平成12年度 第3回海域分科会 資料3

海域生態系の環境保全措置の実施事例

 この資料は、今回の検討のたたき台とするものですが、現在作業の途上であり、今後の作業により大幅に変更され得るものですので、取り扱いには十分留意いただくようお願いいたします。

 現在までに海域生態系(動物、植物)に関して様々な環境保全措置(環境保全対策)が検討されてきた。
 この資料では、既存の環境影響評価書で記載されている環境保全措置において、以下に示すような事項について個別に整理を行った。この結果は表3-1に示すとおりである。

環境保全措置の対象となる注目種又は機能等
 既存の環境保全措置の対象項目を整理した。
環境保全措置の目的と措置の分類
 環境保全措置が、環境影響評価法で上げられている回避、低減、代償のどれに該当するかを整理した。
環境保全措置の内容
 各環境影響評価書に記載されている部分を抜粋した。
環境保全措置に対する課題、留意点等
 各環境保全措置に関して公表資料を基に、課題・留意点等を整理した。

 今回提示した事業の環境保全措置について、現在の生態系に関する視点からみると、以下の事項があげられる。

[1] 環境保全措置において、消滅する環境(浅場、干潟等)と同質の環境を創造する場合、生態系に関する保全目標の設定(生態系全体を考慮した生物種(注目種)、機能等)の考え方
[2] 環境保全措置において、消滅する環境(干潟)と同質の環境を創造し、環境保全目標として「現状維持」とした場合、事後調査等の調査結果により、ある項目(例:生物の種類数)では劣るが、他の項目(例:生物量が増加し、水質の改善が認められた)では現状より良い環境になるという評価をどのように判断するか
[3] 環境保全措置において、消滅する環境(海域)と異質の環境(人工干潟、傾斜式石積護岸、ラグーン、浅場、緩傾斜護岸等)を創造する場合、環境保全上の位置付けと異質な環境に対する評価
[4] 水生生物の生息域を良好な状態に保つため、人工的な維持・管理(干潟、浅場の「耕うん」、不良土の除去、良質土の補給、稚貝や稚魚の放流をしていく)を行う場合、生息域の良好な状態を示す評価項目の設定
[5] 事後調査等の調査結果等を踏まえ、干潟の維持、生物生息空間としての改良を実施していくとの見解があるが、この見解に対する評価項目(生態系からの観点では、底生生物の存在量や鳥類の利用状況等)の設定
【検討課題:環境保全措置の実施における留意点について】
今回、上記に提示した留意点について、具体的な例示等も含め、表現、解説のあり方、他に整理すべき点等について検討していただきたい。

表3-1(1)  海域の生態系に関する環境保全措置事例の概要

事業
分類
事業名 環境保全措置の対象となる注目種又は機能等 環境保全措置の目的及び措置の分類 環境保全措置の内容 環境保全措置に対する課題、留意点等
埋立、干拓 羽田沖埋立事業の拡張
(昭和58年4月、東京都)
・水生生物の生息域 ・水生生物の生息域の創出を目的とした代償措置 【存在】
・護岸前面は在来のヘドロ層を良質の土砂で置き換える。
・事業区域周辺に比較的水深の浅い場所(浅場[面積:約250ha])を形成し、積極的に水生生物の生息しやすい環境をつくり、その回復に努める。
・造成した浅場を水生生物の生息環境を良好な状態に維持していくためには、耕うんや不良土の除去、良質土の補給といった適切な維持管理が必要
・稚貝や稚魚を放流していくことが必要という議論もあるが、その条件や内容については検討も必要
埋立、干拓 五日市地区港湾整備事業
(昭和61年1月、広島県)
・水鳥の飛来地
 (採餌、休息の場)
・水鳥の飛来地確保を目的とした代償措置 【存在】
・埋立により消失する干潟の代替として同程度の面積(約24ha)の人工干潟を造成する。
○干潟の維持
・圧密沈下の進行、波浪による浸食等により干潟の横断形状が完成時と比較して相当変化している
・台風による浸食に対しては砂の補充をしているものの、沈下に対しての補充は行っていない
・今後形状復元に向けての対策を検討中である

