(計画の内容)
廃棄物処理の世界では、制度構成は一般廃棄物、産業廃棄物ごとになされており、処理責任の所在など制度の根幹的な考え方が異なっている。
一般廃棄物については、処理責任の所在が市町村にあり、これまでは市町村が「一般廃棄物処理計画」を策定し、一般廃棄物の発生量、処理量の見込み、処理施設の整備等について記載することとなっており、市町村自らが整備する処理施設の種類、能力、スケジュール等について定めている。(表4-1、4-2参照)
これに対し、産業廃棄物については、処理責任の所在は事業者にあるが、「産業廃棄物処理計画」の計画策定者は都道府県となっており、産業廃棄物の発生量、処理量の見込み、処理施設の設置等について記載することとなっている。しかし、処理施設の整備に関する事項としては都道府県が広域的処理の観点から公的関与として整備するものに限られており、事業者の設置する施設の立地等について拘束力を有するものとはなっていない。(表4-3、4-4参照)
(公衆関与)
法定手続としては、一般廃棄物処理計画の策定については、関係行政機関や審議会、公衆関与の手続がない。また、産業廃棄物処理計画の策定については都道府県環境審議会の意見を聴かなければならないとされている。
(留意点)
一般廃棄物処理計画について、実態上、自治体の環境部局がどのように関与し、環境配慮の観点がどのように組み込まれているかについては詳細な調査が必要であるが、本計画は、処理の方針(中間処理を増やし最終処分を減らす、リサイクルを増やす等)、整備する施設の種類、配置、規模、スケジュール等について色々な戦略オプションの検討を行うことができるステージであり、SEAの対象として有望。このことは産業廃棄物処理計画のうち都道府県が公的関与として行う部分についても同じことが当てはまる。
ただし、小さな市町村ではダイオキシン対策としての連続焼却処理が困難であったり、近年、処理困難物が増加していること等により、廃棄物処理の流れは広域処理の傾向にある。このため、市町村を単位とする一般廃棄物処理計画が、今後とも、実際の廃棄物処理事情を反映したものとなるのかという問題がある。
産業廃棄物処理計画については、都道府県の公的関与としての施設整備を除けば、処理施設の設置主体は民間企業であり、立地選定等にかかる意思決定は基本的に事業者の内部検討にとどまっていることから、本計画は事業者の施設整備に対しては上位計画としての位置づけを持っていない。
産業廃棄物処理施設に関しては、通常、事業者が内部検討として行っている用地取得にかかる複数の候補地について、環境影響評価法のスコーピング手続等を活用することによりSEA的な取組が可能。
なお、廃棄物処理については、先の国会での循環型社会形成推進基本法の制定及び廃棄物処理法等関連法律の改正が行われた。そして、今後は単なる廃棄物処理という文脈だけではない循環型社会形成という枠組みでの制度改善等が想定されており、こうしたなかで改めてSEAとの関係を整理していく必要があろう。
一般廃棄物処理計画(現行廃掃法第6条) 第6条 市町村は、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関する計画(以下「一般廃棄物処理計画」という)を定めなければならない。 2 一般廃棄物処理計画には、厚生省令で定めるところにより、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関し、次に揚げる事項を定めるものとする。 一 一般廃棄物の発生量及び処理量の見込み 二 一般廃棄物の排出の抑制のための方策に関する事項 三 分別して収集するものとした一般廃棄物の種類及び分別の区分 四 一般廃棄物の適正な処理及びこれを実施する者に関する基本的事項 五 一般廃棄物の処理施設の整備に関する事項 六 その他一般廃棄物の処理に関し必要な事項 (以下、省略) |
第1部 一般廃棄物処理基本計画策定の背景 第2部 基本方針(省略) 第3部 重点施策 第1章 循環型社会経済システムを実現するための施策(省略) 第2章 循環型ごみ処理システムを構築するための施設整備等 (清掃工場の建設・建替えについての施策の内容を例として以下に示す) 〔概要〕 平成24(2012)年度以降も引き続き、自区内処理の原則を基本に、清掃工場の整備に取り組み、次のような一定の前提条件のもとで仮に試算すると、平成30(2012)年度を目途に概ね自区内処理が達成される見込みです。 [1]ごみ発生量が平成24(2012)年度以降も、平成18(2006)年度以降と同率で増加したものと仮定した場合。 [2]焼却型の施設を整備すること。 [3]現状の技術水準であること。 〔スケジュール〕 第3章 施策の推進体制(省略) 第4部 生活排水処理基本計画(省略) |
*東京都の場合、政令市としての都と都道府県としての都の両面があるが、ここに示すのは政令市としての都の計画である。
出典:「東京スリムライン21-東京都一般廃棄物処理基本計画」(平成9年12月)
産業廃棄物処理計画(現行廃掃法第11条) 第7条 都道府県知事は、当該都道府県の区域内の産業廃棄物の処理に関する計画(以下「産業廃棄物処理計画」という)を定めなければならない。 2 産業廃棄物処理計画には、厚生省令で定めるところにより、当該都道府県の区域内の産業廃棄物の処理に関し、次に揚げる事項を定めるものとする。 一 産業廃棄物の発生量及び処理量の見込み 二 産業廃棄物の減量その他その適正な処理に関する基本事項 三 産業廃棄物の処理施設の設置に関する事項 四 その他産業廃棄物の処理に関し必要な事項 (以下、省略) |
第1章 産業廃棄物処理計画策定の趣旨(省略) 第2章 産業廃棄物の現状と課題(←処分量の将来見込み)(省略) 第3章 産業廃棄物の適性処理等に関する施策(←施設許認可の方針といった記載なし) 1.産業廃棄物処理計画の体系(省略) 2.これからの産業廃棄物行政の基本的考え方と目標 (基本目標) 廃棄物の原料と適正処理を徹底することにより、安全で快適な生活環境を確保し、持続して発展できる資源循環型社会の構築に寄与する。 3.目標実現に向けた7つの施策 (1)~(2) 省略 (3)施設整備の推進(全文) 新たに整備する新海面処分場において、中小企業から排出される産業廃棄物の受け入れを引き続き行う。同処分場への受け入れと不適正処理防止のため、公共関与による中間処理施設を整備する。さらに、廃棄物処理センター設置の検討を含め公共関与のあり方を考慮しながら、産業廃棄物の処理等を行う特定施設の整備を行う。
(4)~(7) 省略 4.3つの重点取り組み事項(省略) 第4章 計画の円滑な推進のために(省略) |
出典:「第5次東京都産業廃棄物処理計画」(平成8年2月)