資料:「森を調べる50の方法」(189-194,大石康彦、1998)
SD法は形容詞対の順序尺度上(質問の回答内容の順序関係を示すもの)に心理反応を反映させる方法である。SD法は色彩の心理効果や空間体験で生じる心理反応などを的確に捉える方法として広く応用されている。
SD法では、調査の対象とする空間において連想されるような形容詞の対(両極端の形容詞を5ないし7段階程度に区分した尺度、すなわち評定尺度)を配置した図1の様な調査票を用いる。評定尺度は普遍的な尺度ではないため、対象とする空間とそれ以外、あるいは対象とする空間と類似した他の空間でのデータとの比較する必要がある。また、統計的処理を行うためには最低10人以上の調査対象者のデータを収集する必要がある。
調査では、対象とする空間において(あるいは対象とする空間と的確に捉えた画像について)被験者にすべての評定尺度上のいずれかの位置に○印を付けさせる。なお、不適当な箇所がひとつでもあればその回答全体が無効となる点に留意が必要である。このため、調査票はその場で回収し、記入漏れ等がないことを確認することが望ましい。調査票のデータは、各評定尺度について「悪い評価~よい評価」に「1~5(または7)」の得点を与えた上で分析する。分析は統計手法のひとつである「因子分析」を用い、因子負荷量と因子軸をもとめる。この処理は市販のパソコン用統計ソフトで行うことが可能である。最後に因子分析の結果現れた因子軸の意味について、因子軸を構成する評定尺度から考察する。
図2は、森林(A:疎開した森林、B・C:中間の森林、D:込んだ森林)において9名の被験者の心理構造を調査した例である。主な因子軸に形容詞対「自然な-不自然な」に代表される価値因子及び「開放的な-閉鎖的な」に代表される空間因子が見いだされ、被験者の心理構造が<価値>と<空間>を主要な軸とするものであるという結果が得られ、さらに心理構造の中に「森林A」が最も「不自然で開放的」、(森林D」が最も「自然で閉鎖的」として位置付けられていたという結果が得られている。