書いてあります。
(中越委員)それはすごく難しくても、おっしゃったようなことになるので、やはりどこかで継続はするけれども、この方法で継続してくれ、というような手法の確立とその蓄積が必要だと思います。だから、一般化して出来るようなレベルで考えて、そういう手法でなければいけない。
(小野委員)p13の3-4の調査・予測のところで、全体に関わる問題として、今のようなことを書くべきです。調査手法のところで書くべきではない。これは外して、全体の、例えばこれは(1)になる。(2)が予測で、(3)のところに適用の範囲とか、そういうふうに書くべきで、そこのところに今のような話を入れてほしい。
(大島座長)それでは、ご意見を頂きましたけれども、大きいところに移りたいということがあり、また後に譲る事にして、具体的なケーススタディの部分に入りたいと思います。
要は1つの地域を選んで、広域的な環境特性をどういうふうに把握し、その結果何が出てくるか。それでどういう評価が出来るかというのが1つ。その中から、注目種を選び、そのうち行動圏の違う、あるいは生息地がごく限られた、空間スケールの違う4つを取り出すと、それぞれ、そういうもので何が評価できるか、という事を例として出した。これについて、ご意見ご質問を伺いたいと思います。
(小野委員)群集というのがありますが、この場合は昆虫、植物を例に出しているのですけれども、動物群集の捉え方が何も書いていない。必要だとおもうのですが。
(有本(自然研))実は作業をやっていて、実際の予測を条件をかぶせてある程度やる、というところまでは行ったのですが、おっしゃっているような、最後の結論のところで、個々の影響を生態系全体から見て、どういう影響があるのかということについては、実はまだそこまで至っていないのです。それはこの中で、出来れば少し書き込んでいきたいと思っています。
(小野委員)もう1つは、宅地造成という事になってくるのですけれども、例えば基盤整備をやるとなると、宅地造成の場合、上下水道というのが必ず入ってきます。そういうものをやることによる環境改変というのは、著しい場合も多い。そういうことも考えないといけない。これが1つ。
それからもう1つは、例えば、シュレーゲルが居るような、フクロウが居るような、カタクリが生えているような場所というのは、谷戸としても、随分、自然度の高い谷戸だと思うのです。そこに宅地造成を行う場合は、宅地の造り方自身が、相当大きな問題となる。それは、影響評価の対象になるか、ならないかも問題ですけれども、そのことも考えて、例えば評価の結果のところに、宅地の造成の方法についても、注文が付けられるということも、場合によってはあるのではないかという感じがしている。ご承知の通り、シュレーゲルアオガエルというのは、土の土手でないと卵を産まないのです。鹿児島県とか、そういうところに昔はたくさん居たのですが、農業構造改善事業で溝が全部コンクリート化したために、卵を産む場所が無くなってしまって、現在はほとんど絶滅状態に近い。谷戸が残っていても、そういう宅地造成が出来ると、ついでに周りの農家まで農業形態が変わってしまう、という波及効果みたいなものを考えないと、これを読んで「これで宅地造成が上手く出来る。」と誰も思ってくれないのではないかと思います。
(中越委員)そうですね。川でもそうです。ついでに護岸もしますね。
(渡邉委員)このケーススタディの場合にお話しした、影響評価の進め方の総論のところでの前提条件として、事業特性、地域特性を踏まえた、評価すべき影響の内容の設定、それを常に考えながらいろいろなことをやっていくということがある。事業特性と地域特性は、それなりに踏まえているのですが、それを踏まえて評価すべき影響の内容を、どうイメージしながら調査をしていくというところが、何となくこのケーススタディでは不明です。ですから、フクロウを調べて、どういう影響を評価しようとしているのか。宅地を造成することによって、どういう影響があると困るから、こういう生態系の調査をしようとしているのかということを、もう少し明快に出しながらやったらどうでしょうか。端的に言えば、水系が変わって、いろいろ水田等々が大幅に変わらなくてはいけなくなって、生活スタイルが大きく変動するという影響が無いかどうか。そうすると、この調査は何のためにやっているのかがはっきりしてくる。それと、当然その他の水環境とか土壌環境で、いろいろなアセスメントをやっていると思うのですが、水環境がどう変動して、土壌環境がどう変動するかというのは、その他のアセスメント手法でいろいろなモデルを使いながら、当然出てくると思います。それはモデルはモデルですが、カタクリですと水がどう変動したかは、カタクリの調査からモデルの妥当性を見たり、また生態系全体のケースが出来るというところがあります。ここで水環境のモデルを出せとは言いませんけれど、ある程度その辺を考慮したケーススタディというのを出して頂かないと、分かり難いのではないか。
