海外における戦略的環境アセスメントの技術手法と事例(平成13年9月)

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(3)第1次国家廃棄物管理10カ年計画(1992-2002)のSEA

1).第1次国家廃棄物管理10カ年計画(1992-2000)の背景と内容

第1次廃棄物管理10カ年計画は、1992年に策定された。同計画は、全国規模での廃棄物処理政策の基本となるものとして策定され、政策のシナリオとして2種類のシナリオを設定している。計画策定の背景、内容及びシナリオ設定の考え方、対象廃棄物について以下の表に整理した。

表3.2.1第1次国家廃棄物管理10カ年計画の背景と内容

項目

内容

背景

オランダでは、将来的な廃棄物処理容量の不足が大きな問題となっている。このため、廃棄物の発生を抑制し、再利用を促進する動きが必要とされているが具体的な成果が挙がるまでに時間がかかる。従来では、多くの燃焼処理プラントが活用されてきたが、有害物質を放出することが判明したものは閉鎖され、残りの廃棄物焼却処理プラントは、オーバー・キャパシティ気味である。新規の処理プラントの設置には当分時間がかかるものと考えられる。このような状況の中、環境上望ましくはないとはいえ、一般廃棄物や産業廃棄物の大量投棄が続くものと見込まれている。これらの状況を踏まえ、全国的規模での廃棄物処理政策の必要性から、第1次国家廃棄物管理10カ年計画が作成された。

計画の役割

第1次国家廃棄物管理10カ年計画は、3年ごとに改訂されるものであり、廃棄物政策に関連する全ての行政機関の大綱を示すものであるとされている。

計画の内容

  • 実現すべき廃棄物処理容量の規模、処理容量と廃棄物発生量との関係、廃棄物埋立処理場選定の際の基礎的条件、その他の補完的措置、廃棄物を将来的に除去するために必要となる施設等に関する記述がなされている。ただし、廃棄物の発生量の削減やリユースは、本計画では取り扱うことにはなっていない。
  • 同計画の策定に当たり、2つのシナリオが設定された。廃棄物発生量の管理に関する既存の政策が推進された場合(抑制政策順調シナリオ)と廃棄物発生量の管理・抑制が失敗し、大量の廃棄物を最終処分する場合(抑制政策失敗シナリオ)である。

シナリオの設定(廃棄物発生量抑制の成否)

  • 具体的な廃棄物発生量抑制に関する既存政策の中身は下記に示すとおりである。

第1次国家廃棄物管理10カ年計画における廃棄物発生管理の政策シナリオ

  • 抑制政策順調シナリオ
      • 廃棄物の発生抑制と再利用に関する覚書に設定された最新の目標等の実現
      • 国家環境政策計画に設定された最新の目標等の実現
      • 廃棄物の発生と処理に責任を負うべき製造者/消費者の目標の実現
      • 特定の廃棄物フローについて、新政策の作成、規制の強化。より広範な政策目標の実現
      • 産業分野での原材料の使用量の削減、製品寿命の延長を推進するための製品開発
      • クリーンな有機廃棄物及びその他の廃棄物の回収、再利用及び投機の促進
      • 欧州全体の廃棄物政策は、ドイツ、オランダ、デンマークの廃棄物政策と概ねの一致
  • 抑制政策失敗シナリオ

