(我が国の計画実態の概観)
我が国の計画実態を概観してみると、道路系や河川系の計画などのセクター計画のほか、土地利用系計画、総合開発系計画のようなセクター横断的な計画がある。また、セクター計画でも、道路系計画のように法律に基づく体系が段階的に整っているものもあれば、飛行場のように法体系として事業に先立つ計画が存在しないものもある。また、セクター系の計画と横断的な計画との関係は、現実には相互に密接、複雑に絡み合っており、それぞれが独立した存在ではない。
また、事業アセスメントで捉えていた事業計画段階に比べ、上位計画は種類、手続、熟度等様々な面で、その態様はかなり多様である。
(環境の観点)
環境の観点の法的な位置づけについては、計画等の記載事項に配慮事項として環境を盛り込んでいるもの、当該計画が環境に配慮したものとする旨を法律で規定したもの、他の計画との一般的調整規定の中で「環境の観点」との調整を図っているもの等、環境への影響が予想されるような計画のほとんどが環境の保全に関し何らかの法的位置づけを与えている。これは、環境基本法第19条の規定と併せ、これら計画の策定過程における環境面での検討作業の必要性・存在を明らかにしたものと考えられ、SEA的な検討は内部作業としては当然に行われていることを示したものであるとも言える。ただし、環境の保全の観点を、当該計画の目的の一つとして正面から見据えているものは少ない。
しかし、平成9年に行われた河川法の改正により、新河川法の目的として河川環境の保全が加えられるなど、近年、環境保全に積極的に取り組む動きが出てきている。
(関係者の関与)
計画策定にかかる法定上の関係者の関与については、関係行政機関や関係自治体等への協議や、審議会への付議を位置づけたものはかなり多く見られるが、公衆関与の位置づけがあるものは非常に少なく、位置づけがある場合であっても、地域住民や利害関係人に限定されている。
法定上、何らかの公衆関与を位置づけている例は、即地性が強く事業段階に近いものに多く、より上位の政策段階に近づくほど、少ない傾向がある。また、計画策定過程で(法定手続ではなく)事実上公衆関与を行っている事例も、事業段階に近いものほど多く、かつオープンに実施されている傾向にある。
(事業アセスメントに先立つ上位段階がないもの)
各種事業セクターには、飛行場や産業廃棄物処理施設、発電施設のように、事業アセスメントに先立つ法定の上位段階の計画がないものがある。特に民間企業が事業主体となっている事業セクターではその傾向が顕著である。
事業アセスメントに先立つ上位段階の法定計画がない場合、法定手続としてはSEAを行いようがないが、立地位置の選定等を行う早期の段階で、事業アセスメントのスコーピング手続を行うこと等既にある制度の活用により、SEAに期待されている役割を担うことが可能である。また、地方公共団体の策定する自主的な(非法定の)横断的開発構想などのレベルでSEAを行うこともあり得ると考えられる。
(横断的計画の特徴)
総合開発計画や土地利用計画のようなセクター横断的な計画は、関係する他の計画との整合を図る観点から、現実に進められている各種セクター系計画の内容に引きずられ、それを追認する傾向が見られる。したがって、横断的計画についてSEAを実施した場合に、環境配慮の当該計画内容への組み込みが、どの程度反映可能なのかという問題がある。
一方、ある一定地域内で実施される各種開発による総体としての環境影響を捉える点では、各種セクター系の計画でいくらSEAをやっても限界があり、また、事業アセスメントでは小規模事業の集積による影響を捉えることは困難であることから、このような複合影響を捉えるステージとしては最適である。