平成12年度第3回陸域分科会

資料3の目次へ戻る

参 考

2.環境保全措置の検討実績(関係機関におけるこれまでの検討実績)

表2.1 注目種等にもとづく生態系の保全方針の検討実績例(愛知万博)

 

環境の保全のための措置

生態系に対する措置

上位性の観点

オオタカ・フクロウを頂点とする食物連鎖の関係性

・オオタカ・フクロウに関連した主要餌生物群のうち移動力が小さく土地に依存的である生産者及び低次消費者の現存量の減少を回避又は低減する。
・オオタカ・フクロウの捕食・被食関係における階層構造(階層段階・量的バランス)を維持する。

カワセミ・カイツブリに着目した食物連鎖の関係性

・カワセミ・カイツブリの捕食・被食関係において主体を成す池沼における階層構造(階層段階・量的バランス)を維持する。

典型性の観点

中型哺乳類の生息の維持に必要な空間

・調査結果より把握されたタヌキの現行動圏内部の巣、採餌場所、移動路、休息場所等の変化を回避又は低減する。
・中型哺乳類の行動圏相互の移動空間の分断を回避又は低減する。

ゲンジボタルの生息の維持に必要な水環境

・ゲンジボタルの現生息河川における、河川の平面・断面構造、河川水文の状況の変化を回避又は低減する。
・ゲンジボタルの生息区間の分断を回避又は低減する。

特殊性の観点

シデコブシの生育の維持に必要な立地環境

・シデコブシ生育基盤として重要な浅層の地下水文の変化を回避又は低減する。

ウンヌケの生息の維持に必要な立地環境

・ウンヌケ生育基盤として重要な日照の変化を回避又は低減する。

表2.2 道路における環境保全措置の例(建設省)

回避・低減措置
[1]地形改変の最小化(「動物」、「植物」、「生態系」に適用)

<概要>
 評価対象(重要な種の生息地等)が対象道路事業によって改変される場合、擁壁構造の採用等によって地形の改変量を縮小し、評価対象への影響の回避・低減を図るものである。

<効果>
 自然性が高く代償が困難な植物群落や、昆虫類等比較的生息面積が狭い動物の生息地を保全する場合は効果がある。

<留意点>
 大規模な擁壁等が設置されると景観上の問題が生じる場合がある。

[2]移動経路の確保(「動物」、「生態系」に適用)

<概要>
 動物の移動経路が対象事業によって分断される場合、ボックスカルバート等の構造物を移動経路として確保し、影響の回避・低減を図るものである。

<効果>
 中・大型哺乳類のように、広い行動範囲において一定の移動経路をもつことが多い動物を保全する場合は、ある程度効果が期待できる。また、沢が移動経路となっている場合には、可能な限り橋梁構造を採用するなどして移動経路を確保する方法も効果的である。

<留意点>
 対象種の特性に応じて適切な構造の移動経路を採用する必要がある。

[3]地下水の保全(「動物」、「植物」、「生態系」に適用)

<概要>
 水生生物の重要な種の生息地又は植物の生息地で、対象道路事業によって地下水流路や表流水路が分断され、水環境が消失・縮小する場合、遮水壁の設置等によって水環境への影響の回避・低減を図るものである。

[4]既存種による植栽、表土の利用(「生態系」に適用)

<概要>
 道路の存在により植生が失われた場合に、のり面等への表土の保全、既存種による緑化等により、縮小した植生を復元し、影響の低減を図るものである。

<効果>
 生態系を支える基盤環境を復元しようとする際に効果的である。

[5]照明器具の改良(「動物」に適用)

<概要>
 道路照明によって動物の重要な種が影響を受ける場合、照明器具を改良することにより、影響の低減を図るものである。

<効果>
 照明の影響を受けやすい動物の生息地が道路に近接している場合は効果がある。

[6]林縁保護植栽(「植物」、「生態系」に適用)