○生物生息空間としての改良
・追跡調査の結果、豊かな生物相の出現する条件が特定されてきた
・水鳥の採餌、休息など水鳥の生態に即した環境づくりやより多様な干潟生物が生息する環境づくりが必要
 例 カモ類:採餌、休息には浅くて広い水面が必要

シギ類:汀線付近で採餌するため、長い汀線が必要

チドリ類:地盤の高い後背地で採餌するための幅広の干潟部が必要

◎これらの課題に対応するため、補砂による浸食、沈下対策とともに、突堤、築堤マウンド、木杭、軽石等による対策の検討が進められている。
埋立、干拓 中城湾港(新港地区)公有水面埋立事業
(平成6年7月、沖縄県)
・トカゲハゼ ・トカゲハゼの生息域に対する回避措置 【港湾計画改訂段階】
・既存の陸域から約70~280mの範囲の埋立を回避
・これまでのところ個体数は、試験放流も含めて維持されており、自然状態での個体群の安定した再生産を確保し、個体数の増加が図られることが必要である。
・個体群の安定した再生産の確保のため、成魚の安定した生息と産卵までの生息条件の整備が重要な課題である。
・トカゲハゼの生態については、仔魚の分布域が水深20~30mの海域に多く分布している理由、仔魚の移動を規定している条件、仔魚の分布域と海象条件との関係、トカゲハゼと他の生物との相互関係、生息密度に地域間差異が出る理由など、解明すべき事項が残されていることから、今後も引き続き調査・研究を行い、トカゲハゼの保全計画を実効あるものとするよう努力する必要がある。
・万一、トカゲハゼの生息数が激減した場合に、人工増殖によって資源の回復を図るための技術を開発する目的で、平成5年度からは基礎的な飼育実験を行いデータの収集に取り組んでいる。
・トカゲハゼ等の干潟生物や鳥類 ・トカゲハゼ等の干潟生物や鳥類の生息環境の保全、創出を目的とした低減措置 【工事中・存在】
・トカゲハゼ゙が生息している干潟の地形、水質、底質の保全に努め、本事業の進捗に応じて新たな生息地(泥地)の創出に努める。
・仔稚魚の移動を阻害しないために、埋立工事の進捗に併せて澪筋となる水路を沖合海域まで連続させる。
・護岸付近にヒルギ゙類等の植裁を行う他、既存陸域の内陸側の湿地帯の保全、野鳥等の生息環境の保全に努める。
・埋立計画地の水路内護岸については、石積の緩傾斜型護岸を採用し、親水機能及び潮間帯生物の生息場としての機能に配慮する。

【供用】
・トカゲハゼが生息している干潟の地形、水質、底質の保全に努め、環境監視調査の結果を勘案して新たな生息地の創出にも努めていく。
・護岸付近に植裁したヒルギ゙類等の維持管理を行う他、既存陸域護岸の内陸側の湿地帯の保全、水路内干潟域を利用した野生生物の学習・観察地の管理を十分に行い、野鳥等の生息環境の保全に努める。
   
埋立、干拓 六甲アイランド南建設事業(平成9年2月、運輸省第三港湾建設局・神戸市・大阪湾広域臨海環境整備センター) ・海生生物や鳥類 ・海生生物や鳥類の生息環境の保全、創造を目的とした回避及び代償措置 【工事中】
・作業船、建設機械による大気汚染、騒音等の影響を軽減するため、良質な燃料の使用及び低公害型機種の採用に努め、さらに建設機械等の点検を十分行う。
・埋立にあたっては、土砂が海域へ流入しないように、護岸等の外周工事を先行した後、埋立用土を投入する施行手順をとり、工事用船舶の出入り口に汚濁防止膜を設置する。
・護岸の床堀工事実施時においては作業船の周囲を汚濁防止膜で囲う等、極力濁りの流出を防止する。
・浚渫土砂の投入にあたっては、護岸に先行して仮護岸等を施工した区域内に施工する。