(幸丸委員)ケーススタディで、おそらく小野先生がおっしゃったように、都市型生物の新しいhabitatが出来ると、ものすごい二次的なものがいっぱいある。そうすると、注目種の中に、さきほど鷲谷さんがおっしゃったような、外来種とかインベーダによって、影響を受けるもの出てくる。そういう点では非常に難しい。そういう意味では、最初の方の注目する種の抽出のところに書いてあるフロー図は、もう少しきめ細かく、あるいは、いろいろな予測が成り立つような書き方にして、いろいろな事業によって、もう少しこういうことを想定するのだということが分かるようにしてほしい。それと、人が住んでいる場合、イヌやネコなども、相当大きな影響がある。
(大島座長)ケーススタディをもう少し考えて、中身がそれに合うような形にしたい。例えば、基本的なところで、注目種をたくさん選び出すとか、それが変わるとどうなのか、というところをもう少し書き込んで、例えばこういうものを使うとこう分かりますよ、という書き方にしたいと思います。
(中越委員)それだけの面積のものが造られるということになれば、当然道路も改変されたりする。だから、どこをどういうふうにアクセスして来るのか、というのもあると思う。
(大島座長)アセスにはいろいろな項目があって、それが相互に出てくる。ここは生態系だけ扱っているけれども、当然道路も別ではなくて、それが上手く組み合うような形の視点も、やはりどこかにいれておく必要がある。
(中越委員)だから、例えば大きな面開発というのが対象なのだけれども、道路が出来るということがあった場合にこんなことがある。それは協議するべきであるとか、考慮するべきであるとか、そういうようなことも書くべきだと思います。
(大島座長)それとこれとがどう関わりを持ってくるか、ということで、これは恐らく来年の問題として、非常に大事な問題になってきます。
(小野委員)いずれにしても、検討して、思い切った内容も入れながら、ねらいのところに相当手を入れて、文章を変えておかないといけない。
(大島座長)もう1つ、全体に対するご意見ありましたら、是非お願いします。
(奥田委員)ケーススタディの植生図が相当重要です。使い方も相当注意しないといけない。動植物で植生図が出来てくるわけですが、特に生態系で使うわけですので、そこで1回modify する必要があるのかどうかということをまず押さえなければいけない。それから全部の凡例を持ち込んだ場合に、その凡例が相互にどういう関係にあるかということを、はっきりどこかで明示する必要がある。16ページに「調査地の主な基盤環境と遷移系列との関係」ということで、一応説明は付いているのですけれども、群落の相互環境、少なくともここに載る群落名は、利用する植生図の凡例が表現されていないと、説明になっていませんので、それをちゃんとしておかないといけない。これはあくまでも遷移ですが、例えばここにあるスギ・ヒノキの人工林のことは一切入っていない。これは1番面積が大きいです。それはどういう位置にあるのか、それもはっきり分類する。ですから、群落環という概念を導入して頂ければ良いと思います。
(大島座長)生態系複合の問題がどうしても難しい。
(奥田委員)色の配列は基本があるので変えた方がいい。
(小野委員)こんなこと言えるかどうか分からないのですが、改変後の地図、予想作成図というのは、何か書けるものなのですか。
(渡邉調整官)今、3つの案が出されていますから、それぞれ1案、2案、3案だと、改変後は、こういう植生になります。あるいは、類型でこういうところがこうなっています。という、改変後の姿を出した方がいいということですね。
(小野委員)というのは、1つは、バッファーという問題を考えているのですが、道路というのは1本通すと周辺に100mくらい影響していくのですが、そういう問題とか、宅地を造ったことで、イヌ・ネコなどの影響とか、そのことによる動植物の変化、移入種は本当に、みるみる増えてくるという状況とか、そういうことまで考えると、影響範囲というのはバッファーみたいなものが要ると、私はいつも思っているのです。多分、造成すると相当の範囲で周りはかなり影響が出てくると思います。
(大島委員)今、大変重要な問題を出して頂きましたので、個々の委員のところにお伺いをして、その辺のいろいろなご意見とか、いいお知恵を拝借したいと思います。どうぞ宜しくお願い致します。
(阿部委員)今、フクロウとかカタクリとか、いろいろ出てきたのですけれども、改変される対象地域を中心に、ある面積をとっているけれども、そのものが、広域的な視点から見て、どういう状況にあるのか。もうそこにしか無いものと、それから周辺一帯に分布しているものと、全然、評価の時の重みが違う。図2-2のところに、広域図がせっかく出ているので、動物についても、こういう広域図があって、それから調査対象地域とその周辺というものを作っておかなければいけない。
(渡辺調整官)そういう意味合いで、例えばケーススタディとして、フクロウを出しているわけです。
(阿部委員)注目種がいろいろありますから、その中でそういう配慮をしながら、広域的なところも分かるような種にも着目していく必要がある。
