SEAを規定している閣議命令”The 1999 Cabinet Directive on the Environment Assessment of policy, Plan and Program Proposals”用の参考図書は、現在のところ用意されていない。
わが国におけるSEAの導入に際して参考になりそうな資料として、EIA用ではあるが、カナダ環境影響評価庁(Canadian Environmental Assessment Agency)による累積的影響に関する資料(Cumulative Effects Assessment Practitioners Guide(1999))を取り上げ、以下に整理した。
“Cumulative Effects Assessment Practitioners Guide”(1999):「累積的影響の評価に関する実務家向けガイド」は、カナダ環境影響評価法に基づくEIAにおいて累積的影響を評価する際の実務家向けガイド(手引書)である。カナダ環境影響評価法第16条(1)(a)で、累積的影響の考慮について規定されていることを踏まえ、作成された。
このガイドでは、累積的影響の定義や概念について整理した後、スコーピングから分析、緩和措置の検討、評価、フォローアップまで順を追って、それぞれの段階で累積的影響についてどのように検討していくかが示されている。分析のところで、以下の4つの技術手法について、ケーススタディも含めてそれぞれ1~2ページ程度で簡単にまとめられている。
[1]インパクトモデル [2]GISを用いた空間分析 [3] 指標[4] 数値モデル以下にインパクトモデル及び数値分析を例にとり、この参考図書で紹介されている内容を簡単に示した。
1 ) インパクトモデルに関する記載内容インパクトモデルは、ある行為とそれをとりまく環境の間に生じる因果関係を簡潔に記述できるため、EIAにおいて広く利用され、また費用効果分析(CEA)の一手法として用いられている。インパクトモデル手法は、自然科学の仮説においてなされるように、その記述の妥当性を検証するものである。インパクトモデルを使うことの利点は、複雑なシステムを単純化することができる点にあり、因果関係の中にある個々の相互影響を一つずつ分析することができる。また、広範囲に渡る因果関係を記述することができる。
2 ) 数値分析に関する記載内容
数値モデルは、環境の状態についてシミュレーションするために用いられる演算手法である。将来の物理的、化学的状況を予測するため、コンピューターを用いてこれらのモデルを適用し、大気質や水質、水の流れ、大気汚染物質の土壌および農作物への沈着などについて評価することが一般的である。ただし、陸生生物、水生生物についてこれらのモデルを適用するのは難しい。