上記の目的を達成するのに失敗した場合を想定するものであり、大量の廃棄物を最終処理する必要が生じる場合。

上記2種類のシナリオに基づく2000年時点での廃棄物発生量の予測値を下表に示した。

表中の数値は、各種の措置を実施した後に残存している廃棄物量を示す。

表 廃棄物の発生量、最終処理の1990年及び2000年のシナリオ

現状

抑制政策順調シナリオ

抑制政策失敗シナリオ

1990 年

2000 年

2000 年

家庭廃棄物

4,680

2,203

3,532

家庭からの粗大ごみ

540

438

470

オフィス、商店、工場からの廃棄物

1,480

781

1,092

工業(コンテナー入り)廃棄物

2,810

2,267

2,777

クリーニング・サービスからの廃棄物

1,120

776

885

病院からの普通廃棄物

120

72

96

建築現場や機械解体などによる廃棄物

3,500

1,996

4,006

シュレッダー廃棄物

120

136

153

残存廃棄物の総量

14,370

8,669

13,011

分離されたクリーンな有機廃棄物

280

2,634

2,151

最終処理合計

14,650

11,303

15,162

対象廃棄物

  • 家庭から出る廃棄物
  • 家庭から出る粗大ごみ
  • 建築現場や機械解体などで発生する廃棄物
  • 工業(コンテナー入り)廃棄物
  • オフィス、商店、工場などで発生する廃棄物
  • クリーニング・サービスから出る廃棄物
  • シュレッダー廃棄物
  • 病院から出る普通廃棄物

出典:Afval Overleg Orgaan,’MILIEU-EFFECTRAPPORT ONTWERP TIENJARENPROGRAMMA AFVAL 1992-2002’ Deventerb, januari 1992よりMRI作成

2)環境影響評価の手続き的事項

国家廃棄物管理計画に対する環境面からの評価は、制度的に義務付けられているものではないが、第1次国家廃棄物管理10カ年計画(1992~2002)、第2次国家廃棄物管理10カ年計画(1995~2005)の策定に際し、廃棄物協議機構(WMC)は、環境管理法の要件を全て満たしつつ、環境への影響に関する報告書を自主的に作成した。このため廃棄物処理管理のSEAでは、環境関連部局と一般市民との間の十分な協議、並びに独立したオランダ環境影響評価委員会による審査が行われた。

1990.7 :廃棄物協議機構(WMC)の設立

1991.4 :「環境への影響に関する報告」が作成され廃棄物協議機構に提出

1991.8 :「環境への影響に関する報告」のためのガイドライン作成

1991.末:第1次国家廃棄物管理10カ年計画案作成

1992.2 :第1次国家廃棄物管理10カ年計画策定

図3.2.1第1次国家廃棄物管理10カ年計画の策定手続

出典:Afval Overleg Orgaan,’MILIEU-EFFECTRAPPORT ONTWERP TIENJARENPROGRAMMA AFVAL 1992-2002’ Deventerb, januari 1992よりMRI作成

3 )オランダ環境影響評価委員会によるアドバイザリーガイドライン

 オランダ環境影響評価委員会では、事業者の公告に対して専門的な見地からの提言を取りまとめたアドバイザリーガイドラインを提出している。同アドバイザリーガイドラインでは、事業の背景、提案されたプロジェクトの概要、検討すべき複数案の考え方及び考慮すべき環境影響に関して、提言が行われている。

表3.2.2アドバイザリーガイドラインの提言の概要

(第1次国家廃棄物管理10カ年計画1992-2002)

項目

内容

事業の背景

 

  • 廃棄物管理に関して、政策面、管理面、組織面の各側面から課題を記述する。課題の分析に当たっては、廃棄物の種類や処理技術の種類ごとに整理されることが望ましい。

<現在の問題点>

    • 廃棄物フローに応じた処理プロセス設備の活用可能性
    • 廃棄物の長距離輸送
    • 廃棄物処理場の処理プロセス技術の組み合わせ

複数案

  • 複数案の検討に当たっては、環境に優しい案と参照ケースを検討する必要がある。全ての意思決定を環境影響評価書(EIS)において考慮するのは困難なため、重要性に応じていくつか複数案のみを考慮するものとする。

環境影響

  • 第1次国家廃棄物管理10カ年計画の戦略的な特性から適切と考えられる事項についてEISの中で記述する必要がある。環境影響の詳細については、EISで記述する必要はない。オランダ環境影響評価委員会は、廃棄物フローの大きさに影響を及ぼす決定事項がもたらす物理的環境への影響は、予測する必要が無いものと考えているためである。

複数案の比較

  • 複数案の比較に当たっては、各複数案の違いを明確にするとともに、定量的な影響の把握が困難な案については、定性的な評価も交えた比較検討を行うものとする。

出典:EIA Commission, ’A guidelines for the environmental impact statement on Ten Years Programme Waste of the Waste Management Council 1992-2002’

