1 )第3次ゲルトランド廃棄物管理5カ年計画
オランダでは、州政府が州廃棄物管理5カ年計画を策定することとされており、同計画の策定にあたっては、国家レベルの政策を尊重することとされている。第3次ゲルトランド廃棄物管理5カ年計画の策定に当たっては、第1次国家廃棄物管理10カ年計画が尊重された。第3次ゲルトランド廃棄物管理5ヵ年計画の廃棄物種類別の削減や処理に関する目標は、第1国家廃棄物管理10ヵ年計画を踏まえて設定された。第3次ゲルトランド廃棄物管理5カ年計画の概要について整理した。
表3.2.20第3次ゲルトランド廃棄物管理5カ年計画の概要
項目 |
内容 |
計画策定手順等 |
第3次ゲルトランド廃棄物管理5カ年計画(1993)の策定に当たっては、旧計画の事後評価の活用、環境省や他省庁及び公衆からのドラフト案への意見募集及び州政府の水管理計画や土地利用計画との調整などが行われた。 |
計画の内容 |
第3次ゲルトランド廃棄物管理5カ年計画は、ゲルトランド州全体を対象とした計画である。1990年時点での廃棄物発生量は470万tである。
廃棄物発生抑制・処理の目標は、国レベルの目標を参考に設定された。廃棄物発生抑制と処理は、処理施設の数や処理能力に依存する。このためコスト分析や環境効率に関する分析が実施されたが、施設設置場所は決定されていない。 州政府は、市町村や関連機関に対して、本廃棄物管理5カ年計画を強制するものではない。市町村等が処理施設の増設プロジェクトを行うに際して、本廃棄物管理5カ年計画に従う限り、プロジェクト実施の許可を出す。また、市町村の取組みが不十分な場合、州政府が代わりに対策を行う。その他、当該廃棄物管理計画により、廃棄物発生抑制や回収の進展を促す各種の規制や制度を導入する。 |
対象廃棄物 |
第3次ゲルトランド廃棄物処理5カ年計画の対象廃棄物は、自動車のスクラップや肥料を除くほぼ主要な廃棄物が対象とされた。
●対象廃棄物
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出典:EU’ Case Studies on Strategic Environmental Assessment Final REPORT Volume1’, 1997よりMRI作成
2 )環境影響評価の手続き的事項
第3次ゲルトランド廃棄物管理5カ年計画の環境影響評価は、環境管理法に基づいて実施された。オランダでは、州政府の許認可及び事業についても、国の環境影響評価制度の中で取り扱われる。各州が許認可を行う事業は、国の制度に基づき、州政府が所管官庁となりスコーピングガイドラインの作成、公衆の意見聴取、評価書の受理及び審査等を行う。事業の公告に対して、66の意見が提出され、オランダ環境影響評価委員会はアドバイザリーガイドラインを作成、公表した。
事業の公告(1991.1:ゲルトランド州) ↓(意見聴取期間、1991. 3.10 まで) アドバイザリーガイドラインの公表(1991. 4.10、オランダ環境影響評価委員会) ↓ 最終的な提言事項の公表(ゲルトランド州、ほとんど変更なし) ↓ SEA及び廃棄物管理計画案の検討 ・バックグラウンドデータの収集(6か月) ・複数案の検討及び影響評価(3か月) ・報告書の作成(3か月、1992.12 公表) ↓ 廃棄物管理計画案及び報告書の閲覧 ↓ 公聴会 ↓ オランダ環境影響評価委員会による検討 ↓ 廃棄物管理計画の作成及び州当局による決定(1993. 6) |
図3.2.2第3次ゲルトランド廃棄物管理5カ年計画の策定手続
出典:EU’ Case Studies on Strategic Environmental Assessment Final REPORT Volume1’, 1997よりMRI作成
SEAの目的の1つに、廃棄物管理計画の策定に関わる意志決定者に対して、環境関連の情報を提供することがある。事業の公告段階の第3次ゲルトランド廃棄物管理5カ年計画案は、国家政策を十分検討して作成されたものであり、廃棄物発生抑制、リサイクル、焼却処理及び埋立の目標値は国家政策をベースにゲルトラント州の状況に基づき設定された。SEAのもう1つの目的は、本廃棄物管理計画による政策とその他の政策の効果を比較することである。
省庁間の調整や公衆関与に関しては、事業の告知、EIS等への意見提出、公聴会での意見募集・議論、特に協議が必要なグループとの会議などの場に限られたものであった。「事業が行われなかった場合の環境の状態。」
3 )複数案
所管官庁と環境専門家等との協議の結果、以下の3つの複数案を検討することが定められた。これらの複数案は、発生抑制・リサイクル・焼却処理・埋立処分の割合、新規処理施設の立地選定手続き、新規施設の提案を評価する基準、特に協議が必要なグループの行動の具体的な解決方法によって、異なる結果をもたらすものとされた。また、ベースラインとしては、廃棄物に関する統計や経済の構造などを考慮した予測が行われ、SEAと廃棄物管理計画の中では同じベースラインデータが使用された。
4 )スコーピングと指標の設定
オランダの環境影響評価制度では、スコーピングの段階において、具体的な評価項目や調査すべき複数案について、個別案件ごとに主務官庁が事業者、環境省、農業省等のアドバイザー、公衆、オランダ環境影響評価委員会の意見を踏まえ、ガイドラインを作成することとされている。
環境指標は、廃棄物量、リサイクル量、焼却量及び埋立量が採用された。オランダ環境影響評価委員会からのアドバイザリーガイドラインでは、処分から発生抑制やリサイクルへのシフト、また埋立てから焼却への処理方法のシフトに関する環境影響評価が提言された。これらを踏まえ、ガイドラインでは、下記の環境項目に対する環境影響評価が実施された。
5 )評価及び複数案の比較
上記3つの複数案について、廃棄物発生量、リサイクル、処理、埋立の環境影響が評価された。アセスメントは、専門家の判断に基づく評価及び特に協議が必要なグループとの協議の結果を踏まえて行われた。評価にあたり、各複数案の環境影響の比較に関する正確性には不確実性が残る。最終的に、最も環境に優しい政策を行う案が採用された。 6 )SEAの全体評価
当該事例のSEAの特徴は以下の6点に整理できる。
・環境指標は地域レベルで選定された。これは環境政策の体系が確立していたため。
・当該SEAは廃棄物監視システムの設置に向けた重要な推進力となった。
・SEAに要した時間や労力は、計画策定に要した時間や労力よりは小さい。将来、廃棄物監視システムを設置し、バックグラウンドデータが蓄積されれば、SEAにかかる時間や労力は更に小さくなる。
・影響予測は、利害関係を有する様々なグループとの検討の場において、独立した専門家により構成される調査団が判断したものであり、妥当である。
・全国、州などの複数のレベルで廃棄物管理計画を策定するオランダのシステムは、各レベルで環境影響評価や環境に関する許認可に結びついており、廃棄物による環境影響と廃棄物とを管理する点において、上手く機能している。
・計画策定とSEAを共同のチームで行う方法は適切である。また、現実的な政策を検討するために、利害関係を有する様々なグループと検討の場を設けることは更に有益である。