(渡辺調整官)カタクリのところでも出てきたのですけど、実際に、生育地を物理的に改変するというのは、すぐに影響として押さえられる。大事だけれど、なかなか押さえにくいのが、周辺で造成とか伐採が行われた時に、集水域なり涵養域の中で、どれくらいの割合で、そういった伐採なり造成が行われると、湧水域に影響が及んで、カタクリにも影響が及んでしまうか、そういうところまで、相対的でもいいから見なければいけない。そういうところは、出来るだけ打ち出したいということで、悩みながら出しているのですが、こういうデータを取れば、相対的でも、もう少し角度が高まるような、その辺は是非バージョンアップ出来ないかと思っておりますので、皆さん方からも、ご意見頂いて参りたいと思います。宜しくお願いします。
(渡邉委員)どういう種を注目種に選ぶかというのは、評価の内容を大胆でもいいから何段階かに設定してみるのも一つの方法だと思います。結局、人間と自然との共生を考えた上でのアセスメントですから、周りの人間生活に大幅な影響があるのか、ないのかという評価と、その規模がどんな程度であるのかが、どこまで評価出来るのか。それから、例えば野戸に影響が出ると判断した場合、その野戸の影響がどの程度だと許されて、どの程度は許されないのかとか、かなり、社会的な評価という数字が出てくるような気がする。こういう人間の生活に密接した社会的な評価というものを、最初大胆でもいいから、ケーススタディで設定して、それに合わせて対象とする種も選定していくという作業が必要と思います。
(小泉委員)あと今日は出てこなかったのですが、このくらいの森林がずっと連続しているとあまり問題ないのですが、いろいろなところで聞いていると、今、森林がブツブツと切れてきて、連続性が問題になってきています。先程、阿部さんがおっしゃった通りなのですけれども、フクロウとか、あるいはオオタカにしてもそうですが、緑が切れてしまうと、ここに来なくなってしまうというのがあると思います。それも広域のところに入れた方がいい。
(阿部委員)まさにその緑の分断というのは大きな影響で、これはフクロウのところで言おうと思ったのですが、ヒナの分散の時に、親は結構離れても移動出来るのですが、ヒナの場合は飛翔能力が無いから、その分散の過程でいろいろな交通事故にあったり、ネコとかの災難に遭うというのが結構、調査の結果分かっている。そのことを補足しておきます。
(中越委員)手法としては、各パッチの改変する前のパッチの中央からの距離を出しておいて、それはGISでたぶん出来ます。改変した後に出来るパッチの中央をまた計算して、相互に隣接するものとの距離を計算すれば、どれくらい遠くなってしまうかは計算出来ると思います。あくまでもその場合の数字で、この数字が飛翔とどう関係があるかは私には分かりませんけれども。
(大島座長)経時変化で、どういうことが出来るかによって改変の度合いが違ってくると思います。それがどうなるかで、時間軸を入れて上手く出来ないか。
(清水委員)結局、今年度は調査予測の方法を出来るだけ具体的に示そう、ということですね。皆さんのご意見も当然なのですけれども、評価に関わってくるところが非常に多い。その辺の関係を、どう整理をするかが悩みだと思います。ケーススタディはあくまでケーススタディなので、このためにこういうケースを選んだというのは、限界があると思います。あまりリアルなものだから、いろいろな事を言いたくなるのですけれども、その辺を少し区別をしないと、上手くまとまっていかないのではないかと思います。ついでに言えば、利用計画案として3つ出ましたが、この3つの案を出したのは何のために出したのか、ということをもう少し説明しておいた方がよい。
(渡辺調整官)今の清水先生のご指摘を受けて、評価をどの辺まで出せるか、整理したいと思います。複数案は、やはり環境保全の検討の中で、どの谷戸を残すかを考えていく意味では、評価とか保全措置の段階ですけれども、今回いろいろな種によって、いろいろな攻め方を考えてやったことが、評価の段階で保全措置を複数持った時に、どう比較評価が出来るかも睨みながら、予測の手法というのを組み立てていきたいと考えています。そこが上手く、比較評価という評価段階の仕事が出来ないと、予測手法も適当でないこととなるので、報告書の中で、ある程度、評価段階、保全措置段階の話ではありますが、複数案の評価を少し作業の中でも取り込んで、予測手法としてこのやり方でいいのかを併せて検討しながら作業を進めていきたいと思います。
(清水委員)敢えて言うと、全部オーバーレイでやっているのです。ある意味では手法はそんなに変わらない。とにかく説明をちゃんと、読む方が分かるようにして頂いた方がいい。
(大島座長)大体予定の時間になりましたけれども、まだこの原案は不十分ですので、できるだけ内容を充実させて、いいものを作っていきたいと思います。それにつきまして、事務局の方でさらなる努力をしていくということと、先生方にご相談させて頂きながら作業を進めて参りたいと思いますので宜しくお願い致します。
(閉会)
<本件に関する問い合わせ先>
環境庁企画調整局環境影響評価課 担当:中山、藤田
TEL:03(5521)8236 FAX:03(3581)2697