【存在・供用】
・傾斜式石積護岸の導入やラグーン等の整備により、生息環境の保全、創造を積極的に進める。
注)1. 「環境保全措置の目的及び措置の分類」は、環境影響評価書には記載がないことから、保全対策の内容を考慮して当社の判断で示している。
2. 「環境保全措置に対する技術的な課題、留意点等」は、“中部国際空港建設事業及び空港島地域開発用地埋立事業”以外については、運輸省港湾局が公表している資料より抜粋した。

表3-1(2)  海域の生態系に関する環境保全措置事例の概要

事業
分類
事業名 環境保全措置の対象となる注目種又は機能等 環境保全措置の目的及び措置の分類 環境保全措置の内容 環境保全措置に対する課題、留意点等
埋立、干拓 阪南港阪南2区整備事業
(平成10年4月、大阪府)
・鳥類、水生生物 ・鳥類や水生生物の生息・生育環境の創出、保全を目的とした低減措置(埋立による海面の消失に対する代償措置) 【存在・利用】
・埋立地の存在により海面の一部が消失するが、事業計画地の一部に干潟、浅場等を整備するほか、新たに整備する護岸は大部分を石積傾斜提とし、また、岸壁以外の護岸部には十分な緑地を配するなど、水生生物や鳥類の新たな生息・生育環境の場を創造する。
・干潟や浅場における生物の生息・生育条件や水質浄化機能に関して乏しいため、埋立工事と平行して現地調査を行うとともに、学識経験者等の意見も聞いて、干潟や浅場の詳細な構造や施行方法などについて検討する。


【工事中】
・埋立工事にあたっては、仮護岸の設置、防砂シートの敷設や濁り拡散防止膜の展張などの対策を講じ、周辺海域において常時濁りの監視を行うなど、周辺海域に及ぼす濁りの影響をできる限り小さくする措置を講じる。
埋立、干拓 空港島埋立事業
(平成10年10月、  神戸市)
・鳥類、水生生物の生息環境
・生物の多様性及び自然環境の体系的保全
・鳥類、水生生物の生活環境の保全を目的とした低減措置
・生物の多様性及び自然環境の体系的保全を目的とした代償措置
【事前配慮:神戸市条例に基づく】
・潮流の影響が軽微となる埋立形状とした
・大規模な浅場を有する緩傾斜石積護岸の整備や人工ラグーン(海水浄化池)を行う。
・神戸港内の浚渫で発生する底泥を受け入れ、底質改善による事業実施区域周辺の生物生息空間の再生・創出に資する。

【工事中・存在】
・工事にあたっては、汚濁防止膜を展張すること、護岸概成後に埋立用材を投入することなどにより、濁り物質の拡散防止を図るほか、埋立地からの濁水が直接海域に流入することを防止するための雨水排水溝及び沈砂池の設置など所要の措置を講じる。
・生態系への影響の軽減等のために必要に応じ、適切な保全対策を講じることにより環境保全に努める。
注)1. 「環境保全措置の目的及び措置の分類」は、環境影響評価書には記載がないことから、保全対策の内容を考慮して当社の判断で示している。
2. 「環境保全措置に対する技術的な課題、留意点等」は、“中部国際空港建設事業及び空港島地域開発用地埋立事業”以外については、運輸省港湾局が公表している資料より抜粋した。

 