4 )複数案

第1次国家廃棄物管理10カ年計画で想定された2つのシナリオ(抑制政策順調シナリオ及び抑制政策失敗シナリオ)の下で、廃棄物最終処理に関する複数案の検討が行われた。1990年時点の廃棄物の最終処理は、投棄(約75%)、焼却(約20%)となっている。複数案の設定に当たり、複数の最終処理に関するオプションを設定した。複数案が3種類設定されたが、それに加えて、事前分別をやめ、廃棄物は全て焼却することとした参考案が設定された。これらの複数案の具体的な内容を次表に示した。

 

表3.2.3既存の政策に基づく最終処理シナリオ、単位1000トン(2000年)

抑制政策順調シナリオ

抑制政策失敗シナリオ

焼却処理

全ての廃棄物を一緒に焼却

3,972

6,134

高カロリーの廃棄物(RDF)

782

782

自然への投棄

分別前廃棄物の投棄

0

0

不燃性の廃棄物

3,698

5,858

高カロリーの廃棄物(RDF)

0

堆肥化処理

クリーンな有機性廃棄物

1,170

873

汚染された有機性廃棄物

901

933

酵素分解(バイオ処理)

クリーンな有機性廃棄物

780

582

汚染された有機性廃棄物

0

0

合計残存廃棄物

8,669

13,011

分別収集

クリーンな有機性廃棄物

1,950

1,455

汚染された有機性廃棄物

684

696

合計最終処理

11,303

   15,162

出典:Afval Overleg Orgaan,’MILIEU-EFFECTRAPPORT ONTWERP TIENJARENPROGRAMMA AFVAL 1992-2002’ Deventerb, januari 1992よりMRI作成

表3.2.4複数案の種類と概要

種類

概要

既存政策
  • 既存政策が継続される場合。
参考案
  • 全ての廃棄物は一緒に焼却処理をする場合。
複数案Ⅰ(焼却処理を最小限に抑制し、投棄するケース)
  • 焼却容量の規模を現在のままに保ち、その他の廃棄物は投棄する。
  • 事前分別の容量は拡張しない。
複数案Ⅱ(投棄を最小限、事前分別を最大限とするケース)
  • 可燃性廃棄物の投棄は禁止し、RDF化して焼却する。
  • 事前分別を最大限実施し、有機性の残存物は酵素分解し、可燃性の残存物は焼却し、不燃性の残存物は投棄する。
複数案Ⅲ(焼却処理を最小限に、事前分別は最大限とするケース)
  • 焼却容量の規模を現在のままに保ち、その他の廃棄物は投棄する。
  • 事前分別を最大限実施し、有機性の残存物は酵素分解し、その他は投棄。

出典:Afval Overleg Orgaan,’MILIEU-EFFECTRAPPORT ONTWERP TIENJARENPROGRAMMA AFVAL 1992-2002’ Deventerb, januari 1992よりMRI作成

 これらの各複数案に基づき、2000年に最終処理される廃棄物の数量について、抑制政策順調シナリオ及び抑制政策失敗シナリオの2種類について、下記のように推計された。

 

表3.2.52000年に最終処理される廃棄物の数量、単位1000トン
(抑制政策順調シナリオ)

既存政策

参考案

複数案Ⅰ

複数案Ⅱ

複数案Ⅲ

焼却処理
全ての廃棄物を一緒に焼却

3,972

5,117

2,625

0

0

高カロリーの廃棄物(RDF)

782

0

75

3,568

1,825

残存廃棄物処理

361

274

0

652

0

自然への投棄

分別前廃棄物の投棄

0

0

2,376

0

0

不燃性の廃棄物

3,698

3,552

3,574

4,157

4,157

高カロリーの廃棄物(RDF)

0

0

0

0

1,743

残存廃棄物処理

398

409

548

359

896

堆肥化処理

クリーンな有機性廃棄物

1,170

1,170

1,170

1,170

1,170

汚染された有機性廃棄物

901

684

703

0

0

酵素分解(バイオ処理)

