1-2 騒音・振動・低周波音
1)騒音・振動・低周波音の環境影響評価の基本的な考え方
騒音・低周波音注)は、空気(大気)を媒質として、振動は地盤や構造物・建築物を媒質として伝搬し、人体や器物等に影響を与えることがある。騒音・振動・低周波音は、いずれも周波数によって、人体への影響や伝搬特性が異なることから、それらの状況に応じた検討が必要となる。また、振動が建築物や構造物に固体音として伝搬し、室内等で放射されて騒音として問題となる場合もある。
注)「低周波音」
低周波音とは、1/3オクターブバンド中心周波数1-80Hzの音波を称している。(「低周波音測定マニュアル」(平成12年10月 環境庁大気保全局)
環境影響評価における調査・予測・評価を効果的かつ効率的に行うためには、環境影響評価の各プロセスにおいて行われる作業の目的を常に明確にしておくことが必要である。環境影響評価における最終的な目的は「評価」であることから、実際の環境影響評価における作業の流れと逆に、「評価手法の検討→予測手法の検討→調査手法の検討」の順に検討を進める必要がある。特に、項目や手法の重点化、簡略化を行う場合には、従来の環境影響評価とは異なった調査が必要になったり、あるいは従来行われてきた調査が不必要になったりする場合がある。スコーピングは環境影響評価の調査・予測・評価の実施前だけでなく、実施中においても必要に応じて環境影響評価の項目・手法の見直しをおこなうものである。このスコーピングの基本的な考えを踏まえ、いかなる段階においても、効果的かつ効率的な手法の検討を実施することが重要である。
騒音・振動に係る環境影響評価においては、図1-2-1に示すとおり、道路交通騒音や航空機騒音等のように、環境基準、騒音規制法あるいは振動規制法等により、調査及び評価の方法が法令により明確に定義されている場合がある。そのような場合には、法令等に基づく調査・予測・評価方法を最初に検討する必要があるが、必ずしも法令等に基づいた調査・評価方法に限定して環境影響評価を行うのではなく、地域特性や事業特性を踏まえた適切な方法により調査・予測・評価を進めることも重要である。また、在来鉄道振動、複合騒音注)、低周波音等のように、法的な基準がない項目については、既存の知見等を参考にして、調査・予測・評価を進める必要がある。
本項では、調査・予測・評価の各段階での基本的考え方を記し、各段階での個別の留意事項について、「3) 留意事項の解説と事例等」において解説を加える。
注2)「複合騒音」
環境影響評価において検討すべき項目の中で、複数の発生源からの騒音をここでは「複合騒音」と定義する。例えば、鉄道騒音と道路交通(自動車)騒音、建設作業騒音と工事用車両走行騒音等が挙げられる。
なお、複数の道路から発生する道路交通騒音は、道路に面する地域の環境基準が発生源によらないものであることから、ここでは複合騒音として取り扱わない。逆に、複数の在来鉄道から発生する鉄道騒音は、「在来鉄道の新設又は大規模改良に際しての騒音対策の指針」において、指針値が新設路線や大規模改良路線といった個別の路線を対象としていることから、複合騒音として取り扱う。