表3-1(3)  海域の生態系に関する環境保全措置事例の概要

事業
分類
事業名 環境保全措置の対象となる注目種又は機能等 環境保全措置の目的及び措置の分類 環境保全措置の内容 環境保全措置に対する課題、留意点等
埋立、干拓 中城港湾(泡瀬地区)公有水面埋立事業
(平成12年3月、沖縄県開発庁沖縄総合事務局)
・鳥類の採餌・休息場所 ・鳥類の採餌・休息場所となっている主な分布域の保全を目的とした回避措置 【計画段階】
・鳥類の主な分布域の埋立を回避した。
・オカヤドカリ類等の生物の生息場所 ・オカヤドカリ類等の生物が生息している自然海浜の保全を目的とした回避措置 【計画段階】
・汀線を損失する埋立を回避した。
・潮間帯生物や鳥類の生息域 ・潮間帯生物や鳥類の生息域である干潟域の保全を目的とした回避措置 【計画段階】
・埋立計画地を沖側に離し、干潟域の埋立をできる限り回避した。
・トカゲハゼ生息圏 ・トカゲハゼの生息圏への配慮を目的とした回避措置 【計画段階】
・トカゲハゼ生息地及び生息地と沖合海域を結ぶ澪筋の埋立を回避した。
・鳥類の生息域及び飛来した水鳥類 ・工事中に干潟域等に飛来、生息する鳥類への配慮を目的とした低減措置 【工事中】
・工事関係者が不必要に工事施工区域外の鳥類生息地域に立ち入ることを厳に慎む等、施工業者への指導を徹底させる。
・オカヤドカリ類等の海と陸とを行き来して生活している生物 ・自然海浜に類似した海浜の整備を目的とした低減措置 【存在】
・埋立地に海域から砂浜、海浜植生に至る自然な連続性を確保することによる生物の生息環境の創造する。
・トカゲハゼ生息圏 ・トカゲハゼ生息圏への配慮を目的とした低減措置 【工事中】
・トカゲハゼの生活史を踏まえ、浚渫工事や海上工事の工事時期や工法等に留意する。
・現状におけるトカゲハゼ生息地への立入りについては、必要最小限に留める。

【存在】
・良好な海水交換の確保により、トカゲハゼの生息に対する埋立地の存在の影響の低減を図る。
・埋立地に人工干潟を創造し、干潟生物の生息環境を創出し、トカゲハゼの生息環境の保全・拡大に努める。
・「トカゲハゼ保全計画に係る監視調査計画」(平成10年、沖縄県)に基づき、追跡調査を実施する。
・藻場
(大型海藻による藻場)
・藻場(大型海草による藻場)の保全を目的とした低減措置 【工事中】
・工事中は海域の水質環境の保全に努め、事業の進捗によっても相当程度の生息地が維持されるように、影響の低減に努める。
・リュウキュウアマモ及びボウバアマモの大型海草種 ・藻場生態系の保全を目的とした代償措置 【存在】
・埋立地の存在により生育被度50%を越える藻場が約25ha消失するため、その消失区域に生育している大型海草種を埋立予定地近傍の海藻草類の生育被度が50%未満の疎生域にできる限り移植し、藻場生態系の保全に努めることとする。
・なお、移植及び管理については不確実性を伴うため、実施に当たっては専門家の指導・助言を受け、慎重に行うこととする。
・クビレミドロ ・クビレミドロの保全を目的とした代償措置 【存在】
・クビレミドロの生育域が約106haと広範囲に分布する隣接の屋慶名地区に一時移植した後、埋立地周辺に整備される人工干潟に屋慶名地区から再移植する。
・クビレミドロの室内増殖技術開発試験を実施する。
サンゴ類 サンゴ類の保全を目的とした低減措置 【存在】
・生息被度10%未満の区域が一部消失することになるが、当該区域において相対的に高被度である生息被度10~40%未満の区域については埋立を回避することにより、全体としてサンゴ類への影響の低減を図る。
埋立、干拓

発電所
直江津港荒浜ふ頭地区公有水面埋立事業
(平成10年5月、新潟県)
・海生生物の生育
      ・生息状況
・海生生物の生育・生息状況の保全を目的とした低減措置 【工事中】
・周辺海域への濁りの流出を極力防止するため、必要に応じて汚濁防止膜を設置するなどの濁りの拡散を最小限にとどめるよう努力する。
・護岸工事等にあたっては、工事が一時期に集中しないようにできるだけ行程の調整を図る。

【存在・供用】
・発電所からの一般排水は、適切な処理を行い排出することにより、海生生物に及ぼす影響の低減を図る。
・温排水に関する対策としては、周辺海域における地形、地象等の状況を踏まえ、海生生物への影響の低減を図る。
注)1. 「環境保全措置の目的及び措置の分類」は、環境影響評価書には記載がないことから、保全対策の内容を考慮して当社の判断で示している。
2. 「環境保全措置に対する技術的な課題、留意点等」は、“中部国際空港建設事業及び空港島地域開発用地埋立事業”以外については、運輸省港湾局が公表している資料より抜粋した。

