表3-1 植物群ごとの留意点(7/7)
植物プランクトン |
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-特性 ・植物プランクトンの重要性は場合によって異なるので、必要に応じて調査を実施する。 ・富栄養化などの生物指標として用いられることがある。 ・流れのある陸水域では、付着藻類の剥離した流下藻類が多く、本来の植物プランクトンはきわめて少ないので、調査対象から外すことが多い。 ・植物相の把握以上に、基礎生産、栄養塩の固定等の機能への影響あるいは、赤潮種や毒性 種への影響が重要であり、生態系調査項目としての重要性が高い。
-調査手法 ・重要な種が含まれる可能性がない場合には、植物相を把握する一環として調査を行なう。 ・調査地点は、海水の分布状況から検討する。つまり、水の性状が均一と推定されるような開放域では、調査点は少なくて良い。また、調査水域が汽水域、海水域あるいは閉鎖域、開放域というように水の性状に差のあると推定される場合には、それぞれの水域に調査点を配置することが望ましい。また、鉛直分布に違いがあると想定される場合には、層別に調査することが望ましい。 ・ダム事業では事前の河川での調査はあまり意味がなく、むしろ近隣のダム湖や湖沼の状況を調査しておくと将来予測の参考となる。
-調査時期・頻度 ・植物プランクトンは流れとともに移動するだけでなく、生活史も短いため、厳密に植物プランクトン相を把握しようとすれば、時間的に密な調査が必要となる。しかしながら、重要な種が含まれない場合にはその概要を知る程度で良く、現存量、種類等の季節変化が把握できる程度の調査頻度で良い。ただし、冬季に波浪が高くなるような海域では浅海部での調査に危険性が伴う事から、省略または時期をずらすこともあり得る。 -留意すべき影響要因
-予測・評価手法 ・生態系の機能に関連して、植物プランクトンの密度変化や生産力変化などの予測・評価を行うことがある。その際には、種としての予測・評価より、植物プランクトン全体としての機能の予測・評価が主体となる。 ・ダム事業では、周辺の既設ダム湖の状況などを参考にして、淡水赤潮やアオコの発生あるいはカビ臭などの原因となるプランクトンの発生を予測・評価することが必要である。
-保全方針検討の観点 ・生態系の機能に関連して、停滞域の増加、物質循環への阻害等に対する環境保全措置が必要となる場合がある。
-事後調査手法 ・植物プランクトン相に著しい変化がないか否かを調査する。特に、主要種の変化、赤潮種や毒性種の増加などに注意する。 ・富栄養化等の生物指標としても用いられることがある。
-事後調査期間 ・海域の植物プランクトンは、陸水域に比べて季節変化の周期が安定しておらず、海流等によって年毎に植物プランクトン相や出現量の異なることが多い。そのため、短期間の調査では変化の有無が判定できないことが多いので、できるだけ長期間にわたって調査を継続することが望ましい。
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