クリーンな有機性廃棄物

780

780

780

780

780

汚染された有機性廃棄物

0

0

0

1,628

1,628

合計残存廃棄物

8,669

8,669

8,669

8,669

8,669

分別収集

クリーンな有機性廃棄物

1,950

1,950

1,950

1,950

1,950

汚染された有機性廃棄物

684

684

684

684

684

合計最終処理

11,303

11,303

11,303

11,303

11,303

注:既存政策:廃棄物発生抑制が抑制政策順調シナリオに従った場合に既存の政策が継続した場合。

出典:Afval Overleg Orgaan,’MILIEU-EFFECTRAPPORT ONTWERP TIENJARENPROGRAMMA AFVAL 1992-2002’ Deventerb, januari 1992よりMRI作成

表3.2.62000年に最終処理される廃棄物の数量、単位1000トン(抑制政策失敗シナリオ)

既存政策

参考案

複数案Ⅰ

複数案Ⅱ

複数案Ⅲ

焼却処理

全ての廃棄物を一緒に焼却

6,134

7,279

2,625

0

0

高カロリーの廃棄物(RDF)

782

0

75

5,050

1,825

残存廃棄物処理

373

278

0

870

0

自然への投棄

分別前廃棄物の投棄

0

0

4,538

0

0

不燃性の廃棄物

5,858

5,732

5,743

6,481

6,481

高カロリーの廃棄物(RDF)

0

0

0

0

3,225

残存廃棄物処理

484

494

533

433

1,118

堆肥化処理

クリーンな有機性廃棄物

873

873

873

873

873

汚染された有機性廃棄物

933

696

726

0

0

酵素分解(バイオ処理)

クリーンな有機性廃棄物

582

582

582

582

582

汚染された有機性廃棄物

0

0

0

2,176

2,176

合計残存廃棄物

13,011

13,011

13,011

13,011

13,011

分別収集

クリーンな有機性廃棄物

1,455

1,455

1,455

1,455

1,455

汚染された有機性廃棄物

696

696

696

696

696

合計最終処理

15,162

15,162

15,162

15,162

15,162

注:既存政策:廃棄物発生抑制が抑制政策失敗シナリオに従った場合に既存の政策が継続した場合。

出典:Afval Overleg Orgaan,’MILIEU-EFFECTRAPPORT ONTWERP TIENJARENPROGRAMMA AFVAL 1992-2002’ Deventerb, januari 1992よりMRI作成

5 )スコーピングと指標の設定

 環境影響を把握するための指標は以下の12項目が設定された。環境への影響(蓄積や潜在的な影響)ではなく、環境への物質の放出やエネルギーなどに着目した環境影響の把握が行われた。環境負荷全体に対する廃棄物処理の寄与度を全国的な規模で把握することを目的とした。局地的な側面の把握よりは、全国規模の状況の把握に重きが置かれた。環境への影響を把握するために、下記の12の環境指標が設定された。これらの指標は、物質の拡散による影響、酸性雨による影響、生活環境への影響、気候変動、エネルギー、廃棄物除去、空間の占拠などの分野にまたがる。

表3.2.7環境負荷の評価対象12項目

テーマ環境介入

単位

拡散 重金属(Hg+Cd)

一般勧告、mg/ton

PAK(多重芳香属炭素)

PAK-total mg/ton

ダイオキシン

TEQ ug/ton

有機物質

CZV g/ton

酸性雨SO2 + NOx

酸当量/ton

生活影響悪臭

臭いの単位/ton

気候変動CO2 + CH4

CO2 等価/ton

エネルギー

ジュール/ton

除去 投棄残存物質

kg/ton

投棄化学廃棄物

kg/ton

再利用可能残存物質

kg/ton

空間の占拠

cm2/ton

出典:Afval Overleg Orgaan,’MILIEU-EFFECTRAPPORT ONTWERP TIENJARENPROGRAMMA AFVAL 1992-2002’ Deventerb, januari 1992よりMRI作成