表3-1(4)  海域の生態系に関する環境保全措置事例の概要

事業
分類
事業名 環境保全措置の対象となる注目種又は機能等 環境保全措置の目的及び措置の分類 環境保全措置の内容 環境保全措置に対する課題、留意点等
埋立、干拓

廃棄物最終処分場
名古屋市港区藤前地先における公有水面埋立及び廃棄物最終処分場設置事業
(平成10年8月、名古屋港管理組合・名古屋市)
・鳥類 ・鳥類の生息環境の保全を目的とした低減、代償措置 【工事中】
・工事中の集中化を極力避け、工事量の平準化を図る。
・クレーン等の重機が林立しないように配慮する。
・護岸上等で作業する人が見えないように仮設矢板や工事フェンスを設置して工事機械等の存在による影響を軽減するよう配慮する。
・鳥類に対する急激な環境変化を避けるため、護岸工事期間中の仮設矢板については、打設範囲を狭める。
・工事開始前から鳥類のモニタリング調査(春の渡りの時期には詳細に行う)を実施し、工事が鳥類に与える影響を把握するとともに、干潟改良の試験施工の効果を確認し、仮設矢板の打設及び護岸工事に着手する。

【存在】
・検討会を設置し、既存干潟の部分的改良などを検討し、鳥類にとってより棲みやすい生活環境等を創造し、影響を軽減するよう努めていく。
・水生生物 ・水生生物の生息環境の保全を目的とした低減措置 【工事中】
・護岸工事に先立ち作業船の出入口の開口部を除き仮設矢板を打設するとともに、開口部には汚濁防止膜を二重に設置する。
・仮設矢板の打設にあたっては、SSの発生が少ない工法を用い、汚濁防止膜の設置にあったては、効果的な設置方法を検討するとともに、維持管理の徹底に留意する。
・固化処理機の撹拌装置には鋼板製キャップを使用する。
・仮設矢板開口部付近において定期的に水質の監視測定を行う。
・仮設矢板工事開始時点、工事期間中において、仮設矢板施工部周辺でも定期的にモニタリングを実施する。
・モニタリング結果については検討委員会に報告し、適宜、工事施工方法等について指導・助言を求める。
 
埋立、干拓

飛行場
関西国際空港建設事業
(昭和61年6月、関西国際空港(株))
・海域生物 ・周囲の海域環境に与える影響の軽減し、新たな生育場としての機能を持たせることを目的とした代償措置 【存在・供用】
・空港島の埋立護岸全長の約80%を占める約8.7kmに緩傾斜石積護岸を設置する。
・護岸周辺の海域生物調査については、護岸既成後から原則として空港供用開始後数年間にわたり、潜水目視調査、坪刈り調査を実施し、緩傾斜護岸が海域生物の生息等に及ぼす効果について確認する。
・環境監視の一環として、工事着工前においても空港島周辺海域においてオウランクトン、魚卵稚仔、底生生物の採取、漁業生物の試験操業等の調査を実施して、海生生物の生息、分布状況の把握に努める。
・空港島全体の生物的効果を明らかにするには、定量的な調査及び底 生性魚類等も含めた多角的な調査を今後継続的に進めることが必要である。
埋立、干拓

飛行場
関西国際空港第2期事業
(平成10年10月、関西国際空港(株)、関西国際空港用地造成株式会社)
・海域生物 ・生物の生育環境を提供することができ、生物の多様性の向上を図ることを目的とした代償措置 【存在・供用】
・第1期空港島護岸と同様に大阪湾に新たな藻場を創造する。
・幼稚仔保育機能の高いホンダワラ類や藻食性動物の餌となる海中林で構成される藻場を造成するため、人工的な種苗移植等の手法について調査研究を行い、その成果を基に藻場の育成と維持に努めるとともに、藻場造成の効果及び護岸周辺の生態系を適切な方法で調査・把握する。
注)1. 「環境保全措置の目的及び措置の分類」は、環境影響評価書には記載がないことから、保全対策の内容を考慮して当社の判断で示している。
2. 「環境保全措置に対する技術的な課題、留意点等」は、“中部国際空港建設事業及び空港島地域開発用地埋立事業”以外については、運輸省港湾局が公表している資料より抜粋した。