<概要>
 樹林が伐採される場合、樹林内の照度や湿度等微気象が変化することにより植物種の生育が困難になり、さらには群落なども変化する場合がある。そのため、伐採部分にあらかじめ林縁を形成し、樹林内の環境の変化を抑制することで重要な種・群落への影響を低減を図ることが期待できる。

代償措置
[1]動物及び植物の重要な種の移設・移植(「動物」、「植物」に適用)

<概要>
 改変量の縮小にもかかわらず重要な種の生息地又は生息地の改変が避けられない場合に、動物や植物の個体を他の場所への移設又は移植することにより、代償を図るものである。

<留意点>
 動植物の移設・移植は、種によって難易の差が大きいため、対策の実現性について事前に検討する必要がある。また、移設・移植後に、生息・生育の状況を確認することが望ましい。

[2]代替生息地、代替生育地、代替生息・生育基盤の創出(「動物」、「植物」、「生態系」に適用)

<概要>
 消失した生息地、生育地等の代替のため、生息地や生育地を新たに創出することによって代償を図るものである。

<留意点>
 代替生息地等の創出は、対象となる動植物種や環境によって難易の差が大きいため、対策の実現性について事前に検討する必要がある。また、代替生息地等の創出後は、重要な種等の生息・生育の状況を確認することが望ましい。

出典:(財)道路環境研究所 道路環境影響評価の技術手法 2000

表2.3(1) 面整備における環境保全措置の例(建設省)

表2.3(2) 面整備における環境保全措置の例(建設省)

表2.4 面整備における環境保全措置の検討例(建設省)

表2.5 生態系の比較評価の検討実績例(愛知万博)

比較案

予測項目

会場計画第Ⅰ案

会場計画第Ⅱ案

生態系

・主要施設地区は、現況において既に人工的改変を受けた場所が大半を占めており、森林体感地区内では点的・線的し施設整備に限られ、しかも原状回復を原則としていることから生態系への影響は回避又は低減できるものと判断した。 ・主要施設地区は、現況において既に人工的改変を受けた場所が大半を占めており、森林体感地区内では点的・線的施設整備に限られ、しかも原状回復を原則としていることから生態系への影響は回避又 は低減できるものと判断した。
・青少年公園地区では主に既存の公園施設が整備されているエリアを中心に施設整備を進めること、フィールド施設検討区域内の施設は原則的には仮設物として会期終了後に撤去し、原状回復を図ること等から検証は行っていないが、今後も動植物の保全の観点から施設計画の検討に当たって配慮することとした。

生態系の存在影響に対する評価

注)第Ⅰ案との比較による第Ⅱ案に対する評価の判定
  ++:より優れている +:やや優れている 0:どちらともいえない
  -:やや劣っている --:より劣っている

表2.6 総合評価のための比較マトリックスの例(愛知万博)

第Ⅰ案との比較による 第Ⅱ案の評価
環境の自然的構成要素の良好な状態の保持 大気環境 大気質 工事中
供用時
騒 音 工事中
供用時
振 動 工事中
供用時
悪 臭 供用時
低周波音 工事中
水環境 水 質 工事中
供用時
底 質 工事中
供用時
地下水 工事中
存 在
供用時
河川流量等 工事中
供用時
水辺環境 工事中
存 在
供用時
土壌環境・
その他の環境
地形・地質 工事中
存 在
地 盤 工事中
存 在
土壌汚染 工事中
供用時
土壌(表土) 工事中
存 在
光 害 工事中
供用時
生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全 植 物 工事中
存 在
供用時
動 物 工事中
存 在
供用時
生態系 存 在
人と自然との
豊かな触れあい
景 観 工事中
存 在
供用時
触れあい活動の場 工事中
存 在
供用時
環境への負荷 廃棄物等 工事中
供用時
温室効果ガス等 工事中
供用時

注)第Ⅰ案との比較による第Ⅱ案に対する評価の判定/
++:より優れている    +:やや優れている
0:どちらともいえない
-:やや劣っている    --:より劣っている

資料3の目次へ戻る