6 )環境負荷の推計

具体的な評価の方法としては、有害物質排出量や環境への影響の原単位を廃棄物焼却と投棄の場合を比較し、各複数案の総合的な環境負荷を算出するものである。

 一般的には、最終処分よりも焼却処理の方が有害物質(重金属、PAK 、ダイオキシンなど)や酸性ガスを環境に放出すると考えられている。また、焼却処理は浮遊ガス、煙塵などの廃棄物を多量に発生させる。一方、焼却処理の利点は、廃棄物の減量化やエネルギー回収が可能となること、回収したエネルギーを活用することでその他のエネルギー源から発生するCO2の削減が可能となることなどが挙げられる。未分別廃棄物を処理(焼却または投棄)する場合は、分別後の残存物(有機物を除去した残存物)を焼却または投棄する場合よりも環境負荷が大きい。有機廃棄物の処理については、堆肥化処理は悪臭などの生活影響を及ぼす可能性があるが、酵素分解はエネルギーの回収、CO2削減が可能となる点で、堆肥化処理よりもメリットがある。堆肥化と酵素分解は、最終的に投棄または焼却処理を必要とする残存物質を発生させるが、クリーンな有機廃棄物を処理すると、再利用可能な堆肥が多量に得られる。

表3.2.8廃棄物処理別の環境汚染負荷係数 1990年

 

焼却

埋立

コンポスト(堆肥)化

発酵

単位

全ての廃棄物を一緒に焼却 高カロリーの廃棄物 分別前廃棄物の投棄 高カロリーの廃棄物 不燃性の廃棄物 クリーンな有機性廃棄物 汚染された有機性廃棄物 クリーンな有機性廃棄物 汚染された有機性廃棄物
拡散
  重金属(Hg+Cd)

1,825

1,825

3

3

3

400

3

400

3

mg/ton
  PAK(多重芳香属炭素)

20

20

0.3

0.3

0.3

0

0

0

0

mg/ton
  ダイオキシン

50

50

0

0

0

0

0

0

0

ug/ton
  有機物質

67

67

78

20

0

0

78

0

110

g/ton
酸性雨
  SO2 + NOx

70

70

2

0

0

1

5

7

7

H+/ton当量
生活影響
  悪臭

0.004

0.004

0.02

0.01

0

5

100

1.3

1.3

Smell unit/ton
気候変動
  CO2 + CH4

-100

15

619

180

0

22

22

-70

-70

kg(CO2eq.)/ton
エネルギー
  純エネルギー生産

1.8

2.4

0.12

0

0

-0.12

-0.12

0.40

0.40

GJ/ton
除去
  投棄残存物

50

36

0

0

0

50

450

50

450

kg/ton
  化学廃棄物

35

26

2

0.2

0.2

0

0

0

0

kg/ton
  再利用可能残存物

200

144

0

0

0

400

0

400

0

kg/ton
空間的側面
  空間の占拠

35

25

700

700

700

40

430

40

430

cm2/ton

出典:Afval Overleg Orgaan,’MILIEU-EFFECTRAPPORT ONTWERP TIENJARENPROGRAMMA AFVAL 1992-2002’ Deventerb, januari 1992よりMRI作成

これらの環境汚染負荷係数を各複数案の廃棄物処理量の値に適用し、廃棄物処理に伴う環境負荷の予測を行っている。当該予測では、全国規模での環境負荷のみを予測しており、局地的な環境負荷の状況の把握は行っていない。この結果を次表以降に整理した。

 

 

 

 

 

表3.2.9環境負荷の予測計算値の一覧(抑制政策順調シナリオ)

有害物質/悪影響

単位

1990年

の現状

既存政策

参考案

複数案Ⅰ

複数案Ⅱ

複数案Ⅲ

拡散 -重金属(Hg+Cd)

  -PAK(多重芳香属炭素)

  -ダイオキシン

  -有機物質 

  kg

  kg

  g

 ton

5,457 5,445 5,696 3,257 4,632  2,463
 62 3.7 3.8  3.1 3.4   2.7
147 4.1 4.3  2.2   3.3 1.5
 792 202 211  359   228  303
酸性雨 -SO2 + NOx Meq.H 222 107 111   68   99   53
生活影響 -悪臭 1012ge 17 55  43   45   9    9
気候変動 ?CO2 + CH4  kton 4,349 -1,496 -1,525 -175 -1,526 -494
エネルギー Pj 6.2 20.9 21.5 11.4 20.1 -9.6
除去 - 投棄残存物

