オランダの国家廃棄物計画は、オランダ環境影響評価制度の対象ではないため、第1次国家廃棄物管理10カ年計画及び第2次国家廃棄物管理10カ年計画のSEA自体は、環境影響評価制度の手続きに従った自主的な環境影響評価として実施された。一方、地方廃棄物管理計画のSEA及び廃棄物処理施設のEIAは環境影響評価制度に基づいて実施された。
本分析の結果を踏まえ、計画のレベルの違いによるSEAの違い(国と地方)及び計画に対するSEAと事業に対するEIAの環境影響評価の違いについて以下に取りまとめた。
国レベルの計画と地方レベルの計画では、計画自体の意思決定のレベルが異なるため、SEAの中で設定される複数案の考え方や対象とする環境項目の分析のレベルなどが異なる。国家レベルの計画は、地方を一つの単位とした大きなレベルの「廃棄物管理地域」を対象に、最も適切な廃棄物処理容量や効率性を国レベルの視点で検討するものである。このため国家レベルの計画においては、複数のシナリオを設定することで、廃棄物管理の将来を予測している。特に、第2次国家廃棄物管理10カ年計画では、ライフサイクルアセスメントの手法を活用し、具体的な処理方式の選定に関する環境影響の評価が行われている点に特徴がある。一方、地方政府は、廃棄物管理に関連するプロジェクトの許認可権限を有し、具体的な廃棄物行政を推進する役割がある。地方レベルの計画は、目標自体は国の計画に基づくものであり、そのもとで地方における廃棄物処理施設の具体的な実施を定めるものである。このため、地方レベルのSEAでは、対象とする環境の範囲も国レベルの計画よりは、詳細に定められているようである。
国レベルの計画、地方レベルの計画におけるSEAと廃棄物処理施設のEIAとは、環境影響を評価する視点や分析のレベルが異なる。計画に対するSEAは、将来予測シナリオの設定などを踏まえた廃棄物管理全体の政策方針に関する複数案が設定されている。個別の廃棄物処理施設に関連するEIAは、施設建設に焦点を当てたEIAであるため、設定される複数案や対象環境項目のレベルも必然的に詳細なものとなる。廃棄物処理施設のEIAでは、具体的な処理技術や、廃棄物輸送方法、廃棄物処理施設の容量などに関する様々な複数案が提示され、それをもとに最も適切な案の選定が行われた。更に、対象となる環境項目に関しても、非常に細かい項目の分析が実施されている。これは、SEAとEIAの分析のレベルが大きくことなることを示している。
表3.2.24廃棄物処理に関するSEA及びEIAの事例分析のまとめ |
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SEA |
事業に対するEIA |
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国家レベルの廃棄物管理計画 |
地方レベルの廃棄物管理計画 |
廃棄物処理施設の設置 |
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第1次国家廃棄物管理10カ年計画(1992-2002) |
第2次国家廃棄物管理10カ年計画(1995-2005) |
第3次ゲルトランド廃棄物管理5カ年計画 |
オーバーアイセル州の廃棄物処理施設 |
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廃棄物管理計画 or事業の概要 |
計画の特徴・役割 |
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⋆廃棄物発生抑制とリサイクル ⋆可能な限りの熱回収を伴う適切な焼却処理の実施、及び埋立処分のための十分な容量の確保 |
トエンテ地方政府とオーバーアイセル州の地域電力会社が廃棄物処理施設の建設を提案した。これはヘンゲロ市とエンスヘデ市に隣接したブルデルスフックの廃棄物処分場の近くに廃棄物処理施設を建設するもの。提案プロジェクトは、廃熱を発電に活用し、可能であれば、廃熱は住宅用としても供給しようとするもの。提案された廃棄物処理施設は、年間230,000tの処理能力を有する。
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対象廃棄物 |
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策定時期 |
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・1994年 |
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国家計画と州計画との関連 |
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SEA |
SEAの根拠等 |
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複数案 |
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スコーピング |
次の各環境指標が設定された。
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以下の4つの廃棄物フローに対して廃棄物処理技術を選択し、各技術について環境影響をLCAにより検討。
対象とする環境影響の範囲として下記の項目が評価された。
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環境指標は、廃棄物量、リサイクル量、焼却量及び埋立量が採用された。下記の環境項目に対する影響評価を実施する必要があるとされた。
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現在の環境と環境影響に関しては、以下の事項を記述するものとされた。
等
等
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環境影響の評価 |
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複数案の評価 |
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各複数案に対して各環境項目の視点からマトリックス形式の比較検討が行われた。最終的に、複数案を組み合わせて作成された環境に最も優しい案が採用された。 |
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意思決定への反映 |
地域及び地元関係機関の十分な参加を得て実施されたため、SEAの結果や結論は広く受け入れられた。 |
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出典:MRI作成