表3-1 植物群ごとの留意点(2/7)
維管束植物(水生植物) |
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-特性 ・ここでとりあげた水生植物は抽水植物、浮葉植物、沈水植物、浮遊植物など主に水中で生 活する維管束植物である。ただし、海水中で生活するアマモ類等の海草については次項、「海 草藻類」に記述する。 ・夏から秋にかけての水位低下時に、水の引いた部分に生育する草本群落が存在するなど、 季節的な変動が大きいのが特徴である。 ・生育場所が水域に限定されているため、池沼ごと、支流ごとなどに個体群が孤立している 場合が多い。 ・沈水植物の一部は水面または水中で受粉を行う水媒花であり、水環境が生殖に対しても重 要な意味を持つ。 -調査手法 ・抽水・浮葉・沈水・浮遊の生活型は種によって固定しているわけではなく、同じ種でも生 育環境によって異なる生活系をとる。その際、同一種であっても沈水形と抽水形、あるいは 陸生形でまったく異なった形の葉を持つことがあるので、同定する際には十分注意する必要 がある。 ・水中に生育する沈水植物や小型の単子葉植物を現地調査で見落とさないよう注意が必要で ある。 ・植物相調査の調査地点は対象となる水域の形態、地形、底質など基盤環境のタイプを網羅 するよう設定する。 -調査時期・頻度 ・季節的な変動が大きいため、調査時期を適切に選ぶ必要がある。 -留意すべき影響要因 ・水域の富栄養化によって外来水草が繁茂し、在来種が駆逐されることがある。 ・種によって生存可能な水深・水流条件は限られているため、事業によって水深や水流の特 性が変化すると種組成が変わる等の影響が生じることがある。 ・塩性湿地に生育する種は特定の塩分濃度の間で生育可能である。従って事業によって汽水 域の塩分濃度が上昇すると生育不可能となり、逆に淡水化すると先駆種や外来種に駆逐され る可能性がある。 ・水中で光合成を行う沈水植物にとっては、水の透明度が分布の大きな制限要因となるため、 事業の排砂等で水が混濁すると枯死することもある。 -予測・評価手法 ・洪水による実生のセーフサイトの出現や種子散布など、生活史における水環境変動への依 存度が高い種が多いため、個々の種の生活史が、水環境にどのように依存しているかを明ら かにしたうえで評価を行わなければならない。 -保全方針検討の観点 ・移植が行なわれることが多いが、移植先において自生地と同じ環境を確保することが難し いなど様々な問題が伴うため、まず既存の生育地の保全を検討すべきである。移植を行なわ ざるを得ない場合には3-23ページで述べた点に十分留意する。 ・水域や湿地だけでなく、集水域を含めた環境と水質の保全が必要である。 ・水位の変動が必要な種、群落も存在する。各々の生育条件に応じた維持管理が必要である。 -事後調査手法 -事後調査期間
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