 

表3-1(5)  海域の生態系に関する環境保全措置事例の概要

事業
分類
事業名 環境保全措置の対象となる注目種又は機能等 環境保全措置の目的及び措置の分類 環境保全措置の内容 環境保全措置に対する課題、留意点等
埋立、干拓

飛行場
中部国際空港建設事業及び空港島地域開発用地埋立事業
(平成11年6月、中部国際空港株式会社・愛知県)
・海域環境 ・海域環境の保全を目的とした低減措置 【基本構想段階】
・空港島と対岸部との最小海域幅を約1.1km確保
・空港島の形状に曲線を取り入れ、空港島と対岸部との海域幅を拡大
・隅角部の曲線
(環境庁長官意見(H12.6))
・空港対岸部地域開発用地の工事途中の早期段階のうちに、環境影響等の検討結果についてレビューを行うとともに、その結果を踏まえて、著しい環境影響が生じると懸念される場合にあっては、埋立面積、護岸や防波堤の形状の変更も含め、環境保全上適切な対策を講じること
・工事中における環境監視を空港対岸部地域開発用地周辺も含め計画的に実施し、この結果環境保全上問題がある場合は、必要に応じ、埋立工事の変更を含め環境保全上適切な対策を講じること
・事業実施後の事後調査において、空港島及び空港対岸部地域開発用地の周辺において、地形の変化、有機物の海底への堆積等により環境の変化が生じた場合、環境保全に配慮しつつ、当該部分を浚渫するなど、適切な環境保全措置を講じること等
○その他、研究者より砂質浅海域生態系の喪失を代償するために岩礁域生態系を創出することへの疑問等の意見が出されている
・水生生物(海域生物)とアマモ、干潟及び生態系 ・空港島周辺海域の流況、水質分布等の海域環境と海域生物の保全を目的とした低減措置(藻場の造成は代償措置) 【存在・供用】
・空港島形状のさらなる曲線化
・捨石式傾斜堤護岸における岩礁性藻場の創出
・陸生生物(鳥類) ・鳥類の採餌場の創出、航空機との衝突の回避を目的とした低減措置(藻場の造成は代償措置) 【存在・供用】
・捨石式傾斜堤護岸における岩礁性藻場の創出
・空港島におけるバードパトロールの実施
・航空機に対する鳥類の渡りに関する管制情報の提供
・動物・植物(陸生生物、水生生物)、生態系 ・空港島周辺海域の水質の保全を目的とした低減措置 【工事中】
・護岸等の概成後に埋立工事を実施
・埋立工事の最大工事量の分散化
・汚濁負荷量の小さい材料の使用増加
・余水吐からの排水のpH調整
発電所 東通原子力発電所(1号機)建設
(平成8年8月、東北電力
・海生生物 ・海生生物の保全を目的とした低減措置 【供用】
・冷却水は防波堤内側から約0.2m/sの流速で取水し、復水器設計水温上昇値を7℃とし水中放水する。
発電所 富津火力発電所3・4号系列建設
(平成10年1月、東京電極株式会社)
・海生生物 ・海生生物の保全を目的とした低減措置 【供用】
・取水口にカーテンウォールを設置し、荒川工事基準面-7.0~12.0mから平均流速0.2m/sの低流速で深層取水する。取水した冷却水は放水管、放水路(暗渠及び開渠)を経て平均流速約2.0m/sで放水する。取放水温度差は6.6℃以下である。
注)1. 「環境保全措置の目的及び措置の分類」は、環境影響評価書には記載がないことから、保全対策の内容を考慮して当社の判断で示している。
2. 「環境保全措置に対する技術的な課題、留意点等」は、“中部国際空港建設事業及び空港島地域開発用地埋立事業”以外については、運輸省港湾局が公表している資料より抜粋した。