- 投棄化学廃棄物

- 再利用可能残存物

 kton

 kton

 kton

220

118

637

398

164

1,802

402

164

1,891

 548

  76

1,316

  359

  165

1,502

  896

  49

1,043

空間の占拠 ha 79 29 28  46   32   50

出典:Afval Overleg Orgaan,’MILIEU-EFFECTRAPPORT ONTWERP TIENJARENPROGRAMMA AFVAL 1992-2002’ Deventerb, januari 1992よりMRI作成

表3.2.10環境負荷の予測計算値の一覧(抑制政策失敗シナリオ)

有害物質/悪影響

単位

1990年

の現状

既存政策

参考案

複数案Ⅰ

複数案Ⅱ

複数案Ⅲ

拡散 -重金属(Hg+Cd)

  -PAK(多重芳香属炭素)

  -ダイオキシン

  -有機物質 

  kg

  kg

  g

 ton

5,457

7,233

7,476

3,072

5,989

2,278

62

5.4

5.5

4.4

4.9

3.8

147

5.8

6.0

2.2

4.7

1.5

792

269

278

523

299

386

酸性雨 -SO2 + NOx Meq.H

222

147

151

74

134

55

生活影響 -悪臭 1012ge

17

55

42

45

8

8

気候変動 -CO2 + CH4  kton

4,447

-2,086

-2,112

363

-2,168

-317

エネルギー Pj

5.6

29.5

30.1

11.8

28.1

9.8

除去 - 投棄残存物

- 投棄化学廃棄物

  - 再利用可能残存物

 kton

 kton

 kton

220

118

637

484

222

2,041

494

221

2,137

594

80

1,118

433

228

1,588

1,118

49

845

空間の占拠 ha

79

45

44

77

49

78

出典:Afval Overleg Orgaan,’MILIEU-EFFECTRAPPORT ONTWERP TIENJARENPROGRAMMA AFVAL 1992-2002’ Deventerb, januari 1992よりMRI作成

7 )評価及び複数案の比較

 前述6)の結果を踏まえ、各項目ごと及び各複数案の比較が行われた。比較に当たっては、前述6)の結果の比較により分析が行われ、重み付けによる比較などは行われていない。分析の実施前は、複数案Ⅲが最も環境にやさしい案と考えられていたが、比較分析の結果、複数案Ⅱが最も環境にやさしい案との結果が得られた。計画段階の環境の視点からは、複数案Ⅱは実現可能性、環境影響の合理性、既存の環境目的との両立などの間の妥協案として適切であったとSEAでは結論づけた。既存の処理施設の処理能力が十分ではないこと、技術的な経験も十分ではないことから、短期的には、第1次国家廃棄物管理10カ年計画案で提案された抑制政策順調シナリオに基づき実施し、長期的には複数案Ⅱが実施できるような状況を作っていくことが適当であるとSEAの中で結論づけられた。複数案Ⅱ及びⅢの評価の詳細を以下に示した。

 複数案Ⅲは、最小焼却/最大事前分別/酵素分解の組み合わせである。この案は投棄すべき廃棄物の量が増大し、空間の占拠の規模も拡大し、また、エネルギー回収量が減少するのでCO2削減効果は限定されるが、汚染物質の拡散は減少する。

複数案Ⅱでは、複数案Ⅲと比較すると汚染物質の拡散は助長されるが、エネルギー回収が促進され、空間の占拠の規模はかなり縮小する。複数案Ⅱで採用している分別と酵素分解能力を拡充することは環境負荷の低減に役立つものであり、複数案Ⅱは、政策シナリオと比べて環境保護には有利と考えられた。

 8 )意思決定への反映

 本SEAは、ボランタリーベースで実施されたものであるが、地域及び地元関係機関の十分な参加を得て実施されたため、SEAの結果や計画の結論は広く受け入れられ、全体としての評価は高かった。また、SEAは計画者にとって有益なものであることから、計画策定者は、第2次国家廃棄物管理10ヵ年計画策定時にもボランタリーのSEAを実施することを決めた。

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